特異点×バブさん バブさんと無限ループ?

新たなる王の誕生、そう息巻いていたのももはや遠い過去のよう。ベルゼバブ──通称バブさんは、来る日も来る日も騎空士たちに薬漬けにされ、鋼鉄の翅を抜き取られる生活がすっかり定着してしまいました。

そんなある日。

抜き取られた翅をようやく継ぎ足し終えて一息ついたばかりのバブさんのもとに、いつものように六人組の騎空士が現れました。

どうしてこうも特異点は自分のもとへ通ってくるのか?

そんな疑問を差しはさむ余地さえ与えられぬまま臨戦態勢を取らざるを得なくなり、渾身の一撃を見舞おうとしてもおかしな薬を投与されたり煙幕の中に身を隠されたりして、まともに戦うことさえままならないまま辛酸を舐めさせられてばかりの生活はバブさんとしてももうこりごりなのですが……そこはそれ、目当てのものが揃うまで、特異点たる騎空士が通い詰める未来は定まったようなもの。

勝負を挑まれているのに身を隠したり逃げ回ったりするのは、王たるものの性分とは言えないので律義に相手をするしかないバブさんでしたが、この日は少々相手の様子が違っていました。

普段であれば、揃いの黒衣に身を包み秘器を操る、トーメンターと巷では呼ばれる装いで現れる特異点なのですが。

六人のうち五人は、従前と同じように仮面で顔を隠しているものの、武器らしい武器を手にしていない身一つの状態。まとっている衣装は体の線が出すぎるくらいに出ている、というよりも上半身裸でせいぜいレスリング用ベルトをつけている程度というありさま。

並の者であれば相手は丸腰、と油断したかもしれませんが、バブさんは違います。鎧袖一触のコバエと特異点の区別くらいつきます。

警戒しつつ六人組のうち最後の一人を見やると、大きな荷物を背負ったうさぎ耳の白装束。これはバブさんも知っています。味方を癒す能力に長けた装束です。戦闘中にぴょこぴょこはねるあの耳をつかんで引き抜いてやろうかと思ったら、残りの五人が揃って黒い麒麟を呼び出して一気に吹き飛ばされたばかりなので覚えています。

まあそんなわけで苦い記憶がよみがえったバブさんは身構えたのですが、荷物を背負った最後の一人がようやく先行していた五人に追いつき、得物を持たせていきます。

不覚をとったか、と思ったバブさんですが、身構えた次の瞬間。

背後に回り込んでいた二人のレスラーに腕を封じられ、翼を出して応じようとしたらそちらは足で封じられ、早速非常に分が悪い展開になってしまいました。

戦う前から身動きが取れないなど、王を名乗る以前の問題です。あがきましたが相手は屈強なレスラーなので、星の民と星晶獣の力を駆使しても物理法則上ではじわりじわりと押されていき、とうとう嫌な音を立てて鋼鉄の翼が根元から折れてしまいました。

折れた翼から好き放題翅を引っこ抜いているうさぎ耳の白装束はさておき、得物を手にした残り三人のレスラーを相手にどう立ち回ったものか、不敵な笑みを浮かべつつ思案していると。

「まずはマラカスから試してみよっか」

特異点がわけのわからないセリフを発しました。

それを合図に、バブさんは四つん這いの体勢を取らされ、まとっていた衣服を尻中心に盛大に破かれました。

憤慨する間も与えられず、尻の穴に突き立てられたのはマラカスの持ち手の部分。

勿論バブさんはそんなことをされる謂われも経験もありません。願い下げです。

しかし特異点は、これこそが目的であるといわんばかりにぐりぐりと奥へ押し込むように掌でマラカスの膨らんだ部分を押してきます。

王たる者、これしきの行為で悲鳴を上げるなど、と意地を張ったバブさん。

「持ち手じゃちょっと慣れてる人でも簡単に入っちゃうみたいだから、鳴る方入れてみない?」

誰だそんな至極迷惑な提案をしたものは。特異点か。いやこの場には特異点しか居らぬではないか。

バブさんの自問自答の隙に、そもそも入れようという考えを持つ方がどうかしているサイズの膨らみが押し付けられ、力業でねじ込まれます。

余になんということをするのだ!

口に出そうにも、噛みしめている唇を今開くと、苦痛を示すうめき声しか出てこなさそうなのでバブさんは耐えました。

その忍従に応じるかのように、バブさんの尻の穴はどうにか人智を超えたレベルまで広がってマラカスを呑み込んでいきます。

「わぁ、すごいやバブさん、こんなのも入っちゃうんだ」

ってことは次はモノ自慢のドラフの張り型も持ってきたら面白いかも。

何やら突っ込みどころしかないセリフが聞こえた気がしましたが、今のバブさんは突っ込まれる側にいるので余計な墓穴は掘りたくありません。

現在形で尻を掘られている以上、しょうもないことを口にして特異点の興をそげるかどうかの賭けに出てもよかったのですが、何にでも首を突っ込み興味深そうに楽しんでしまう性分らしき特異点が相手では分が悪いのは火を見るより明らかです。

マラカスの持ち手を持って抜き差しまで始めた特異点は、種の防衛本能からか分泌された腸液が泡立ち立てている音をことのほか気に召したらしく。

「隙間からこれも追加で入れてみない?」

ウォーターバルーンを取り出しバブさんからは見えない角度で、一つ一つ力ずくで入れていったのですが……腹圧をかけると簡単に中で割れてしまいます。バブさんはそこまで特異点のおもちゃにされる筋合いはないと思っていたのですが。

ウォーターバルーンの中に入っていた液体が、特異点たちの狙いの本体でした。

濃度が薄ければひんやりとする程度の成分が入っているのですが、少し時間が経過すると粘膜がひりひりするほどの濃さの液体で満たされていたウォーターバルーンは、バブさんの中ではじけて彼を思いきり苛みます。

しかし、特異点が持参した五個すべてを体内で破裂させたバブさんは息も絶え絶えにこの後何をされるのか考えずにはいられませんでした。

特異点は無邪気な顔をして自分にろくなことをしてこないからです。自業自得という言葉はバブさんは勿論知りませんが、割と都合の良い思考回路をしているので全部特異点が悪いと断じてしまっているのが、バブさんのよくないところでもあります。

「とりあえず、ミスリルトンファー持ってきてるから、それ入れて広げて準備しない?」

やはりまだ何かされる。嫌な予感ほどよく当たるものです。マラカスの隙間からやはり太さのある、かなり長い棒状の金属を二本押し込まれて左右に押し広げられて。尻から聞きたくもないような体の一部が裂ける音がしましたが、それはもう聞かなかったことにします。

でないとこの悪夢に取りつかれて空をわがものとする以前の問題にかかりきりになりそうだったからです。

「じゃあ、手始めに……ウーチンフィスト、いってみよっか」

マラカスでこじあけられ、トンファーで引き裂かれた坑道は、ウォーターバルーンの液のせいでじんじんと痛みとしびれを訴えかけてきます。

ウーチンフィストがどういった形状なのかバブさんは知りませんし、角度的に視認することもできなかったのですが、仮に目視できたとしたら確実にこう述べていたでしょう。

それが『手始めに』突っ込むものであろうはずなどない!

と。



そんなわけで。

ウーチンフィストを最初に突っ込んだ特異点なのですが、誤算がひとつありました。

バブさんの締まりがなかなかに良く、刺さったトゲが抜けなかったのです。トゲを抜くのを諦めて、次にプレデタークローを突っ込んでトゲを掻き出せないかと試してはみたのですが、中がズタズタになっただけで刺さったトゲの大部分は抜けませんでした。

ならばと器用に動かせると期待したルーリングペンの先端であちこちえぐってみましたが、思ったような成果は出ずにやはり傷口が深くなるばかり。

もうこうなったら仕方がない、傷口を深くすることで自然に取れるのを期待するか、というとんでもない結論に達した特異点は、セレストクロー・マグナを深々と突き立てて可能な限り坑道の奥から手前までを何十回と往復しました。

不幸中の幸い、トゲは大体除去できましたがバブさんの尻の穴は引き換えに再起不能となってしまい。

「……バブさんのお尻にも、リヴァイヴってきくかなぁ」

うさぎ耳の特異点がもはや指一本動かす気力すら残っていないバブさんの尻に向かって杖を一振りし、盛大に裂けていた部分が治癒したらしいことだけを確認して荷物をまとめ、騎空艇へと戻っていきました。



尚、バブさんは三日三晩その場から動けなかったようです。


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