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戦いながらも友哉は会話をする。
一方の白石は友哉の攻撃を受け流すので精一杯で言葉なんて発することが出来ない。
ここで実力の差が見える。
「それでよ、お前らは謙也がマネをいじめたって、なんでそんなことを信じたんだ?一緒に過ごしてきた仲間…あぁ元、仲間だっけ?」
『元』を強調させる。
「……。」
「お前、そのマネに惚れてるな?」
ギクッと白石の動きが一瞬止まった。
「ビンゴ。
でもよー、お前らそいつの言葉だけを信じて現場は一回も見たことねぇだろ。見れるわけないよなぁ?謙也は本当に無実だったんだからよ。」
「ッ……。」
「知ってっか?そのマネが謙也をは嵌めた理由って単なる暇つぶしらしいぜ?お前らはその単なる暇つぶしに加担したってわけだ。
謙也はそれに巻きまれたっつーことだ。なんて可哀想な謙也クン、なんて哀れな謙也クン、信じてた仲間に裏切られて俺なんかに体を空け渡すぐらい辛かったんだよなぁ。
お前は部活の部長だろ、お前が一番率先して謙也をいじめてどうする。お前は一番に謙也を助けないといけない立場に居たんじゃねーのかよ!!」
「自分こそ好き勝手なこと言ってるんやない!!俺かて好きな奴の言い分に味方しとうなる!!それの何がいけんのや!!」
「全部がいけねーよ。お前はトップに居る奴だ。そいつが揺れたら全部が揺れるに決まってるだろ。そいつが私情で学校を操作してもいいと思うんじゃねーよ!!」
「自分に何が分かるんゆーんや!!」
「俺はっ、俺の大切なダチを見捨てちまった事があんだよ!!何にも知らなかったって言う、理由として一番最低な理由でな!!
だから俺は謙也をっ、なのにまた俺は何も、できなかったんだ、よ!!!」
友哉は白石の足を引っ掛け転倒させる。
そして白石の上にまたがりマウントをとる。
胸ぐらをつかみ、白石を睨みつける。
「本当に謙也が何もして無いっつったんなら信じてやれよ!!物的証拠もないのに謙也をずっといじめやがって、同じクラスならマネと謙也の雰囲気だって十分に観察できたはずだ!!どっちだった!?どっちが追いつめられてたよ!!ぁあ?そんなのも分かんなかったのかよ、ァア!?!!
なのに、なのに…謙也は一方的にお前から、部活から、クラスから、学校から、市内中の学校から嫌われて、虐められて、それでも謙也は仲間のお前らとまたテニスがしたいっていう純粋な気持ちを支えにして耐えてたのに、お前は謙也に『仲間じゃない』って言いやがって。
自分の発言には責任持てよ!!謙也は…謙也はっ。
なぁ、お前…それでも謙也に謝らねぇのかよ。」
謝りたいと思っている。
直接…謙也に、
友哉を通じて謝りたくない。
そんな気持ちが白石の中で渦巻く。
「――――――謝らへん。」
友哉を通じて謝りたくない。
そう思ったからこその返答。
「そっか。」
晴れやかな笑顔になる。
「じゃぁ、俺も遠慮もなくお前を再起不能にしてやるよ。」
「……ッ――」
白石は次に来る衝撃に備え目を閉じる。
周りからは息をのむ声が聞こえた。
しかし何時まで経っても衝撃が来ない。
不思議に思ってそっと目を開ける。
「!?」
目の前には謙也の握り拳がある。
「あ?…んだぁ?」
本人も不思議そうに声を上げる。
「――――白石…俺はホンマに辛かったんやで?」
久しぶりに聞く謙也の声の関西弁。
そう、謙也が意識を取り戻し身体の主導権が友哉から謙也に移ったのだ。
「……謙、也?」
(謙也!!)
「(すまんな友哉、俺今まで逃げとった。)」
(お前、平気なのか?)
「(……平気、や。だからここからは俺に話させてほしい。
もう………逃げへん。)」
(もちろんいいぜ。平気ならなおさらだ。ハッピーエンドを飾ってこい。)
「(もちろんや。)」
「謙也…すまんかった。」
白石が謙也に戻ったと分かって一番に発した言葉は謝罪の言葉だった。
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