【牛及】お酒に呑まれた及川さんが潮吹きさせられる話

どうしてこうなったのか。
及川は自問自答する。
確か、売り言葉に買い言葉で喧嘩をしていたところまでは、記憶にあるし理解も出来る。
その先が鍵だった。
酒の勢いで言ってはならないことを口にして、牛島を怒らせた。
あの沸点の高い牛島を、だ。
シーツに縫い止められた手首に込められている力から、牛島の本気が感じ取れる。
同じく酔っているはずなのに、どう見ても牛島の顔色は素面に近い。
まさか、自分ばかりが一方的に飲まされていただけなのか。
企てに気がついても遅かった。
今日に限って、一般社会人と同じような格好をしているのもよろしくなかった。
ネクタイを抜かれて手首を頭上で縛られる。手を痛めることのないように、多少の余裕はあれども、もがけばもがいただけきつく締まっていく性質の悪い縛り方で。
シャツのボタンをひとつひとつ、あてつけのように牛島の片手が器用に動いて外していく。
こいつ、もしかして慣れてるのか。
そう思うと、酔いのまわった頭に別の熱がこもり始める。
怒りなのか、羞恥なのか。正体はわからないが、及川の頬が熱くなっていく。
ベルトに手がかかりスラックスを脱がされたところで、まだ足の自由なら残されていることを、及川は思い出した。
渾身の力で牛島を蹴り飛ばそうとしたのだが、未遂に終わり。
足を抱えられて、現在に至る。

絶体絶命、というやつだ。

同じ絶が付く熟語なら捧腹絶倒が良かった、とどうでもいいことを考えて現実から目を逸らしていられる時間は、そう長くはなかった。
続いて下着の中に手を突っ込まれ、無造作に性器を露出させられたのだから。
「っ、何してんだ!」
アルコールにやられた目は潤み、男を煽るだけの様相を呈していたのだが、そんなことには当然及川は気付かない。
牛島を見つめていると、相手が生唾を呑み込んだことに気付いて、自身の失態に思い至る程度には酔っていた。
「……ん、だから……何してんだ……やめろって……」
ふわふわとした眠気に身を委ねてしまいたいという思いと、それ以前に何とかしてこの男の前から逃げ出さなければ大変なことになるのに、という思いが交錯する。後者を掴み取ろうとして手を伸ばしても、指先を掠めては鼻先を舞う始末で。
怠惰がじりじりと及川を崖の下へと追いつめていく。
「やめろって、いってるのに……ふ、ぁ……っ!」
露出させられていた陰茎の先端を、不意に牛島が舐めたのだ。
唐突に泣き所を責められて、及川の体から力が抜けていく。
「やら、やめ……っう、あぅ……」
牛島の口技にあっけなく及川は陥落し、生理的な涙を浮かべる。
決して歯は立てずに先端を吸い上げては、尿道口に舌先をねじ込み、ちろちろと窪みを舐る。
射精を目的とした舌使いに、同じ男の及川が抗えるはずもなく。
「や、もうでる、出……っ……あ、れ……?」
寸前で口を離され、及川は肩透かしを食らい。
唾液と分泌液で濡れている及川の局部を尻目に、牛島はラテックス製の避妊具を取り出して。
こちらはややぎこちない手つきで、それぞれの局部に装着させた。
「……やはり、少し緩いか」
及川にとっては二重の意味で鼻持ちならないことを言ってのけた牛島は、濡れて色の変わった及川の下着を足首から引き抜き放り出す。
それどういう意味、と及川が憤慨するより先に、周到な準備の一環としてのローションを手に垂らし、両手を使い温めてから及川の花蕾に塗布した。
及川の抵抗は、もうない。
おあずけを食らっている及川の頭の中には、どうにかして快楽を手に入れることのみが存在し、他の余計な感情は鳴りを潜めている。
つぷん、と音を立てて牛島の指を呑み込んだ及川の『出口』は、程なくして『入口』へと変えられて。
羞恥で耳を塞ぎたくなるような音と共に襞をかき回す牛島の指が、及川の体内のとある一点を掠めたとき。
「ぅ、ひ、やぁ……!」
悲鳴をあげ、身を戦慄かせて、及川は動きを止めた。
何の音もしなかった。
が、その代わりに、避妊具の先の精液溜まりが白いもので膨れていく。
何度も脈打ち、痙攣のような動きを繰り返し、牛島の手で及川は達していた。
体内を穿たれる余韻に及川が浸る間隙はなかった。
牛島の手は尚も及川の内部を攪拌し、自身がぎりぎり収まるかどうかといった見込みの広さを確保するや否や。
指と引き換えに一息に、及川の中へと牛島自身を突き入れた。

その拍子にもう一度、及川は達したらしい。
白い濁りが避妊具の内側から溢れ出て、茎を、根元を、濡らしていく。
「……う、しわかちゃ……だめ……だめ、ぇ」
「何が駄目なのか」
大真面目なことを口では言いつつ、及川を堪能するのに余念のない牛島。
でも、だって、としどろもどろな及川の返事を待たずに、やわらかな粘膜を抉り擦り上げれば、筆舌に尽くしがたい快が牛島の背すじを駆け巡る。
喘ぎつつもようやく及川が返事できるようになった時には、もう及川の限界だった。
「だめ……だって言ったのに……」
だめ。でちゃう。
掠れ声で及川が訴えるのとどちらが早かっただろうか。
ふるり、と身を震わせた及川が、牛島のものを食い締めて三度達したのと。
避妊具の先端が一層膨れて、透明な液が溢れ出、二人の下腹部やシーツを濡らしたのと、では。
感じ過ぎて潮を噴いてしまった及川は、めそめそ泣くばかりであったが。
その泣き顔でまさに好みの中心を射抜かれてしまった牛島の腰が動きを止めるには。
まだ数時間は、かかるだろう。

[ 52/89 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -