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家に着くなり謙也の貯金箱からお金をひっつかみ美容院に足を運んだ。
「やー、謙也ブリーチ似合ってんじゃん。」
鏡で少々髪をいじりながら褒める。
(……さよか。)
「なにしょぼけてんだよ。言われた通りにメッシュは入れてないんだからいいだろ?」
(ホンマに染めるとか思わんかったわ!!今は主導権はお前やけどこれ俺の体やからな!!)
「あーはいはい、分かってるって。
つーかお前すっげー足速いな、何?なんかしてんの?陸上?」
(………テニス部。)
「は?テニス?確かそれ白石ってやつが部長じゃね?」
(せや…。)
「はー…部長で学校牛耳っててあのルックスか。存在自体がケンカ売ってるな。」
(あいつは完璧なんや、パーフェクト…なんや……テニス部、四天宝寺中学の誇り…や。)
「ハッ、完璧ねぇ。虫唾が走る。謙也もそんな奴に負けて悔しーとか思わないわけ?」
(…そんなん白石には負けて当たり前やん、勝とうなんて気ぃ起こす方が間違っとる……。)
「…だからお前は誰にも助けてくれねぇんだよ。お前を信じてくれる奴が居ねーんだよ。そんな自分を下へ下へと評価してさぁ。聞いてるこっちがイライラするっつーの。
何?自分は今いじめられててマイナス思考をしててもしょうがねぇって?
ざけんな、俺はそんな向上心のないやつの手助けなんてしたくねぇ。このまま俺として生活していこーかなぁ。お前の通ってる中学以外にも学校ってあるし?」
(やめぇ!!)
「なんでそんなこと言われなきゃなんねーんだよ。」
(俺は四天宝寺中の奴らの誤解を解きたいんや、自分が悪者になったままなんていやや!!)
「…お前何言ってるか分かってる?それが自分でできないからこの俺が神様なんかに呼ばれたんだろ?
どうだ?お前自分の力で誤解を解こうなんて思ったか?せいぜい神頼みだろ。」
(っうー…ズピッ。)
「おい、泣くなよ!!悪かった!!俺が悪かったから!!イライラをぶつけて悪かったって!!俺だって被害者なんだよ!!ちょっと素行が悪かったからってこんな騒動に巻き込まれるし、張本人はヘタレの虐められっ子のマイナス思考だし!!
あーもー!!泣くなって!!ホント、ちょ、目から涙出てきたじゃねーか!!俺が泣いてるみたいでカッコわり―じゃんかよ!!
ちゃんと助けるから!!ホント勘弁してくれ!!」
(ゴメン…。)
「…俺もホント悪かった。俺は気に入らねぇことあると先に手が出るタイプだからよ、虐められっ子の気持ちがいまいち分かんねーんだ。
あ、そうだ謙也門限とかあんの?」
(7時までには帰らんとおかんに怒られる。)
「早っ!?」
(普通やろ。)
「チッ門限があるとは…まぁいいか、今晩から抜け出すぞ。」
(は?)
「だから抜け出していろんな学校をしめていくんだよ。」
(ホンマにやるんか?)
「本気と書いてマジだぜ。」
夜9時になり友哉は宣言した通り家を抜け出した。
「ちなみに謙也ぁ、お前いっつもこの時間は何してんだ?」
(……勉強。)
「うっわねーよ。がり勉なんてよくやってこれたなぁ、しかも運動部なんだろ?」
(慣れればそんなん余裕や…虐められることは慣れへんかったけど……。)
「だーっ!!なんでその話に行きつくかな、俺はそんな暗い話したいわけじゃねーっつーの!!
そういやどこ行けば不良とか屯ってんだ?」
(知らん、俺かて夜の大阪は初めてや。)
「ふーん、だったら今日は探検でもして帰るかー。その気になればバトルできるし。」
(せや、あんま拳で人殴らんといて。)
「は?なんで。」
(拳痛めたらテニス出来んくなってまう。)
「……謙也本当にテニス好きなんだな。」
(…おん。)
「分かったよ。蹴りで沈めりゃぁいいんだろ?あんま慣れてねーけど、」
(おおきに。)
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