目指せ！ぼっち飯 番外編【時は流れて・オールスターズ？】
ぼっち飯の夢は儚く消えた。
夢見てる場合じゃなくなったから。
どうしてか、って？
簡単だよ。
俺を取り巻く野郎どもが、一斉に本気を出してきたからだよ！
誰が俺の「はじめてのひと」になるかって！
冗談じゃない！！
どうして及川さんの同意が必要だって発想が全員から抜け落ちてるわけ？
わけわかんないよもう！
おはようからおやすみまで心が休まる瞬間がないよ！
まず幼馴染が本気モードで朝おこしに来るってあたり、よくあるラブコメディにそっくりだけど、相手は同性だからね？
しかも自分に絶賛片思い中。
起きたらすぐに色んな手段でおはようの連絡が。
体調気遣ってくれる人もいるけど、もう下心は知ってるから無視しちゃってる。
東峰くんとか特にそう。ああ見えて意外と根回しが……おっと。
更なる知能犯もいるから、あまり深く追求すると後が怖いし、このへんにしておこう。
ランニングしてると、探知機でも搭載しているのか、飛雄が勝手に後ろを走ってるし。
あんな顔して心配性の岩ちゃんもその後ろをついてくる。
で、運が悪かったらここに人数がさらに追加されて、カルガモの親子よろしく行列が出来ちゃう。
男ばかりの全然うれしくない集団だよ、マラソンやってるわけでもないのに縦に伸びた集団が出来ちゃうんだよ？
怖いよね、普通に考えたら。
ぼっち飯どころじゃないって理由はもう一つある。
俺たち三年は自由登校の期間に入ったから、学校に通う頻度が一気に減ったこと。それにより、以前より俺を追いかけまわしやすくなってしまった、って事情があって……。
話をしたらこれだ、早速牛野郎とエンカウントしたし。おかしいな、白鳥沢からも結構離れてるはずなのに。
え、自宅に戻って家族と暮らしてるって？
だからいつでも連れ込めるって？
聞かなかったことにしてあげるよ、だから黙りな？ ね？ ホントもうやめて。目が冗談言ってない。
家の人に一体何を聞かせるつもりなのかな？ 及川さんを納得させられるような理屈、持ってて言ってる？
そうそう、理屈と言えば、白布くん。
五色くんの馬鹿がいよいよ手に負えなくなったとか、本人の名誉なんかあったもんじゃない尤もらしい理由をつけて、家庭教師にってしきりに俺を誘いこもうとしてくるんだよ。五色くんの成績が危なっかしいのは多分嘘じゃないはずだけど、一般入学で入れる頭があるんだったら、どうにかできる範疇じゃないのかな？
五色くんも五色くんで、家庭教師お願いします！ って直球で縋ってくるから断るのもちょっと後味悪いし。
暇してるから勉強教えても問題ないように、傍からは見えるんだろうけど、五色くんも俺狙いの一人だからね？
きっと行ったら行ったで別の問題が起きる気しかしないんだよね？
烏野についてはもうノータッチで生きていきたかった。
俺に関する情報がガバガバなので、行く先々の学校と親睦を深めるたびに俺の知らないところで「俺を取り巻く野郎ども」をこしらえてくるんだ。どうして画像一枚でころっと俺に転がってしまうのか、研究する価値があるんじゃないだろうか。
俺が認識してる中でも、最低五人だからね？
知らない間に何人に伝染してるかわからない。
病気みたいだって？
質の悪い感染症だったら治療法もあるんだろうなあ。生憎と重症化の一途をたどってるみたいですけどね。
俺を拗らせたらどうなるのか、話を聞くのも恐ろしくて最近は近寄ってない。
けど避けてる時ほどチビちゃんと鉢合わせする。
目をキラキラさせたいつものチビちゃんと、狩猟者の目をしてる雄モードのチビちゃん。会話の中の何かが引き金を引いて、前者から後者へと切り替わる。一瞬の判断力が求められ、逃げ遅れると何かしらの被害が俺に出る。
だから、俺のファーストキスはチビちゃんのものだった。
セカンド以降はもう雪崩のように次々と……なので、順番はあやふや。奴らの中でも協定が結ばれていたらしく、キス以降は各人の頑張りによって青天井って話らしい。
それはもう協定じゃないよって突っ込んでも聞き入れてもらえそうになかったから、以来無視してる。
無視しきれずに捕まって俺に被害が出る筆頭がチビちゃん、なんだよね……。
背は伸びつつあるけど、俺に追い付くのはかなり先かそんな日は来ないか、どっちだろうね〜。
ノータッチでいきたかったけど、烏野三年たちはかなりしたたかだった。
俺の進路を金田一経由で聞き出して、志望校をわざわざ変えたらしい。
将来のこととか考えてるのかって言いたかったよ？
けどさ、それ聞いたら変な勘違いされて余計に面倒なことになりそうだったから、口出しするのはやめた。
そこまで俺たちのことを気にかけてくれていたのか！ なんて言い出しそうなんだもの。
一応、志望の学部はあるみたいだから、大して心配してるわけでもないけどね、何かと顔を合わせる機会がこれから増えちゃうのかって思うと、なんだかなあって。
あ、当然ながら岩ちゃんと牛野郎も同じ大学のようです。
牛野郎はバレーでの推薦、岩ちゃんはお目付け役として一般入学で。
でもさあ、県内の大学じゃないんだよ？
一人暮らししないと通えない、県外の大学だよ？
なのに、この県民密集っぷりは、地元の縮図としか思えないよね？
これだけなら。
そこに、さらなるエッセンスが混じってるんだもの！
バレーの強豪校だからって、梟谷の元エースやら、音駒の寝癖の人やら、雑多に野菜をつめあわせたサラダボウル状態。
こんな大学に誰がした！
来年になったら赤葦くんまで入学するって話だったよ！
しかも、構内の下見に行った時に守衛さんにお菓子もらったし、バレー部の先輩まで熱っぽい目で俺を見る始末だし、この先の生活って嵐しか待ってないのかもしれない……。
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