【岩及】オフ本のおまけ

こんにちは! 及川徹です。
一時期、ぼっち飯の実現を目指して頑張っていたこともありました。
けど、正直なところ、俺が持って生まれた運はそういう方面にはとんと縁がないらしくて。
今回からは、その逆を試してみようと思います。
名付けて!
狙え! デート飯連続記録!
……名づけるほどひねりも何もないタイトルだったね、うん。
簡単に説明すると、適当に声をかけた誰かと二人っきりでご飯を食べるの。
勿論、こっちからのおさわりは禁止。向こうが触ってきた場合は……どうしようか?
今後の展開次第でそのへんのルールも決めなきゃね。
幸か不幸か、俺の周りには俺に対してただならぬ好意を抱いている連中が多いので、結構な記録が樹立されそうです。期待できますね。
あ、ちなみにぼっち飯を期待して煽っていた節のある国見ちゃんは厳重注意処分としました。
今後は一切の干渉はされないはずです。良識派も見張りにつけたことだし、俺はせいぜい男どもをたぶらかして遊ぶ悪いオンナ?体験をして遊んでやろうと思いました。

お、そんなことを考えているところに、昼休みで暇そうな岩ちゃん発見。
今日のターゲットは岩ちゃんにしよう。初級者向けっぽそうだし、岩ちゃんだったら俺に過度に辛辣にあたったりもしないだろうし。
「いわちゃーん」
早速声をかけてみました。
しかし、距離があるせいか、届かなかったみたいです。
「いわちゃーん!」
今度はこっちを向きました。家の中で害虫でも見かけたかのような、とっても嫌そうな顔をしています。出だしから不調のようです。声をかける相手を、間違えたかもしれません。
「いわちゃん、お昼もう食べた?」
牛乳パンとサンドイッチとカフェオレの入ったコンビニ袋を後ろ手にぶら下げて、上体を軽く倒してかわいく上目遣いでお誘いをかけてみました。岩ちゃんは確か、この角度に弱いはず。
うっ、と一瞬たじろぎました。いい感じです。
でもでも。だめでした。
「まだ昼飯食ってなかったのかよ、グズ」
ひどい!
言うに事欠いてグズだなんて!
まだお昼休みが始まって10分くらいしか経ってないのに、もう岩ちゃんは食べ終わったっていうの?
ひどいひどい。こんなにかわいい幼馴染を待っててもくれないなんて。
「……ひどいよぉ、いわちゃん……一緒に食べようと思ったのに……」
なんてこと。まさか連続記録の樹立どころか、第一歩を踏み外すことになるなんて。
岩ちゃんがつれない。胸の中が薄暗くなっていく。なんでこんなに、もやもやするんだろう。独占欲、強すぎかなぁ。
「……あんだよ。一緒にいてやらねえとは、まだ言ってねえだろうが……」
……え? って、ことは?
「……一緒に、食べてくれるの? いわちゃん」
「その代わり、少し寄越せよ」
俺がぶら下げた袋を指差して、岩ちゃんが言う。
「…………うん!!」
ぱあっと、胸の中の雲が晴れて虹がかかる。光が差し込んで、綺麗な二重の虹が見える。
岩ちゃんはいつだって、俺にしあわせをくれるんだ。

中庭のベンチが空いていたからそこに二人で腰かけて、早速サンドイッチの封を切る。
オーソドックスなBLTと、ポテトサラダにたまごサンド。
岩ちゃんはポテトサラダサンドをひょいと摘み上げ、早速かぶりついてる。そんな食べ方したら口の端につきそうなのに、つかないんだから変なところが器用なんだ、岩ちゃんは。
俺は俺で、たまごサンドをぱくつく。
あんまりマヨネーズが入っていると体によくないのはわかってるけど、少なすぎるとどうも味気ないから、こうして折衷案を採っている。
たった二口でポテトサラダサンドを平らげた岩ちゃんは、まだ食べ足りないのか、俺の方を向いてじっと見つめてる。
いい感じに岩ちゃんは俺に釣られてくれている。俺の食べてるたまごサンドがおいしそうに見えてるのか、それとも俺自身がおいしそうに見えてるのかは、とりあえず脇に寄せておいて。
たまごサンドを食べ終えた俺は続いて、BLTサンドを手に取る。野菜多めの、比較的体に優しい具の構成をしたサンドイッチ。自分の家で再現しようとしても、トマトがべちゃべちゃになっていまいち食感がよろしくないんだ。だからこうして、既製品を買って食べることが多い。
あーん。
ぱくり。
もぐもぐ。
単なる咀嚼を、さぞかし興味深い現象のように、しげしげと岩ちゃんは見つめてくる。
もしかして俺、立派に、悪いオトコになってる?
岩ちゃんの心を惑わすような、妖しい魅力を持ったオトコになれてる?
自分じゃよくわかんないからいいけどね。岩ちゃんがひっかかってきたら、細かいルールの制定といきたいところだし。
サンドイッチを平らげた俺は、続いてお待ちかねの牛乳パンに手をつける。
両手で袋の両端を持って、真横に引っ張ると今日はうまく袋が開いた。
今日もクリームたっぷり、おいしそう!
いただきまーす!
ぱくり。
思いっきり噛みついた。
ふわふわの牛乳入り生地の間に、甘い生クリームがたっぷり挟まってる、俺の大好物。
岩ちゃんはこれをパンと認めてくれない。お菓子だといって俺の前に立ちふさがるんだ。
菓子パンも立派なパンなのに、変な話だよね?
こんなにおいしいのに。
「……おい」
ふぇ?
岩ちゃんに呼ばれた。何だろう。
「クリーム、盛大についてっぞ」
え、それは困る。
「どこどこ、クリームついてるのどこ、取って〜」
口の周りについてるのは何となくわかるんだけど、どこなのかがわからない。
「じっとしてろ、取ってやる」
どこだろう。目を閉じて、俺はじっとしてた。
そしたら、だよ?
ふにゅり、って。
口に、やわらかいものがあたった。
びっくりして目を開けたら、目を閉じた岩ちゃんの顔が至近距離で見える。
ど、どういうこと??
混乱して目を白黒させてる俺に気付いたのか、開き直った岩ちゃんは、薄く開いた俺の唇の間から舌をねじ込んでくる。
あったかくて、やわらかくて、ちょっとえっちな気分になってくる。
気持ちいい、かも。
気付いたら、俺からも岩ちゃんの舌に自分の舌を絡めて、口の端から唾液が垂れてた。
なにこれ知らない。
こんな岩ちゃん、俺知らない。
いくら岩ちゃん相手だからって、男にこんなことされて大人しくしてる自分が、信じられない。

それからしばらくして。
岩ちゃんは口を離した。
これ以上続けたら我慢できなくなる、って。
すっかりぬるくなったカフェオレの責任も取らずに、一人で教室に戻っちゃってさ。
とっくに我慢ができなくなってて、ベンチから立ち上がれなくなってる俺は、一体どうしたらいいのさ!
責任とってよ、岩ちゃんってば!

[ 27/89 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -