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信じられない、信じたくない。
でもこれが本当のことで、わざわざ嘘を遺言に書く訳は無くて、これを受け止めなければなからないと言うことで、
友哉はその手紙を持って自分の部屋に行って行動を落ち着かせた。
それから幼馴染からの手紙を一字一字暗記するかのように食い入るようにしてもう一度読んだ。
ハ…ハハハハ、……初めて俺に書く手紙が、遺書なのかよ。…どれだけ、俺はあいつに嫌われちまってんだろうな。
俺はどれだけ憎まれて、バカにされてるんだろう。
いや、違うんだ。嫌われてないってことはもう分かってんだ。
俺は俺は、自分の責任から逃れたいだけなんだ。
自分を心の中で頼ってくれたって言う事実を認めたくないんだ。
あいつは俺にちゃんとSOSは出していたんだ。
俺が気付くことが出来なかったんだ。
壁が出来始めたなって感じた小学校の事からもうあいつは俺のせいでイジメに遇ってたんじゃないか。なんでもっとはっきり言ってくれなかったんだ。
俺は、お前が俺みたいな不良とつるむことが嫌になったんだって思って俺の遊びを断っていたんだと思っていたのに。
小学校の頃からそんな事実を一人で抱えて過ごしていただなんて、幼馴染の俺が、友達だったはずの俺が、気づいてやれなかった。
冷静に状況把握までしちゃっさ。
感情的になってお前のクラスまで行った俺にその冷静さを分けてくれよ。
お前みたいに冷静さを持ってお前のことについて把握できていたのなら、俺はお前の心に、本心に気づけたはずなのに……。
最後までしっかり読んだ友哉は幼馴染が仲間によって壊されたキーホルダーと同じものを自分の机の中から取り出した。
幼馴染の自殺のきっかけは仲間が自分の大切にしていた友哉とのおそろいのキーホルダーを壊されてたことが一因となっていた。
「こんなものをさ…今までずっと持ち歩いていたのかよ……。そんなに大切に持っていてくれた…俺はこんな風に机に仕舞ったままだったのにな。」
これを持って行ったら意識が戻るとかねぇかな?
謝りてぇし、
友哉は次の日早速学校をさぼって病院までやってきた。
親に出くわさないように配慮して、昼辺りに。
「………え?…居ない…?」
ここの病室だったはずなのに、そこには整えられたベッドしかなかった。
まさか、…と最悪な想像をしてしまう。
丁度通りかかった看護師にここに昨日入院した男子はどうしたのか?と聞いたら今日の朝、親御さんの希望で他の病院に移ったと言う。
流石に転院先まで教えることは出来ないと言う。
「…そう、ですか……。」
幼馴染の親は友哉と自分の子供との関係を完璧に絶ちたかったようだ。
あれだけのことを友哉はしてしまったのだ。
守ることが出来る位置に居たのに、守ることが出来なかった。これが事実。
親の判断は間違いでは無いということを無理やりでも納得するしかない。
遅れて学校に行く。
幼馴染の手紙に書かれてあったキーホルダーを壊した仲間ってやつを一発でも殴りたい。
見当がつかないのでとりあえず幼馴染の居たクラスにお邪魔することにする。
「あ、兄貴ー。」
「…………………あぁ、お前か。」
こいつは虐めの主犯で、自分が注意しなかったからこいつは止めることが出来なかったわけで。
「知ってますぅ?あいつ、自殺しちゃったみたいなんすよー。チェ、面白くないっすよ。」
主犯の周りにいるのはクラスメイトで、他の舎弟達もいる。
「なに言ってんだよ!お前、チクられる前に死んでもらってよかったじゃねーか。」
「まぁな、あんなやつ生きてたっていいこと無いしな!根暗だし、キモイし。
それにあいつの仲間も裏切ったしな!!」
「それが原因であいつは自殺しちゃったのかもな!!なぁ、大石?」
大石と呼ばれた少年がピクリと肩を揺らした。
「ッ俺は!…君達に言われたから……。」
「でも自分が次に虐められたくないからって売ったんじゃねーか。そのやっすい友情をさ!!アハハハハ!」
「………ッ。」
「……なぁ、お前ら、自殺した奴に…かける言葉が、それなのか?」
「兄貴、なに言ってんすか?
それ以外にかける言葉ってないじゃないですか?
死んでもよかった奴に死んでよかったって言って、何が悪いんすか?」
なぁ?とクラスに同意を求めて、クラスは嗤う。
馬鹿にするように、
人ひとりがこんな目に遇ってしまったと言うのに、罪悪感などは微塵も感じられない。
友哉の頭の中で堪忍袋の緒が切れた音がした。
「死んでよかった?…死んでよかっただと?ふざけんじゃねぇぞコルァアアア!!!」
主犯の奴を力いっぱいぶん殴った。
殴った衝撃で舎弟は後ろへ吹っ飛ぶ。
そんな光景を見て、クラスの女子は悲鳴を上げた。
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