【モブ及】いくらならぬ何とやら

 今日のおじさんのおにぎりの具はいくら。給料日だからって奮発して買ってきてくれた。今年はいくらも高いのに……。昨日の夜は二人でいくら丼を楽しんで、残りを今日のおにぎりの具にしたんだ。
 まあるい、半透明な、赤い粒。
 ……ま、また思い出しちゃった。昨日のこと……。

「今日もお仕事お疲れ様、おじさん」
「ただいま、徹」
 いつものようにおかえりのキスをする。
「今日はね、徹にお土産があるんだ」
「えっ、何? なぁに?」
 お土産は、見たことのない柄をした紙袋に入っているらしい。いびつな形に膨らんでる。
「開けてもいい?」
「後でね。先に、ご飯がいいかな」

 ご飯を食べ終えたら、先に俺がシャワーを浴びてからリビングでのんびりするのが日課。部屋着に着替えて洋画を見てたら、後から入ってたおじさんがシャワーから戻って来た。
「徹、お土産は開けた?」
 …………あ。すっかり忘れてた。
「ううん、まだ開けてない。中身、何なの?」
 俺が開封しないと意味が薄れるようなものがお土産なんだろうか。
「いや、開けてなくても構わないよ。心の準備だけでもできるかなって思ってたんだけど、徹は本番に強いから大丈夫そうだし」
 なんだろう。嫌な、予感がする? そんな気がする?
 疑問形。
 どこかうきうきしているおじさんは、紙袋片手にベッドルームへ入るよう俺を促す。
 紙袋を枕元に置いて、さっさとお互いに服を脱ぐ。パンツ一枚になって、おじさんは俺の手に紙袋を握らせた。
「これ、袋の上から触って中身を当ててごらん。当たったら、明日のお楽しみ。外れたら、今日徹に使ってあげる」
 何やら不穏な雰囲気が漂い始めたような。
 でも中身さえ当てれば今日は平和に過ごせるんだ。袋の上から念入りに、中身と思しきものに触れる。棒状のものなんだけど、ぐねぐねしていて棒とは言い難いような気もする。どことなく、凸凹しているようでいて……何、これ?
「おじさん、わかんない……何かヒント頂戴」
 本気でわからなかった。弾力はあるんだけどそれなりに柔らかくて、でも球状の先端部をはじめとした棒らしきもののどこにも継ぎ目みたいな出っ張りはなくて……用途にさえ、見当がつかなかったんだ。俺に使うって言われていたって、どうやって? って話で。
「そっか、徹はわからないか……可愛いね、純粋に育っちゃったんだね、徹は」
 そう言っておじさんは俺の頭を繰り返し撫でる。
「徹があんまりにも可愛いから、ヒントを二つあげよう。一つ目、これは徹の中に入れるもの。二つ目、徹の中に入れた後は、ゆっくり出したりもう一回入れ直したりして遊ぶ大人の……おっと、ヒントは二つまでだった。危ない危ない。徹が可愛すぎるから三つ目のヒントまであげるところだった」
 そう聞いて俺は、もう一回袋の中身に集中した。一緒に何か入ってるみたいで、ころころと転がるものがある。そのせいで余計に難しくなってる。セットで使うものなのか、単独で使うものなのか……うーん。
「おじさん、だめ、やっぱりわかんない。二種類入ってるような気がするんだけど、何がなんだか……」
 そう言って俺は匙を投げた。わかんないものはわかんない。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥って言うし、ここは素直におじさんに聞いてみよう。
「ねぇ、袋開けてみていい?」
「いいよ」
 がさごそと中に手を突っ込み、取り出す。毒々しいピンク色をした、一粒一粒がかなり大きい数珠の一部みたいな棒状のものに、持ち手のついた謎の物体と……つるんとした鶏卵くらいの大きさの物体が三個、強固な紐で互いに連結されている、これまたある意味数珠繋ぎの物体。色は濃い目の黄色をしている。
 ……これは両方とも、俺の中に入れたり出したりするモノなのでしょうか?
 徹はわかりません。どんな場所にこんなものが売っているのかも知りません。こんな時に人生経験の差を感じます。
「徹、これらが何かわからない、って顔をしてるね……じゃあ実際に、使ってみようか」
 そう言っておじさんは、俺の下着に手をかけた。
「ま、待っておじさん、脱がなきゃだめなの?」
「徹がどうしてもって言うなら隙間から入れられないこともないけど……きっと難しいよ?」
 だって部屋の照明はひとつも落とされていない。昼間のような明るさのままだ。おじさんは照明を落とすつもりは更々ないらしい。明るいままで、事に及ぼうとしている可能性さえあった。
「む、難しいとか言われても、入れるのはおじさんなんじゃないの?」
 ここで少々の誤解が生じていたらしい。
「何言ってるの、徹が自分で入れるんだよ?」
 え。そんなこと俺言われてたっけ。おじさんに言われた言葉をゆっくりと反芻する。……いや、直接は言われていないにしても、誰が、って主語は明言されていなかったような?
 あれ? 俺、おじさんにまんまと嵌められた?
「そう、なの?」
「そうだよ、だから、ちゃんと脱いだ方が難しくないよ。慣らすのは手伝ってあげるから安心して」
 狐につままれたような気がしないでもないけど、おじさんが言うならそうなんだろう。俺は諦めて、明るい部屋の中でなけなしの着衣を解いた。
「じゃあ、徹。仰向けになって足開いて両膝抱えて、慣らしてあげるから」
 明るい部屋の中でえっちするのとおんなじかも。おじさんの前に全部見せるのは、いつもとちっとも変わらない。温感ローションを垂らされて、二本の指でぐちゃぐちゃになるまで慣らされるのも一緒で。違うって言ったら、入れた二本の指をおじさんが開いたまま、俺の片膝に触れて来たところかな。
「徹、支えててあげるから、空いた手でこれ持って入れてごらん」
 そう言ったおじさんは、俺の右膝の裏に手を添えて、数珠と棒のあいの子みたいなものを握らせてきた。
「今日買ってきたものはね、『アナルスティック』と『アナルビーズ』って呼ばれてるものだよ、徹。本当はスティックで十分に慣らしてから、っていうのが定石なんだけど、僕たちの場合はうっかり順序が逆になってしまったからね。その分、徹に自分で体験してもらおうと思ったってわけさ」
 ショッキングピンクをしたそれは、先端が細くて、根元の方にいくにつれて球が大きくなっていくタイプのものだった。先端が細いっていったって、直径にしてみればそれなりに太さはあるし、根元の方にいけばおじさんのものと同じかそれ以上位まである。
 二種類買ってきたもののうち、まずはそのピンクのおもちゃを俺に使わせてみるみたいだった。おじさんが二本の指で拡げたままにしてくれている穴に、おもちゃをあてがってにゅぷりと入れてみる。
「あ、きもちぃ……」
 にゅぷっ、と最初の一個が埋まり、おじさんの指が引き換えに抜けていく。この位なら楽勝かもね。
 調子に乗ってもう一個分、入れてみる。さっきのより一回り大きいけど、余裕余裕。
「結構楽そうだね、徹。そのまま一つずつ入れていくのもいいけれど、一気に全部入るかもね」
 おじさんも俺の呑みこみっぷりに満足した様子で、両手を使って俺の膝を左右に大きく開いていく。
 にゅぷっ。にゅぷり。少しずつ球が大きくなってきて、余裕もなくなってくる。
「はぁ、はぁ……っ」
 思ってた以上に、大きいし太い。でもまだ球が二個残ってる。
「ほら徹、頑張って」
 にゅぷ……ちゅぽん。
「ひゃ、ぁっ!」
 うまく入らずに、五個目はすっぽ抜けた。
「徹、ちゃんと手に力入れて」
「だ、だってぇ……」
 気持ちいいのが少しずつ強くなってきて、入口の締まりを突破させられるだけの力を折角手に込めても、力が逃げていく。
「力、入んないよぉ……」
 もっと気持ちよくなりたいのに、力が体に入らない。今のままでも十分気持ちいいけど、俺はその先にある更なる快楽をおじさんに教えられてしまっている。だから飢え、求めてしまう。苦しさの先にある、楽園を。
「仕方がないね、徹のわがままを聞くのも僕の仕事だ。残りの二個は入れてあげるから、ちゃんと力の加減を覚えてね」
 そう言っておじさんは、俺の手に自分の手を添えた。ぐっ、と力強く押し込むと、強い摩擦ののちに大きな球が体の中に埋まり、俺の背が仰け反る。挿入される瞬間のあの強い刺激が、これで五度与えられたような感じ。もう一回、あるなんて。そう考えただけで、背すじを思いもよらない快感が走って。
 ぴゅるぴゅるっ、と腹と胸の上に精液が飛んだ。六個目を入れる前に俺が我慢できなかったのがおじさんとしては不本意だったらしく、少しだけ乱暴に六個目が捩じ込まれる。
「いたっ、あ、あああっ!」
 最初にちょっとだけ走った痛みの後は、暴風雨のような快感が押し寄せてくる。呼吸をしても、身動ぎをしても、気持ちいい。息を止めていたって、心臓が作り出す拍動が快楽を呼び寄せる。過ぎた快楽は体に毒で、俺はぐすぐすめそめそ泣きながらおじさんに訴えた。
「や、あ……ぬいて、ぬいてぇ……おじさぁん……」
 絶えず入口を擦られてるような感覚がして、気持ち良すぎてつらい。こんなに太いもの、俺には合わない。ほどほどが一番。おじさんのが一番。全然力が入らなくなってたもう片方の手もおじさんの手に重ねて、どうにかして引き抜こうと試みた。
「ん、んぁっ……あ、っや……ふと……い……」
「……ごめんよ徹、僕が間違ってた。責任もって抜いてあげるから、あんまり頑張らなくってもいいんだよ」
 おじさんはゆっくりと、俺の中からアナルスティックを抜いてくれた。
 ぢゅぽっ、と身も蓋もない音を立てて引き抜かれたそれは、ローションまみれになっていた。俺のお腹も、スティックを抜かれた衝撃でまたイったせいで精液でどろどろ。一回お風呂と……トイレにも、行っておきたかった。
「おじさぁん……俺、一回、お風呂とトイレに行っちゃだめ?」
「行く必要はないよ、またすぐ汚れるし。徹のおしっこなら見慣れてるから、何なら今すぐここでしてもいいよ。防水シーツも敷いてあるし」
 そういう問題じゃないのに! おじさんの前で毎日のようにおしっこ……いや、おもらし……どっちだろ……する破目になってる俺の身にもなってみてよ! 恥ずかしいんだよ何回繰り返したって!
 でも、おじさんはどうしてかいつも喜んでくれるから、俺は募る尿意を我慢しきれない。途中で漏らしちゃったり、おじさんの体に引っかけちゃったりもしてる。おじさん曰くそれが可愛いらしいけど、どのへんが可愛く映ってるのかよくわかんないや。
 とりあえず今日もトイレでおしっこはさせてもらえないみたいだった。思い出すと急に募ってくるのが尿意なんだよね、膀胱がきゅんきゅんいっておしっこを出したがってる。でもまだお尻は寂しいままだし、もう一個のえっちなおもちゃも使ってない。
 ……もういいや、おしっこ、しちゃえ。
 そんな俺の内心をもおじさんは見透かしていたのか、尿道口に力を籠めようとする俺のおちんちんを爛々とした目で見つめてる。そんなに見られてたら……おしっこ、しにくいじゃない。
「やだぁ……見ないでぇ……おしっこ、したいのに……漏れちゃうよぉ」
 おしっこがしたい時、おじさんはこんな感じのことを俺の口から聞くと一層興奮するらしい。でも事実なんだ。見られてたらほんとに、おしっこしにくい。でもいつまでも我慢してられないし、いつかは漏らしちゃう。
「徹のおしっこもおもらしも可愛いんだから、見逃すわけにはいかないじゃないか。それとも、まだ出さずにいられるのなら、アナルパール使おうか」
 もう、おじさんったら!
 でもまだ漏らさずにいられそうな雰囲気はある。さくっと入れてもらって、さくっと……おしっこして、さくっとおじさんにも入れてもらえばそれでいい、ような。
 おじさんに入れてもらう前におしっこまでしちゃうのは今日が初めてになるかな、きっと。
「よ、よろしくお願い……します……」
 優しくしてね、おじさん。
 耳元で囁いてみたけれど、果たして効果はあったのか、どうか。

「待って待って待ってそんなの入んない怖いよおおぉ」
 及川徹、十八歳。鶏卵の大きさを馬鹿にしていました。エルサイズの卵は本気で大きいです。ニワトリさんを尊敬します。
「大丈夫だよ、僕のと大して変わらないじゃないか」
 おじさんはニコニコ笑顔でアナルパール片手にいざり寄ってくる。おじさんのものはもう準備万端なのに、どうしてもおもちゃを使いたいらしくて、大きなベッドの上で這って逃げる俺と追いかけっこをしていた。
「徹、おしっこ出てるよ」
「嘘っ!?」
 俺は咄嗟に自分の股間を押さえた。確かにちょっとだけ濡れてた。追いかけっこに夢中になっておもらししちゃうなんて子供みたいで、恥ずかしいったらない。
「ほら、捕まえた」
 しかもおじさんに足首を捕まえられて、動きを封じられた。お尻を高く突き出すような恰好でおじさんに捕まっちゃうとか、もう『挿入してください』と言わんばかりの体勢じゃないか。しかも、押さえてるのに、おちんちんからはおしっこがタラタラと溢れ出てきてる。シーツに黄色い染みが出来て、少しずつだけど大きくなっていく。やだやだ、恥ずかしい。
「徹、手で押さえてなくていいから、手をついて四つん這いになって?」
 言われたとおりの格好になると、遮るもののなくなったおしっこがチョロチョロと直接シーツを汚していく。おちんちんの先っぽからおしっこが垂れ流されているところまで、おじさんに見られてるんだ。恥ずかしくってたまらないはずなのに……興奮するのは、どうして?
「こ、こう?」
 体勢を整えている間にもシーツを侵食し、とうとう膝のあたりまで濡らし始めた俺のおしっこ。もう漏らすのもするのも変わんないや、と思って思いっきりおしっこをしたら、今まで乾いてたはずの手の方までおしっこが飛んで、シーツ全体がおしっこまみれになっちゃった。
「いや、おしっこは今のタイミングでしなくてもよかったんだけど……まあいいや、こっちも準備出来たし、一個目入れるよ」
 結局頭のところからお腹、お尻を置くところまで、おしっこでびっしょり。膀胱に溜まってた分を全部シーツにぶちまけたら、こんな風になるんだ……。
 おしっこをしたのがいい意味で緊張をほぐす材料になってくれたみたいで、一個目の卵がゆっくりと体の中に埋め込まれていく。
「徹、少しだけいきんでみて」
「いきむ?」
「腹筋に力入れて、排泄する時と同じようにして」
 ……何となく、おじさんの言いたいことがわかったような。自己流の『いきみ』をやってみると、それにあわせておじさんは卵を押し込んだらしく、ヌプッ、と音を立てて卵が体の中に入っていった。
「上手上手、徹はいい子だね……二個目も行ってみようか」
 同じ要領で二個目も入れてもらって、最後の三個目。
「三個目にはリング状のフックがついてるから、入れ終わったら徹が自分で出してみてね」
 おじさんはさらりととんでもないことを言ってのけた。
「え、え……ぁんっ」
 三個目の卵はちょっと小さいみたいで、つるんとあっさり中に入った。
「さ、後は自分のペースで抜いてごらん、徹」
 恐る恐るお尻に手をやると、確かに穴のところに指を引っかけて通せるような輪がついている。そっと引っ張ってみると、卵がお尻の穴のふちを拡げて、出よう出ようとしている。
 ずるり。引っ張ると確かに、卵の頭がお尻から出ようとしていた。
 その刺激に思わずお尻の穴を締めると、すぐ奥へと戻ってしまう卵。それも、結構な快感つきで。
「やっ、んっ」
 意外と難しいかも、これって。もう一回抜こうとしても、快感が勝ってしまって、すぐにきゅうっとお尻の穴が締まっちゃう。
「おじさぁん」
「仕方ないなぁ、今日はちゃんと卵は『産ませて』あげるけど、次からは自分で頑張るんだよ?」
「うん、うんっ」
 フックから指を外し、おしっこまみれのシーツに再び両手をつく。
 おじさんがフックに指を通して、引っ張る。穴が広がって、気持ちいい。思わずお尻の穴を締めようとしたら、おじさんにお尻を叩かれた。
「ひゃんっ!?」
「こら、ちゃんと産まない悪い子にはお仕置きだよ? 僕と徹の大事な卵なんだからね?」
 おじさんと、俺の。大事な大事な、卵。途端に愛着が湧いてきて、なんとしてでも無事に産んであげようって気持ちになってくる。
「そうそう、あまり体に力を入れすぎないで……引っ張るよ、いきんで」
「んんんっ」
 ぬぽっ。ようやく、卵が一個産み落とされた。それだけで俺の息は上がり、呼吸に肩が必要になる。
「その調子、その調子。ほら、二個目、いくよ……」

 無事に三つの卵を産み落とした時、俺は自分のおしっこが体につくのも忘れて、シーツに身を投げ出した。べちゃっ、って音がして、鼻先からアンモニア臭もする中、俺は無事に三つの卵を産めたことをただ喜んだ。
「おめでとう、徹。頑張ったね、立派だったよ、ちゃんと最後は自力で産めたんだから」
「……そう、なの?」
「そうだよ。三つめは、正真正銘、徹が自力で産んだ卵だ」
「そっ、か……俺、ちゃんと産めたんだ……」
 おしっこまみれの手に、おじさんの指が絡められる。
「頑張った徹には、ご褒美をあげなくちゃね。シャワーを浴びよう。そして、綺麗なシーツに取り替えて、今度は僕とひとつになろう」
「……うん!」



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