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白石がテニス部メンバーを引き連れて、屋上へと向かった。
向かったところにはすでに財前が居る。
「お、財前やないか。なんやお前も見物かいな…どや、謙也はまだ立っとるか?」
「千歳がウロウロしとったせいで、もうおもろいとこ済んだかもしれへんやろ!!」
「…すまんばい。」
「………。」
睨むような、悲しむようなそんな妙な顔で白石達を見つめる。
「なんや、いつもつれんやっちゃなー。俺が見ちゃる。」
と一氏がニヤニヤしながらフェンスの向こう側を眺めた。
「♪ーーーー…え?」
ニヤニヤとしていた顔が強張る。
「どうしたの?ユウ君。」
気になった小春が一氏の元へ駆け寄る。
そして見る。
死屍累々と転がっている少年たちの姿を、
そして勝った、ただ一人の少年はすでに姿を消していた。
「なん…で?こんな強さでたらめじゃない!!こんなのアタシ見たこと無いわ!!」
なんだなんだとフェンスの向こう側を眺める。
反応は皆同じ、
信じられないといったようだ。
白石でさえも驚く、
自分は一対一でやっと勝てたようなメンツに対して友哉は一度に、怪我ひとつなく済ませている。
「「「「……………………。」」」」
恐怖で、または驚きで、誰も口を開かない。
ヴーヴーヴーヴー―――
白石のケータイが鳴る。
発信元は『マネージャー』
何かあったのかと白石は電話に出る。
そしてマネージャーからの音声はみんなにも聞こえるようにいつも受信音を最大にしていた。
メンバーも聞き耳を立てる。
「…どないしたんや?」
『たっ助けて!!
あのな、忍足君が不良になったって言ったやん!?』
「おん。」
『忍足君が仲間っぽい人らを連れて私の家の玄関に居るん!!
怖いッ怖いよ!!助けて!!!』
「えっ!?」
今、謙也が家の前に居る?
そんなまさか、今謙也は学校で…。
『どうしようッ怖い!!』
「な、なぁ何人くらい居るか分かるか?」
『え?ちょっと待って…6人や、忍足君あわせて。』
「謙也、どんな感じになっとる?あいつもろくに学校来とらんのんや。」
カマをかける。
『えっと…目つきがなんだか怖くなっとって、学ランもいつも以上に着崩してる。あとは…一緒、かな?』
「う、嘘や。」
だって、今の謙也の髪の色は、
眩しいくらいの金髪。
突如屋上の入口がギィッと錆びついた音を鳴らす。その扉は人為的に開けられた。
開けた人物はさっきまで運動場で暴れていた友哉だった。
『え?どうしたの?』
固まる白石。
そして白石の手の中からケータイが消える。
友哉が奪い取ったのだ。
白石は驚きのあまり動かない。
他のメンツも動けない。
財前だけは友哉に駆け寄る。
「やぁ☆謙也クンですよー?只今の俺は髪の毛ブリーチしてまぁす。」
とても上機嫌だ。
笑顔が輝いている。
『ッ!?』
「お前、俺は絶対ゆるさねぇ。さっさと謙也に土下座しに来い。…分かったな。」
言いたいことだけ言ってブチリときる。
「おやおや皆さんお揃いで、呼びつける手間が省けっつーことか?
…さて、お前ら。謝罪文は考えたかな?」
笑顔の中に見え隠れする、その怒っている顔が恐ろしい。
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