グラシエ 淫具のテスター? これも依頼ですので!

いや、さすがにまずいんじゃないかと思ったんだ。
けど……騎空挺の修理にはそれなりの期間がかかるし、その間に必要な団員全員の滞在費なんてのは予備費で賄えなかったから日々の節約が功を奏さなかったと言われると……ぐぅの音も出ない。
そんな時に、高額の報酬が手に入る僕たちご指名の依頼が来て。
移動手段が今はないんですけど、って伝えてお断りするしかないかなって思ってたんだよ、当初は。
でもね?
大勢の人に喜んでもらえるような商品開発のテスターになってくれれば、滞在費をはじめとした諸々の経費を全部向こうが負担してくれるって言うんだ。
一部ポケットマネーが潤沢な団員はいても団としては大して裕福じゃないから、本当にこの条件は魅力的だったんだよ。
仲間を危険に晒す依頼内容ってわけでもないから……いや、パーシヴァルあたりに事前に話を聞かれていたら何が何でも話を破談に持ち込もうとしただろうけど……お金はね、大事なものだからね、仕方ないんだよ。
だから僕は署名して、団員たちの衣食住の保持を優先させた。
断固として拒否するであろう一部の団員も、丸め込めないわけじゃないから、ね?

<シエテに使ってみた>

「団長ちゃん、俺ご指名でやってもらいたいことがあるってなになに? 剣拓コレクションでもとうとう見たくなっちゃった〜?」
夜に部屋を訪ねると、寝る支度を整えようとしていた湯上り姿のシエテが僕を出迎えてくれた。
いつもと変わらない笑みを浮かべるシエテ。まあ僕の恋人であるんだけど、どうも本人には肝心な時にその自覚が抜け落ちる悪癖があるらしく、大人と子供っていう一線を引いて僕を世間のおかしなものから守ろうとする。シエテ個人の意思でそうしているのは百も承知なんだけど、僕だってもう何年も団長業をやっているし修羅場を経験したこともある。もうそろそろ、シエテにただ庇護されるだけの存在じゃないんだってことを、知ってもらいたい。
いい機会だと思って、テスターの一番手にシエテを選んだ。
「とりあえず……下全部脱いで、ベッドに仰向けになって足開いて」
え、と一瞬表情を引きつらせるシエテ。そんな風に、僕が何もしてこない無垢な精神のままだと思い込んでいられるのは、残念だけど今日が最後だよ。
「聞こえなかった? 下全部脱いで」
返事を待たずに、僕はシエテの真っ黒なビキニパンツに手をかけた。
伸縮性のある、布面積としては小さなそれを下へとずらすと、シエテの立派な雄の器官がまろび出てくる。まだやわらかで警戒も何もしていない陰茎を握りこみ、あいているもう片方の手でパンツを脱がせながら鍛錬で丸みを帯びている臀部に触れる。丘の合間の窪みはまだしっとりと濡れている。今日はもう、そこが乾くことはないだろう。
「だ、団長ちゃんったら、せっかちさんだな〜、お兄さんまだ準備できてないのに」
「とか言ってどうせ後はローション仕込むだけとかそんななんでしょ? 中洗って、念入りに拡げてほぐして、一度も僕にそういう練習させてくれてないんだから」
思い当たる節しかないシエテは早速僕の目からよそへと視線を逸らす。足首までおろした下着を引き抜くのには協力的なのに、シエテは僕にとっては余計な気を回しがちなんだ。ちゃんと対等な立場になりたいってどれだけ僕が願っても、肝心のシエテはなかなか同じ気持ちにはなってくれない。そうする気があるのかどうかさえわからない。
だから僕は、同じ騎空挺の中で花開いている他の恋の花たちを羨んでしまったりもするんだ。
時として離れる時はあっても、終生を共にと誓い合う仲なのか。
いつも一緒にいて、空が迎えに来る時が別々でも同じ墓で眠ろうと約束するような仲なのか。
僕とシエテの関係性は、どこを目指しているのかの目安さえ見えない曖昧極まりない状態でしかなくて。
シエテに僕が認められたら、僕たちだけの名前が関係性に対して与えられるのかな。
「──団長ちゃん? するってことで、いいんだよね?」
思わずシエテのパンツを握りしめたまま物思いに耽ってしまっていた僕を、シエテの声が現実に引きずり戻す。
「勿論」
パンツにはついこの間出させた精液の名残が残ってる。臭いこそ消えてるけど、乾いてから洗ったせいで生地が少々変質しているそこを指先でなぞると、その時のことを思い出すのかシエテがふるりと身を震わせる。
枕元のローションを手にしてベッドに横になったシエテは、僕の仕草を注視しているみたいだけど。
ごめんねシエテ。
今日入れてあげるのは、僕のモノじゃないんだ。
そういう依頼を受けたのは、他でもない僕だからね。
依頼主の意向には沿わなくちゃ。

パーカーのポケットに突っ込んでおいた、男根を模した仕掛け付きの淫具。
これをシエテに使って、どんな反応を見せたかを仔細に報告するのが僕が受けてきた依頼。
同じものをもう三本ほど受け取っているから、数日中には使われた団員と使った団員による同形式の報告書があがってくるはずだ。
普段してることと大して違わないことをするだけで済むのに、かなりの額の報酬が得られるんだからやらない選択肢なんてない。
そういう口実まで手に入れてるんだ、シエテ相手に僕が主導権握っていろいろなことしてみたっていいじゃないか!
さて、そんなわけで。僕はシエテが持ってるさらさら系ローションはあえて使わずに、持参のねっとり系ローションを手に取り両手の掌で温めてから、シエテの菊花のあたりにとろりと垂らしていったんだ。
何度か使ったことのあるローションだったから、シエテは特に気にした風でもなく、今日はそっちの気分なのかくらいの認識でいるみたい。
……覚悟しててね、シエテ。一人の男としての、僕がまだ見せてない側面を、教えてあげるから。
「シエテ、シエテ」
最低限のローションを菊花と淫具にからめてから、座薬を挿す時の要領でゆーっくりと込める力を増していけば。
てっきり僕のが入ってくるとばかり思いこんでたシエテがちょっとだけ狼狽えて、でも余裕あるふりをして背をしならせる。
僕が知る限り性感を得るという点でシエテは結構奔放で、気持ちいい時はちゃんと気持ちいいって言ってくれるから、報告書には見せてくれた反応そのままを書けばいいから楽だろうと思ってた。
(いつもと入ってくる感触が違う影響か、カウパー腺液はこの時点ではやや少なめ、と)
ちょっと癪に障るのが、この淫具の大きさ。成人前後のヒューマンを目安に大きさを設計したらしいけど……今の僕のよりちょっと大きいっていうか長い。だから、シエテは僕としてる時よりも奥をいじられて身をよじって……くれないと困るけど、恋人としては嬉しいっていうか、なんていうか……僕もどっちつかずだなぁ。
「ん、だんちょう、ちゃん、なに、なにいれたの、これなに」
圧迫感が相当あるはずなのに、腹筋に力を入れて上体を少し起こしたシエテはどうにか自力で侵入者の正体を暴こうとしている。
もう遅いんだけどね。
奥まで収めきったら、シエテの下腹部に操作用の円陣が淡い光を放ちながら浮かび上がってくる。事前に説明は受けていたけど、本当に色々な機能がついてておもしろ……いや興味深い。変形モードとかあったけど一体何に変形するのか試してみたい気しかしない、でも我慢我慢。絶対他の誰かが面白半分で試してるから僕だけでもスタンダードな報告書書かないと。
まずは振動と自律駆動を同時に起動させてみる。
周期的に振動して、抜き差しも自動制御ができるからそれだけでも満足度は高いはずだ、って開発責任者さんらしき人が説明してたけど、どうなんだろう?
(……あ。シエテのからだ、気持ちいいの耐えてる耐えてる、ピクピクしてるもん)
両手で口を押さえて、隙間から熱い吐息をこぼして、ちゃんと勃起した陰茎の先からは透明な雫が垂れた痕跡がある。
そのまま触れずに放っておいてもシエテの体は勝手に昂っていくみたいで、ぷくん、と亀頭に浮いた雫が白く濁ってるのを間近に確認することだって今日はできちゃう。
「や、だんちょうちゃん、あくしゅみ……あ、舐めないでイっちゃう!」
普段は抜き差ししながら性器を舐められる事なんか絶対ないから、シエテも油断してたんだと思う。菊花を散らされながらぷにぷに柔らかい亀頭を舐めそのまま吸い付けば、感極まった高い声が聞こえてきて、体の震えが大きくなり。
亀頭だけ含んだ状態で思いきり吸ってやると、間欠泉のように精液が噴出した。シエテの腰も勝手に前後に揺れて、僕の口の中でオナニーしてるみたい。
(……いつもよりも、出た量も多くて出してた時間も長かった)
舌の上にシエテの出したのをためて、お腹の上に垂らしてやる。シエテは僕の出したのを体の内外問わず浴びるのが好きなんだけど、自分で出した分には特に興味がないみたいなんだ。僕はシエテが精液でぐちゃぐちゃに汚れてる姿を見るのは興奮するしもう一回したくなるくらいなんだけどな。
「イっ、ちゃったぁ……ね、だんちょうちゃん、おにいさんのなかに、だんちょうちゃんの──」
「ダメだよ、今日は僕のは入れないよ」
「えー!? どうしてもダメ??」
「駄目」
もう一つ試しておきたい機能をまだ使ってないから、今日のところはシエテに僕のは入れない。多分その機能を試したあたりでシエテが限界になる確率が高いから。
「僕はシエテに、体に余計な負荷をかけずに気持ちよくなる方法を身に着けてほしくてコレを使ってるんだから、嫌がられても使うよ」
「へんなとこ、がんこなんだから……いいよ、おにいさんのカラダ、だんちょうちゃんのすきなようにいじってみて?」
珍しい、あっさりシエテが折れた。これは滅多にない好機に違いない。
早速シエテの体に浮かび上がったままの操作陣の、別の場所に触れる。男性を相手にする時専用の機能で、体の中への刺激だけでエクスタシーを得られるように教え込む機能が作動するはずの場所だ。
シエテはまだ後ろだけでってわけにはいかないし、何なら前から出さないと満足しないままだから……この機会に後ろだけでイけるようにしてあげたいし、所謂メスイキを覚えてもらおうっていう僕の個人的な願望もあったりするし。
最初はシエテの弱い場所と角度を探るだけに留まっていた淫具も、それが完了したのかシエテの中をじっくりと苛み始める。
圧迫と解放を反芻し、振動を加えたり軽い抜き差しにも似た蠢動を織り交ぜてみたりと、なかなかに複雑な動きをするらしい。
「あっ、これ結構きもちいい〜」
最初こそリラックスして快感を受け入れていたシエテだったけど。
「んっ……団長ちゃん、前さわってもいい? ナメてた、これ、かなりイイ」
僕が許可を出す前に勝手に触って、勝手にシエテは射精してた。いつもの二度目よりもやっぱり量が多くて、気持ちいいのは本当なんだなってわかった。
「ん、っう──ハァ、がまんするとか、ほんとむり……」
扱いただけ溢れてくるシエテの精液。二度目だからちょっと薄まってはいるけど、このところご無沙汰だったのを差し引いても量が多い。
「もう自分でさわっちゃ駄目だよ、シエテ」
「わかった、我慢するからもうちょっとこれ弱めてくれないかな──メチャクチャ、イイ」
「それは駄目、僕たち二人のためなんだから」
さっきイったばかりなのに、シエテの呼吸が荒いまま戻る様子がまるでない。
「シエテ、手、離して」
拭くっていう目的もあるけど、あんまりそこばかりいじられて目的が果たせなくなったら僕が何のために自分のを入れずにいるのかわからない。
何が何でも、この機会にシエテには違うイキ方を会得してもらわないと。
それでもなかなか甘く扱く手を放そうとしなかったから、僕はシエテにちょっとした罰を与えることにした。
「言う事聞けないみたいだから、軽く麻酔打つね」
感覚は残るけど、体の自由だけがままならなくなる秘薬。魔物相手に使う麻酔針の毒薬を人間用に調合し直した薬で、効果は確認済み。
何するの、ってシエテが目を見開いて僕を見るけどもう遅い。
両腕の痺れは数時間で落ち着く。それまでの間に、シエテには最低でもメスイキを覚えてもらいたいから、のんびりもしていられない。
使い物にならなくなってる腕を無理やり動かすのをシエテも諦めたようで、だらりとベッド上に投げ出された腕はくたりとしていつもより少しだけ細く見える。
もう一度シエテの下腹部の操作陣に指先を滑らせ、我慢しなかったシエテへの罰として刺激の強度を上げる。
「────!!」
シエテの背が盛大にしなる。だらしなく開いたままの口から唾液が垂れて口元はべたべた、ほとんど連続して射精してる陰茎はシエテの感じている快感を形状ではほぼ表現していない。勃起の名残はほんの少しあるけど、誤差の範囲。パンツの中で大人しくしてる時のシエテの形をしてる。
「シエテ、僕の言う事聞かなかったんだから、今日は僕もシエテの言う事聞かないからね」
大きく足を開いたままのシエテの足の間に座り込んだ僕は、くったりしてるシエテの陰茎を掴み、先端をシーツにこすりつけていく。
ひゅっ、と息をのむ音がシエテの喉から聞こえて。
ぷるぷるとシエテの全身が震えだす。声まで我慢しなくてもいいのに、きっと口を開いたら男として再起を図れなくなる声しかもう出せないんだろうな。
シエテの陰茎の先端を、何度も繰り返してシーツにこすりつけていると。
ぷるぷるかたかたと震えていたシエテが、どういう風の吹き回しか声をあげた。
「や、でるっ……きもちいのに、でるっ……!」
潮でも吹きそうなのかな。シエテのベッドがだめになっても、一晩くらい僕の部屋で休めばいいから気にすることないのに。
僕はシエテの襞への刺激がもう少しだけ強くなるように設定を変えて、陰茎から手を離した。シーツに先端をこすりつけるのもやめて、ベッドに寝そべる体勢で、ひくつくシエテの陰茎と菊花をただ眺めていたんだ。
そうしていたら。
ぶるぶるっ、とシエテの体が震えて。
「だんちょうちゃん、ごめん、オシッコ出る!」
シエテがそう言った瞬間、僕の顔に向けてあったかい薄黄色のオシッコが、ジョロジョロッとかけられたんだ。
びっくりしたかって?
しないわけないじゃないか。
あのシエテがだよ?
僕の前で、恥ずかしいところ全部丸出しにして、オシッコ漏らしたんだよ?
「あ、あ、あー……」
緊張の糸がぷっつり切れたのか、シエテのお漏らしは一筋では終わらなかった。
シーツをしっとりと濡らす程度じゃ到底済まなくて、僕の顔に何度もオシッコをひっかけて。
大きな楕円形をしたオシッコの痕跡が、シエテの体温といっしょに特有の臭いを放ち始めてから、ようやく勢いがおちびり程度までおさまって。
盛大に漏らして無駄な力の抜けたシエテの体の奥では、まだ例の淫具が作動していたんだけど、このベッドで続きはできないから一度淫具を外すことにした。
「……シエテ」
シエテに派手にひっかけられた顔をタオルで拭いて、漏らしたてのシーツが不快なぬくみを保っているのを内心辟易しながら、操作陣で全機能解除の指示を出し装置を外す。
漏らしたショックと僕の使った麻酔の効果とで動けないシエテを、濡れていないベッドヘッド側にどうにか座らせて股間を拭いていく。
「もしかして、オシッコ途中からずっと我慢してた?」
しばらく視線を泳がせた後、コクリと首を縦に振ったシエテは、やっぱり可愛かった。
だからシエテの部屋の始末はそこそこに、僕の部屋に連れ出してじっくり教えてあげよう、って気持ちが一層膨れ上がって。
シエテの初めてのメスイキは僕の部屋でだったし、最終的にはちゃんと僕ので一緒にイけた。
というわけで、今回の依頼の淫具は、関係性も含めて色々と発展途上の二人にはもってこいの品物だって報告書を書くことにするよ。

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