1ページネタ ヴェラン+α

ざぶん。
煌々と月明かりが照らす水面を乱して、ランスロットは湖の中へ半身を浸らせる。
透明度の高い水は彼の肌をまるで隠しはしなかったが、どうせ誰もいないのだからと彼をより一層開放的な気分にさせて、当初の目的を一時忘れさせた。
体の力を抜いて身を水平に保てば、水中に潜った顔以外の部分が浮力を生じさせ、消えてゆく衝撃はさざ波となり輪を描く。
噛み跡にわずかに水が沁みてピリピリとした痛みも走ったが、それは恋人の愛情の証。
身の中に放たれたまま出口を失っている、とろみを帯びた体液のひとしずくまでもが狂おしいほどに愛おしくて、自分で後始末くらいは出来るからと必死に食い下がり、体に残るくゆりを惜しみながらも水を使いに単独行動に出ているのだが。
水の中を揺蕩いながら眺める月は、どこまでも美しく。
冴え冴えとした光は、憧れてやまなかったかつての師が時折見せる、狩猟者としての瞳にも似ている。
けれども、そんなことを恋人に打ち明けてしまえば、かわいい嫉妬をしながらも必死に自分のよさをアピールしてくるのだから……遊んでみたい気持ちが半分、年下なのだからと可愛がり甘やかしてやりたい気持ちが、もう半分。
(今頃は、俺が汚したシーツなんかを取り換えて、二人で眠れるように支度してるんだろうな)
さすがにそろそろ後始末を済ませて戻るか、とランスロットが思いを巡らせた直後のこと。
とぷん、と静かに湖に何かが入ってくる音がして。
生まれた波を顔にもろに受け、油断しきっていたランスロットは咳き込み、体勢を一変させ湖底に足をついた。
「……っ、何だ?」
見回してみれば、月光に照らされた裸体が、自分の他にもうひとつ。
よく知っている紅い髪をした男の姿が、そこにあった。

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