目指せ!ぼっち飯 番外編【デート飯を回避せよ!・R18日向】

国見です、緊急事態です。
及川さんに俺のしていることがばれてしまいました。
しかし、この程度でへこたれていては青城バレー部員は務まりません。立派に責務を果たす上でも、及川さんの昼飯事情をこれからも追尾していく所存でございます。ひきつづき、皆様よろしくお願いいたします。

それにしても、及川さんは意外なことに、女の子には大して興味がないそうです。
これは岩泉さんという確かな筋から入手した情報なので、信憑性はかなり高いかと思われます。
興味も関心も然程ないから、平等に優しく上辺だけの自分を演じていられるんだとか。
確かに言われてみれば、女子相手の及川さんは出来のいい仮面をかぶった道化師みたいなもんですね。
どこがどう、と聞かれてもうまく説明はできませんが。
その分、青城バレー部員の前では素が出てかわいらしい人なんですよ。
あ、念のために言っておきますが、俺は及川さんの事はそういう目では見ていませんから。
年上年下関係なしに虜にしていく人ですが、万人が万人そうだったらいくらなんでも気の毒ですから。
及川さんは見ているだけでも楽しくてたまらない玩具ですし。

おっと、話が逸れている間に及川さんが家から出てきました。
どことなくそわそわしています。デートにでも行くんでしょうか。
となると、今日会う相手が及川さんの想い人かもしれません。岩泉さんでも掴めなかった及川さんの想い人って、果たして誰なんでしょう……?

度の入っていない眼鏡をかけた及川さんは、手持ちの服を最大限に活用したお洒落な格好をしています。格好いいかと言われれば、ああ今日もかわいいですね及川さんは、って感想が先に飛び出す感じではありますが。
そうこうしているうちに駅へと向かった及川さんは、人を待つようです。
俺も及川さんから死角になる木陰に隠れて様子を窺うことにします。

…………なんでしょうね。
及川さんはこんなに、少女めいたふるまいをする人だったんでしょうか。
あたりを見回し、手元の時計を見ては、またあたりを見回して。
目当ての人が現れるのを、きっと胸をときめかせて待っているんでしょうね。
しかし、俺には義務があります。
及川さんの想い人が誰なのかをはっきりさせること。
そして、絶妙なタイミングで二人の間に割り込んで、デートをぶち壊しにすること。
そうでもしなければ、ダービーは面白くありませんから。

……おや。
ターゲットが近づいてきたようです。
及川さんが手を振って、こっちこっち、と人を呼んでいます。
……俺の知っている、人でした。





「日向、久しぶり」
「だ……及川さんも、お久しぶりです」
「いいっていいって、二人の時は敬語はなし、って前に言ったよね」
からからと及川さんが、笑ってる。
烏野のチビ……日向め。いつの間に及川さんを手籠めに……は、してるかどうかは不明でも……こんなに仲良く。
「で、今日はどこに連れてってくれるの?」
出た。及川さんの、通称『王子様スマイル』。でもそんなのは嘘。本当はあの人は、自分をエスコートしてくれる自分だけの王子様を待ってたんだ。そんなことも見抜けないようじゃ、女の勘なんてのも大してあてにならないのかもしれない。ちょっとだけ体を前に倒して、相手の目を覗き込むようにきらきらした目でまっすぐに見据えられたら、並みの奴らじゃひとたまりもない。
でも日向は別だ。あいつは色々と規格外で、女生徒の言う及川さんの『王子様っぷり』がまるで効かない。せいぜいが『王女様』だ。
「えっと、この間はプラネタリウムに行きましたから、今度は……」
ぐぅ。
どちらのものともつかない、腹の虫が鳴った。
くすっ、と及川さんが笑う。
「先にご飯にしよっか、ご飯食べながら、今日の予定、ゆっくり聞かせてほしいな」
ああもうかわいい。
終始及川さんの雰囲気がやわらかい。
「あっ、それなら」
日向が及川さんの手を引いて、唐突に歩き出す。
「とっておきの場所があるんで、何も言わずについてきてください」
……一体どこだ。
店の名前も言わずに、及川さんをどこへ連れ込むつもりだ。
嫌な予感がした俺は、二人の警戒心が周囲から逸れたのをいいことに、堂々と尾行を開始した。

嫌な予感は最悪の形で的中してしまった。
二人が入っていったのは、本来俺たちの年齢では入っちゃいけなかったはずの施設──ラブホテルだ。
え、え、と動揺しっぱなしの及川さんには気の毒ですが、日向が部屋を選んでいる間にこのホテルについて調べさせてもらいました。
繁華街の端にある割には施設が充実していて、それはフードメニューにも言えるってことと。
サービスタイム中は、何をどれだけ食べようと料金が同一だってこと。
実質、『食べ放題』だ。
流石にそんな中に割って入るだけの度胸は俺にはない。
食べ放題のうたい文句に見事に引っかかった及川さんは日向に連れられて、ホテルのとある一室に消えていった。
俺が見届けられたのはそこまで。その先は、及川さんじゃないと、わからない。





「日向? この部屋、テーブルが大きいのはわかるんだけど、それ以上にベッド広くない?」
及川の問いかけに答える前に、日向が及川の後ろから抱きつく。
「そりゃあ、そういう場所ですから」
「……え? ……やっぱり、『そう』なの?」
「はい」
でもここのご飯がおいしいのは確からしいですよ、というのは、日向の台詞。
言いながら及川の着衣をさりげなく寛げていくあたり、全くぬかりはない。
「先にいくつか注文しておいて、その間に二人でシャワーでも浴びておきませんか? 今日ちょっと寒かったですし」
「ん〜……それもそっか、じゃあ先にシャワー浴びてくるから、メニューは日向に任せるね」
くるりと振り返り日向の額に口づけた及川は、一人服を脱ぎ捨てつつシャワールームへと姿を消す。
その服を一枚一枚拾い上げ、悪い笑みを浮かべる日向とは対照的に。
及川は鼻歌を歌いながら、あたたかい湯煙に包まれていた。

腰にタオルを巻き、髪を拭きながら及川がシャワールームから出てきたのと入れ違いに、日向がシャワーを浴びに行っている間に。
日向がいくつも注文していたフードメニューが一斉に届き、テーブルの上は小洒落たレストランさながらになっていた。
「日向、日向ぁ」
シャワールームの扉越しに日向を呼ぶ及川。
「ご飯届いたから、早めに出ておいでー」
「わかりました!」
それから大急ぎでシャワーを済ませたのか、まだ髪から滴を滴り落としている日向が及川に合流する。
「ほんとに色々食べられるんだね、こんな場所でも」
「そうなんですよ、調べた時は半信半疑だったんですが、結構評判良かったんで思い切って来てみたんです」
及川の正面に陣取った日向が、サラダを取り分け及川に手渡す。
「なんだ、俺はてっきり……」
「てっきり?」
日向の目が妖しく輝く。
「て、てっきり……その……」
「及川さん」
向かい合って座っていた日向が急に立ち上がり、及川の隣に腰かける。
ハンバーグの咀嚼に夢中だった及川は日向の『スイッチ』が入ったことに気付かず、ん?と首を傾げただけだった。
「こういうことも、期待してたんですよね」
急に深々と、日向は及川に口づける。
口移しでハンバーグをいくらか日向は強奪し、及川の口の端についたソースを舐めとって、告げる。
「俺だって、腹ぺこなんです」
もう一度口づけた日向は、舌先で隅々まで及川の口中のハンバーグの残滓を浚っていく。
「ん……んん……っ」
口の端から唾液が垂れていくのを気にする余裕もなく、及川は日向のされるがままになっていた。
「っ、及川さん、ベッド、行きませんか」





顔を真っ赤にした及川が、日向に手を引かれてベッドに横たわり。
その上に日向がまたがった時に、両者の関係性は決定した。
「徹さん、タオル引き抜くんで、腰少しだけ浮かしてください」
言われたとおりに及川が腰を浮かしてタオルを日向に預けると、日向もまた自分の腰に巻いていたタオルを放り出した。
隆々とそびえ立つ雄刀を心の準備無しに見てしまい、思わずぎゅっと目を閉じる及川。
「……徹さん、徹さん。痛く、しませんから。大丈夫、ですから」
体格は小柄とは言っても、それ自体は決して小さくはない。垣間見てしまった及川は、果たしてそれが自分の中に本当に入るのかどうかにすっかり怯えてしまい、枕を抱き締めて震えるばかりだった。
「無理は、しません。……でも、ちゃんと気持ちよくなってほしいから、ちょっとだけ我慢してみてください」
だめそうだったら、枕で殴ってくれていいですから。
そう付け加えた日向は、掌で温めていたローションを指先に絡めて、まずは一本目だけを及川の菊花の縁にあて、『お伺い』をたてた。
拒絶の意がなかったことに安堵した日向は、そのまま縁を撫でて十分に濡らし、ひっかくような動きを繰り返しながら徐々に及川の体内へと人差し指を埋没させていった。
「……わかりますか、徹さん。今、指、一本ですけど入ってるんです」
「う、そ……痛く、ないよ……? もう少しだけ奥まで、試してみて?」
「じゃあ次、中指にしてみますね」
同じように中指にもローションを絡めて、ゆっくりと及川の腹の中に埋め込んでいく日向。
「今度はどうですか? 一応、指の根元まで入ってるんですけど」
「……うん、だいじょぶ。痛くないよ、日向」
中を軽くかき回してみても穏やかな及川の表情は変わらず、日向は再び提案をした。
「二本入れてみても平気だったら……その、俺、徹さんとしたいです」
『したい』のあたりで、及川の肩がびくりと硬直したが。
痛かったり、無理だったりすればやめればいいのだと、及川はまだ日向を信じ切っていた。
「じゃあ……二本、入れてみて」
「わかりました」
じゅぷり。
濡れに濡れた二本の指は、あっさりと及川の中に埋まっていく。
「ん……っ、なん、か……これ、……きもち、い? かも」
「少しだけ動かしてみますね」
日向の人差し指と中指が、くちゃくちゃと音を立てて及川の中を攪拌する。
「あ、あっ……ん、もっ……とぉ……!」
「とおるさん、俺、もう我慢できないです、痛くしませんから入れますね」
指を引き抜いて及川の穴を広げ、自分のモノをあてがい腰をすすめていく日向。
指とは勝手の違う熱と質量に体を割かれる違和感に及川が鳥肌を立てた時には、もう遅かった。
「あ、まって、日向……っ!」
根元まで収め切った日向は早速腰を振り始めていて、ちゅぷん、じゅぷっ、と濡れた音が広がるばかりで。
「や、まって、なんかへん、あたる、あたってるぅ……!」
とろりとろりと、及川の先端から白く濁った液が溢れ出す。抜き差しのたびにちょうど前立腺を擦られてしまっては、処女を散らしたばかりの及川が耐えきれるはずもなかった。
「やぁん、ひな、たぁ……! イく、イっちゃうから、だめ……ぇ!」
ぴゅる、ぴゅるるるる。
及川の性器から放たれた放物線は抱きしめていた枕を濡らし、その布地の色を濃くした。
「あ、あぅ……っ……なんか、でちゃった……」
ひととおりイき終えてきゅうっと締まった及川の体内にも、ぴゅぴゅっ、と勢いのある何かがかけられる。
「……あ……すいません、徹さん……中に、出ちゃいました」
「……ん、いい、よ……日向とひとつになれて、俺、うれし……」
ぐぅ。
再び、どちらのものとも知れない腹の虫が鳴く。
しかし、その腹の虫の音は無視された。
日向が及川に二度目を挑みかかったためだった。

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