特異点×バブさん 黒ギャルセーラー服JKバブさん

あらすじ



何を間違ったか、世界を掌握する存在になろうとした結果セーラー服JKのコスチュームに着替えたバブさん。今日もいたいけな少年を誘惑し覇道への一歩を踏み固めんとした彼だったが……





解せぬ。

誰が見てもそう顔に書かれている。

不機嫌をあらわにしたベルゼバブ、通称バブさん──は、学籍もないのに堂々と寮制の男子校へと乗り込み、わずか十数秒で守衛に呼び止められ取り押さえられた自分に落ち度があったとは全く思っていなかった。

アスリート体型を強調し、はち切れんばかりの豊満な胸……いや胸筋に張り付いているいにしえの女学生の制服。古式ゆかしいはずの制服のスカートはひざ上20pはあろうかという丈の短さ。堂々と晒している足はムダ毛の処理は完璧である分救いもあったが、申し分のない筋肉美を披露しており男性的な逞しさが際立つばかり。セーラー服を着るべき人物像からはかけ離れた、どこをどう見ても不審者そのものであるというのに当人は至極大真面目にこの衣装に身を包んでいるというのだからたまらない。

疲弊しきった様子で守衛室までバブさんを引きずってきた守衛が警察に突き出す準備をしていたところ、一瞬のスキをついてバブさんが拘束を振り切り放課後の校舎内に走り出した。

そんな珍事を知らず、思い思いに過ごしていた学生たちの中に、まさかバブさんが長いこと探し求めていた存在──「特異点」が混じっていたのは、なんというか。





その肉体美による魅了の術を片っ端から生徒や教師にかけて手駒に仕立て上げ、拠点を構えるパンデモニウムに送り届ける準備を着々と進めていたバブさんだったが。

空間を捻じ曲げてパンデモニウムへとつながるゲートを手近な教室で作っている最中に、いきなり後頭部を角材で殴られた。

ガツンでもなければ、ゴツンでもない、もっと重たい一撃を背後から見舞われ、うっかり手駒の数名ごとパンデモニウムに自身の肉体を送り返す寸前で踏みとどまり。

何奴、と振り向いた先には、遠い記憶の中で全く薄らぎもせず自分を見据えてくるあの爛々とした目をした少年──「特異点」としか思えない存在が角材片手に立っていた。

「『特異点』、か」

肯定も否定もせずに第二撃を見舞うべく、無駄のない動きで角材を振りかぶる少年。

単なる打撃であれば無効化できるはずの肉体に、痛撃を与えているということは何かしらの魔術が仕込まれた角材らしい。

以前バブさんは錬金術師によって動きを封じられたことがあり、その時に破らされた拘束式にもよく似た術がかけられている可能性が高かった。

「僕の学校で、何してるの」

角材の形状を変え、九節棍を構えた少年は、驚いた様子は何もなく平然とバブさんと対峙していた。

「あれから何百年経ってるのかはこの際置いといて」

一般の生徒と揃いの靴に、揃いの服。

動きやすさでは確実に不利であるはずの少年だが、バブさん相手であれば何の問題もない、と言いたげな態度を見せ、それがバブさんを着実に苛立たせていった。

「僕の管区で好き勝手するつもりなら、お仕置きするね」

通告しながら軽やかに床を蹴り、九節棍の先端で突きを見舞う少年。

紙一重で回避したバブさんが反撃に転じようとした時に、やり過ごしたはずの九節棍が戻り際に先ほどと同じ部位をもう一度襲い、不意を突かれたバブさんはさすがに昏倒した。

「無様だね、あの羽がないとこんなものなの?」

気を失っているバブさんからの返事はない。

「作りかけのこのゲートは閉じるとして──お仕置きはやっぱり、僕がやらないとダメかなぁ」

空の世界の果てへとたどり着き、仲間たちの旅路を見届けるために教わった錬金術。

空と大陸へ、拡張した世界の均衡を保つために生きていく覚悟を固める一助となった学問は、今もこうして少年の身を守り血肉を錬成している。

長期間違和感を抱かれずに世界へと溶け込んでいられるように、少年期から青年期を何十回も繰り返している彼、特異点は──開祖と末裔の編み出した術のみならず、危険ゆえに封じられた禁術のからくりへと指先が触れかける領域まで辿り着くほどの存在になっていたが、ひとえに彼の善性により均衡を崩すまでには至らずに現在へと通じている。

生きる禁術の塊と表現しても大げさではないバブさんが相手となると、当分このような馬鹿げた所業に出たくはなくなるような仕置きも必要であり、それが可能な適任者は当然のように散り散りに配置され。

どう考えても、自分でどうにかしなければならないのだった。





バブさんが意識を取り戻した時、それはそれは散々な姿であった。

九節棍で腕を絡めとられ、猿轡を噛ませられ、両足はまた長さと太さの違う角材に縛り付けられ自力では尻でじりじりと移動するのが精いっぱい。

バブさんが着ているセーラー服を本来着るべき層にこんなことをしたら大問題だが、相手は不審者全開のバブさんなので何の問題もないし、同じ教室に移されていた生徒たちは術を解かない限り眠っているようなので、少年が何をしたところで騒ぎにはならない。

さて、と少年が学ランの胸ポケットから細い金属製の棒を取り出し、だらしなく広げられているバブさんの足の間に近づけた。

それだけで神経系がさわぐのか、バブさんは目を見開き、やめろと言わんばかりに首を横に振ったが、それしきのことで許されるわけがない。

スカートをまくり、布面積の少ない黒のショーツを紐ごと引きちぎり、露出した陰茎を引っ掴み先端にある小穴に躊躇なく金属棒を突き立て埋没させてゆく。

親指の腹を使ってすべて埋め込んでしまった後に、少年がバブさんの亀頭に針で錠前となる刻印を刻んで放り出した。

「ここで許してあげてもいいかもしれないけど、また来られたら面倒だからもう一つ仕掛けておくね」

次はポケットの中から小さなアルミケースを取り出し、中に仕込んであった注射器と薬液の準備をしていく。これも少年自作の劇薬で、バブさんが蠅のようにまとわりついてきた場合に痛い目を見させるためだけに調合されたほぼ解毒の不可能な媚薬だった。

どうせろくでもない薬だとわかったところでもうバブさんには打つ手はなく、手の甲でいいよねそう簡単になくなるような血管してるわけないもの、と物騒なことを言いつつ少年は慣れた手つきでバブさんに媚薬を注入した。

針が刺さった場所から申し訳程度の冷たさが広がったのもつかの間、脳髄を溶かすめくるめく快楽が勝手に全身から湧いてきて、思わずバブさんも雌の表情をしそうになった。

全身がうずき、あらぬところにあらぬものが欲しくなる。そればかりではなく、獣の欲として切り捨てていた性欲で頭がいっぱいになりバブさんの腰が勝手にゆらゆらと揺れる。

「じゃあ、拘束の術とかはそのままにしておくから、あとは頑張って自力で帰ってね」

今日はお鍋の材料が安いから早く行かないとタイムサービスのがしちゃう、と少年は掛け時計の針の位置を確認して教室を出ていきかけてから。

「あ、寝てる人たちの術とかなきゃ」

一人ずつ瞼を開けて自身の双眸を見せてから教室の外に連れ出し、全員の処置を終えてから両手を叩いて一拍ののち。

にわかに廊下が騒がしくなったのを確認してから、少年は鞄を片手に今度こそ教室を出て行った。

残されたのは、身動きが取れないのに快楽だけ押し付けられ途方に暮れている哀れなバブさん。

守衛が呼んだ警察が遅れて到着し、留置場に二週間ほど置かれた後放り出されたが、バブさんの意識が多少でも使い物になるまでにさらに三か月。

豊満完熟ボディに仕上がってから肉欲を自力で律することが可能になるまで、優に八年を要したらしい。

彼が本当の意味で元に戻る日は来るのかどうかは、少年しか知らない。

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