自分の体に何だ怒っているのか確認するために一目散に鏡が存在するトイレまで走って行った。
鏡の存在を確認するとさらに驚くべきことが、顔が変わっているのだ。
「え?ええ?なんで何この黒い髪。俺ブリーチしてたよな?は?意味分かんない。つか顔変ってるー!?」
(おい、)
「ちょっと待って…えー、なにこれ夢?いやさっき白石とかいう奴に殴られたときは痛かった。」
(おい!!)
「うっせー!!今…ってあれ?どっかから声聞こえてんの?」
周りを見回してもトイレしかない。人の姿なんて確認できない。
(落ち着けっちゅー話や!!つーかその体俺の!!服脱がんといて!!)
「は?俺の!?意味分んねぇし。つか声が頭の中から聞こえるんですけど!!」
(落着きーや!!いいかお前は俺に呼び出されたんや。)
「あ?呼び出し?お前誰。この体お前のなの?」
(そうや、俺の名前は忍足謙也や。よろしゅう。自分は?)
「…守本友哉……よろしく。」
(今お前は俺の体の中に精神だけ入って俺の体を操つっとるっちゅー話や。
で、俺をこの現状から助けれたら帰れるって神様が言っとったで。)
「何でだ!!何で俺が人助けをしないとダメなんだ。俺は学校の屋上で昼寝してただけだぞ!!」
(友哉不良やろ。天罰が落ちたんや。)
「んだとこら、殴らせろ。」
(殴れるもんなら殴ってみー。)
「ッチ、……で?お前はなんでこんな状況になってんだ?」
(助けてくれるんか?おーきに!!)
「誰もそんなこと言ってねぇだろ!!話を聞くだけだ!!」
(……俺は見ての通りいじめられとる。始まりはあのマネージャーからや…マネージャーがいきなり生活に刺激がほしいとか言って俺が学校全体にいじめられるように仕向けてきたんや。)
「…お前は抵抗しなかったのか?」
(出来るはず無いやん。学校を牛耳っとる白石を敵に回したんたで?抵抗するだけ無駄や。)
「……うぜぇな。お前のその発想。嫌なら抗えよ。」
(無理や…俺足が速いことしか能が無いんやもん。)
「テメッ……ん?…おい、俺がお前を助けなかったら俺はずっとお前の姿っつーことだよな。」
悪い予感が脳内を占める。
(せや、この現状から友哉が抜け出すには俺を助けるしかないんや。助けんかったらお前は俺のかわりにリンチを受けることになる。)
「っざせんな!!俺を巻き込むな!!一人で勝手にリンチにあっとけ!!面と向かって話したこともないやつをなんで俺が助けねぇといけねぇんだよ!!」
(俺かって!!俺かて…辛いんや…仲間に殴られるんも、蹴られるんも、罵られるんも、もう限界なんや……。
自分のことに巻き込もうとか思うて無かったわ。ただ助けてほしいって神様に願いしただけなんや。)
「おいお前、もしこの現状が良くなって向こうがお前に謝ってきたらどうするんだ?許すのか?」
(許せんかもしれん。…けど、もう一度みんなとテニスをしたいんや。)
「そうか…しょうがねぇ。俺も元居た世界に帰りてぇし、助けてやるよ。」
(ホンマか!?おおきに!!)
「よし、手始めに髪をブリーチすっぞ!!んでメッシュ入れる。」
(は?なんで!?)
「白石っつー奴を倒せばいいんだろ?そいつはこの学校を牛耳ってんだろ?だったら俺はこの市内の学校を牛耳ってやるよ。
そのためにナメられないようにするためだよ。
それにブリーチは俺のアイデンティティだったしな。このままじゃ俺のアイデンティティ消失だぜ。」
(え、待ち。今俺の体やけん、アイデンティティの消失は当たり前やん!!)
「安心しろ。俺元の世界じゃ負けなしだったから。さっさと学校を回って行こうぜー。で俺はさっさと元居た世界へ帰る。」
(待ってー!!ブリーチすんのは許すけど、いや許したないけど、メッシュはあかん!!さすがにあかん!!おかんが卒倒してまう!!)
忍足謙也の姿をした友哉は颯爽と校舎を後にした。