【宮及】宮兄弟と及川の三人がセフレだったら

本当に、嫌になる。
鬱だってわけじゃない。鬱っ気があるとも思わない。
でも嫌なんだ。
好きなように弄られるのが。
先に知った方──侑の手が、俺の顎から喉を辿ってお伺いを立てる。
こんなところがそっくりで。
侑は俺の秘密をきっと知っている。
後で知った方──治とも、俺は関係を持っているって。
それを俺に黙っていることで、弱みを握った気でいるんだろうな。
俺の知る限り、侑はそういう男だ。
治とは対照的に。

この間、治と「初めて」をした。
俺の中の形がすっかり侑仕様になっていたのを、治が書き換えたんだ。
俺の中がもとはどうだったのかは、侑しか知らない。
俺に男を教えたのは侑だし、侑が男の体の抱き方を知ったのは俺を通してだ。
治は違う。
治は、俺が侑のお下がりだなんて知らない。
なのに俺の煽り方を知っている。
そら恐ろしいほどに、二人の抱き方は酷似している。
どっちに抱かれているのかが、わからなくなる時さえある。
なのに俺は、俺の心が誰にあるのかさえ、ずっとはぐらかしているんだ。

宮侑。
俺のコンプレックスを刺激するような存在になり得た男。
似たもの同士に見えるからだろう、きっと。
事はそうは運ばなかった、ってだけで。
侑が俺を見る目は、好敵手としてのものではなかった。
性欲処理の格好の獲物としてしか、俺を認識しようとしなかった。

宮治。
ユースには選ばれていない彼には、侑のような華はないように最初は思われた。とっつきにくそうに見えるけれどもそれは見た目だけ。
色々な意味で侑とは反対。と思いきや抱き方はそっくり。申し合わせたかのように、ね。
侑は治と俺との関係を知っていても、治は絶対に侑と俺との関係を知らない。
疑いもしないし、侑は尻尾を掴ませるようなヘマはやらない。
けど、怒らせたらきっと侑と共謀してとんでもないことをされるに決まってる。
だから、俺にとっては侑よりも治を怒らせたくない。
侑を怒らせても単品で済むからだ。
過去に何度もそんな目に遭ってきたから、同じことが繰り返されるだけなんだろう。

と思っていた、俺が馬鹿だった。

侑の手が俺の両手首を押さえつけてる。
治の杭が俺の下半身を繋ぎ留めている。
ちなみに、俺は肩にシャツをひっかけたきりの格好で、他には衣類らしい衣類を身に着けていない。
侑も治も、全裸。
この状況が意味するところは。
ああ、考えたくない。






落ち着かない。
それも当然か、二股が最悪の形でばれたんだから。
いや、セフレに二股ってあるのかどうか、俺は知らないけど。
冷静になって状況を整理しよう、下半身と喉には犠牲になってもらうとして。

まず、今日は侑がいないって話だったから、治の部屋で過ごすことにしたんだ。
過ごすって言っても、一般的な友人付き合いらしいことはいっさい無し。
部屋で過ごすイコール、セックスの時間って勘定になる。
治も当然そのつもりで、部屋に入るなり性急に俺を求めてきた。
俺にも応じない理由はこれといってなく、絡めた舌を吸い合ってそのままベッドに。
治もすっかり俺に慣れて、服を脱がせてローション温めて俺の尻を弄って、とそこまでは良かったんだ。
あらかじめ中は洗っておいたからとか、下準備を気にかける余裕もあった。
その先がよろしくなかったんだ。
急に予定が変わって、侑が家に帰ってきてしまっていたんだ。
そうとは知らない俺たち。
家には誰もいないつもりで、声を殺さずにいつものように、互いの体に耽っていて。
抜き足差し足、侑が部屋に近づいていて、扉を開けるまで。
俺たちは、侑のことを忘れていたんだ。

侑に見つかったその瞬間は、今まさに二人で一緒にイきそう、って場面で。
物音ひとつ立てずに俺たちに近寄った侑が、正常位でお愉しみだった俺のアレの根元を急に押さえつけたんだ。
お陰で俺はイきそびれたし、横から文字通り割って入った侑に驚いた治は、俺が急に締め付けたせいで一人でイっちゃうし。
中がじわっと濡れてく感触がして、眉間に皺を寄せていられる猶予なんかも生憎となくて。
ちっ、つけてたはずなのに途中で破れてたなんて運がない。
いや、侑に見つかってるって時点で運も何もないか。
侑は俺たちの事にも薄々感づいていたみたいだし、隙あらば三人で、って仄めかしてもいたから。

膨れたままの治のアレは俺の中から出ていく気配を見せない。
むしろ、侑と俺が最初からそういう関係だったって吹き込まれて、逆上しそうな雰囲気さえ漂わせてる。
このままだと腹痛でひどい目に遭うからさっさと退けてほしいのに。
治は侑と何やら話し込んでて下半身はお留守、今のうちに抜け出せたりしないかな?
よいしょ。
開きっぱなしの股を閉じようとしたら、中の治が思いっきり擦れる。
どうしよう、滅茶苦茶気持ちいい。
てか、今のでイきそうになった。
ここでやめるのが勿体ない気もしてくる。
名残惜しいというか、とことん利用してから捨ててしまおうという打算が働いたんだろうな。
腰を揺らすと、侑との話にかかりきりになっていた治がこっちを向いて、汗にまみれた額にキスしてくる。
今日は治と過ごすって決めてるんだから、侑はさっさと部屋から出て行ってほしいんだけどな?
顔に出ていたのか、むっとした表情の侑が俺を見てくる。
俺のアレからようやく手を放して、一息つけるかと思いきや。
その手は俺の両の手首を掴み、ベッドヘッドへと縛りつけたのだった……。

逃がさない。

二人の目が、そう語っているような気がした。
俺の自由を奪った侑は、やれやれ、といった風に自分も服を脱ぎ始める。
最初から治は裸だったし、俺もそうだ。
男二人でベッドに乗っていただけでも狭かったのに、そこに三人目が乱入したとなれば狭さに拍車がかかる。
自然と俺の上体は、侑の膝の上に落ち着き、下半身は治に明け渡す感じになった。
暴れたら肩が痛むし、侑があらぬところをつねるから、大人しくしているしかない。
なのに治も侑も、俺の都合なんか全然斟酌してくれずに、俺の体で好き勝手に性処理してる。
それもそっか、恋人でも何でもないもんな、ただのセフレだもの。
ぼんやりしてたら締め付けが甘かったのか、治にぴしゃりと尻を打たれる。
痛い。けどどこか、気持ちいい……?
いやいやそんな。
俺、そんな趣味なんかないし。ないはずだし。
ああでも、締めなおしたらちゃんと俺のイイところを抉ってくれる。
ビリビリ、くる。
たまんない。
俺が治の体ばかり貪ってるのを侑は良くは思わなかったのか、乳首に爪を立てられひっかかれた。
少しだけ後ろに退いたかと思ったら、顔だけ横を向かせて咥えろって。
自分勝手!
治よりも侑の方が何倍も自分勝手だから困る。こういう時。
お尻とお口を両立できるほど、俺は場数踏んでないよ。
口に集中すれば締まりが悪いって治に叩かれるし、かといって尻に集中すれば今度は侑が奥まで突っ込んでくるから反射で吐き気を催すし、かなりきつい。
文句の一つも言えないまま、それぞれ勝手に俺の中に射精してさあ。
ぐちゃぐちゃのどろどろだよ、もう……。


[ 78/89 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -