(19/23)
「あー!友哉さん見っけ!!もぅ!今日は逃がしませんよ!やっと捕まえたっすよぉ…!!……先輩?…先、輩。」
「………………。」
友哉の思考を遮る様に大声を発しながら赤也がやってきた。
そして違和感を感じた。
いつもなら赤也の姿を見た瞬間に速攻で逃げていたと言うのに、今回は逃げもしないし、嫌な顔もしない。
ただただ反応が無かったのである。
「き、り原…。」
「なんすか!」
「俺は、人を一人殺して、殺してないけど、でも…違くないで…違う、けど……!!」
文章にまとまりは無いのだが、それは友哉の中でそれがけ混濁していると言う事。
暴れないと言うことはそれすらも行動に移せない程、友哉は崩壊寸前だと言う事。
「んー、俺、難しいことは分かんねぇすけど、友哉さんが違うって言ったら違うんじゃないんすか?」
毒気を抜かれる様な赤也の言葉。
本当にあっけらんとした態度、笑顔、今の友哉の心境とはかけ離れたもの。
しかし、赤也の言葉はストンと友哉の中に入ってきた。
「………そっか…サンキュ、な切原。」
「エヘヘヘヘヘ、どうもっす!さぁ!そのついでに俺を舎弟にして下さいっす!!」
「ハハハ、舎弟なんていらねぇよ。
それにお前らとは縁切っただろうが、今逃げなかったことは気まぐれだ。
今後一切関わってくれるなよ。じゃぁな、俺は用があるから。ついて来たら、容赦しねぇ。」
一応すぐに縁を切っていると言う事を強調する。
着いてきたりなどしたら邪魔になるだけ。
友哉の異名は血塗れた喧嘩人形。
喧嘩は機械仕掛けの様な動きで無敗、返り血で赤く染まってもその喧嘩が終わるまで動きを止めない。
巻き込んでしまうだろう。
今から仁王を助けるにあたっては、
だからこそ、威嚇し、赤也についてこないようにと表す。
「…友哉さん、何をする気なんっすか?」
「別に?赤の他人のテメェには関係ねぇよ。ただ…過去の清算と、ケジメと、人助けだよ。
来んなよ?ココからは俺の独壇場だからな。」
友哉は赤也に言い放って、それから去っていった。
その場に残ったのは赤也である。
「……カッケェ!けど…なんか……柳先輩に言っておこうかなー…。」
―――――
――
「よう、来てやったぜ?元舎弟。」
「遅かったじゃねぇか、元兄貴。」
「なんで、来たんじゃぁ…。」
「ただの気の迷いだよ。赤の他人の仁王クン。」
友哉が指定された公園に行ったら居るわ居るわ。
不良の奴ら50人以上は固い。
そんな奴に取り囲まれる様に居るのが仁王である。
「来てやったんだ。さっさと仁王を解放しろ。」
「クククク…ただで開放すると思ったか?
するわけねぇだろう?条件があるに決まってんだろうが、」
「だったらなんだって言うんだよ。さっさと済ませようぜ?ダリィ。俺は仁王さえ助かればいいんだよ。」
「さっきまで縁切ったっつったのになぁ、テメェ正義の味方気取りか?」
「あぁ、正義の味方気取りさ。俺とは全く関係ねぇ一般人を巻き込んだテメェ等は悪者だろう。」
「じゃぁ、悪役らしく悪役っぽい条件出してやろうじゃん?」
「出してみろ。俺はそれをのんでやる。」
「あー、男らしいねぇ。こんなクソ野郎の癖に、よくカッコつけれるなぁ。
まぁ?俺らはテメェをぶちのめせたらなんでもいいんだよ。と言う事でだ…一方的に俺らからのリンチ、俺らが満足するまで受けとけよ。」
「…得物は?」
「俺は使わねぇ。」
「……そうか、じゃぁ来いよ。リンチを大人しく受けるクソダセェ役演じてやるよ。」
来いよ。と両足でしっかり地面を踏み、身構えた。
「そりゃ…どうも!!」
こいつの声を皮切りに友哉に一気に襲い掛かる奴ら。
しかしながら仁王を捕まえている奴らは離れない。
殴られ蹴られ、しかし倒れない友哉。
仁王立ちのまま、他人からの暴力を受ける。
「な、ぁ…仁王、をいい、加減ッ離して…くれねえ、か?」
「ぁあ?離して?…おい、やっちまえ。」
呻きながら言った友哉の言葉を元舎弟は受け取り目を仁王にやった。
そして解放しろと命を下すのかと思ったらその逆。
やっちまえ、のめしてしまえ、と命令を下す。
その声に反応して仁王を拘束していた奴らが仁王に暴力を揮い始めた。
「なッテメ騙したな、ァ!?」
「約束守ると思ったら大間違いだぜ?だって俺ワルなんだからなぁ。
そうだ、テメェも仁王クンになんて気にするよりも自分の事心配した方が良いんじゃねぇの?」
「な、ッ…ガ……!」
友哉は頭に強い衝撃を受けた。
拳でも蹴りでもない、それ以上の衝撃が襲ってきた。
先ほどまで仁王立ちで耐えることが出来ていたのにそれも出来なくなりふらついて地面に伏せる。
そして頭から生暖かいものが垂れてくる感覚を覚えた。
視界が次第に赤くなり、なにがなんだか分からない。
ただ分かるのは仁王が友哉の名前を叫んでいると言うこと。
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