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「………ここは病院、か?」
見慣れない白い天井が友哉の視界に入った。
結局あの後意識を飛ばしてしまった友哉は病院の一室で意識を取り戻したようだ。
「そうじゃ、友哉はあの後気絶して救急車でここまで運ばれたんじゃ。」
「うわっ!?…仁王、何で居んの?つーか部活は?」
「俺も入院じゃ。ま、明日には退院じゃけどな。」
仁王もたくさんの暴力を浴びてしまっていたので入院をしているらしい。
しかし友哉よりは軽傷なのですぐに退院だそうだ。
「…そう、か。」
「おまんは無茶しすぎぜよー。来んでええ言うたのに来よってから。」
「元々俺は強いんだよ。あんな条件出されなかったら無傷で完勝だっつーの。」
「プリ。どうだか……じゃけど…。」
「なんだよ。」
「縁切った言われたとき、凄く傷ついたナリ。」
「……。」
「でも嬉しかったぜよ。赤の他人にそんなんになっても助けようとしてくれたこと。流石正義の味方は違うのぉ。」
「あー、カッコわりぃ…幸村達が来なかったら俺は自分からやられに行った様なドMってことになるじゃねーか。しかも正義の味方って…幸村の奴俺のセリフに被せてきやがった。」
「それはたまたまじゃ。」
「ホントか?」
「…多分、ピヨ。」
「失礼する……仁王も居たのか。」
友哉と仁王が雑談をしていると神妙な声の奴がやってきた。
その声に反応して病室の入り口を見て見ると柳が居た。
「柳…。」
「参謀、か。」
「……仁王、すまない。席を外してはくれないか?」
吉報ではなさそうな面持ちの柳。
その柳の顔を見て友哉は察した。
「仁王、ワリィ。外してくれ。」
「…友哉が言うなら…参謀、友哉を泣かすんじゃなかよ。」
「友哉は泣かないだろう。しかしいきなりすまないな。」
「別に?どーってことないことを友哉と話しとっただけじゃ。
じゃぁの、また来るぜよ。」
仁王は友哉の病室から去り、
病室に残っているのは友哉と柳。
「で、なんだ?柳…まぁ、大体予想はついてるけどな。」
友哉は態度を変えることなく柳に言った。
ただ、視線は柳の方を見ず、外の風景を見つめている。
柳はそんなことはお構いなしとでも言いたいように、その場に正座し、頭を下げた。所謂土下座である。
「…すまない。本当にすまないことをした。」
「……全部、知ってんのか?」
それから土下座は止めろ、と友哉は柳に言った。
柳はそれに従って土下座を止め再びその場に起立した。
「あぁ、守本が青学の生徒だったこと、そこで何が起こったのか、なんで起こったのか、全部、全部…聞いた。」
総てを知ってしまった柳。
何故、あの時過去を触れて友哉は自分を挑発したのか。
それを全て知ってしまった。そして理解した。
この様な過去、誰にも知られたくなくて当たり前だった。それを柳は興味本位と、探ってしまったのだ。
だからこその謝罪、土下座である。
「聞いた?…誰から、手塚か?」
「いや、教授…乾貞治から聞いた。」
「あぁ、あの逆行眼鏡…で、お前はどう思ったよ。」
「…どう思ったとは?」
「俺を人殺しだと罵るか?それとも加害者だと貶すか?それとも鬼だと、鬼畜だと、そう言うか?」
「……どれもそう思っていない。守本は、悪くない。」
「なんで、そう言い切れる?」
「詳しいことは言えないが、……お前の幼馴染は意識不明から目覚めている。」
「…………え?」
「彼は今、ある病院で心のケアとリハビリに勤しんでいる。病院名は悪いが伏せさせてほしい。それが条件で話を聞かせてもらったのだ。」
「……………本当、か?それは…本当なのか?」
「あぁ、俺と貞治とで調べた結果だ。だから守本、お前は悪くない。何も、悪くない。」
「………柳…。」
「なんだ?」
「ちょっと一人にしてくんねぇかな。
そうだ、仁王の所に行ってやれよ。あいつ明日退院なんだろ?荷物の整理とかさ…。」
「…あぁ、そうしよう。」
最後まで友哉は外を向いたままで表情は読み取れなかった。
しかし、整理をしたいのは友哉自身の心なんだろうな、と思って柳は気を遣い友哉の言葉に従った。
出ていく間際、ありがとう、と言われた気がするのだが、きっと何か言ったか?と聞いても何も言ってないと答えるだろうからあえて聞き返さない。
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