グラシエ おや? シエテの股間の様子が……

グランサイファーの甲板に幾本も張られているロープにかけられた、たくさんの洗濯ものたち。団員の着替えから普段使いのタオルに至るまで、ある程度の大きさのものはすべて甲板のロープに留められ一気に乾かすやり方が採用されている。
隅の方には男性陣の下着なども干されているが、それを今更気にする団員はおらず、黒のマイクロビキニから白い褌まで様々な下着が風任せに揺られている光景も日常そのもの。
なのだが。
気づかなくてもいいような些末事に、この騎空団の団長は気づいてしまったのだ。
『シエテのパンツが干してあるのを、この場所で見たことないなぁ』
だからどうしたと言ってしまえばそれまでのことであるし、下着肌着にこだわる一部の団員は洗濯当番の団員に自身の衣類を託さずに自分の手で洗い、すすぎ、痛まないよう水を切ってから干しているのも知っている。
ただ、シエテは下着以外の洗濯は当番に任せている様子でありながらも、下着だけは人任せにしないどころか目に触れさせもしないという徹底ぶりなのがどうにも引っかかった。
個人として秘密にしておきたいデリケートな領域の話なのだが、何か特別な配慮を必要としているとすれば団長として手を打つ必要もあろう。機会を設けて話を聞いてみよう、とはためく洗濯ものの中には決して混じらないシエテのパンツに思いを馳せる団長だったのだが、そもそもそこまで一個人の下着に頓着する必要があったのかは疑問の残るところである。

夜も更けた頃。
二人きりで話をする場合、どうしても夜を選ばざるを得ない大所帯となった騎空団である以上、人目を忍びつつシエテのもとを訪れる必要があった。
通路に並ぶドアのひとつを静かに叩けば、部屋の主の意向に応じて鍵が開くこともあれば閉め出されることもある。賭けだった。
シエテ一人に割り当ててある部屋のドアを叩いて、待つこと十数秒。
反応がなかなか返ってこない。
何かあったのか少しばかり心配をしながらドアについている小窓のカーテンをめくり、暗い部屋の中を目を凝らして確認しても、なぜかシエテの姿も気配も目に留まらず。

(何かあったのかな。夜間に外出する時はあらかじめ一言声かけてねって言ってあるのに。)

夜目の利く団員が交代で哨戒にあたる必要のない空域に滞在しているというのに、シエテはどこで何をしているのか。
ドアの前で彼のやりそうなこと、行く可能性のある場所について考え込んでいると。
誰かの気配が近づいてきて、身構えた団長だったが。
「あれ団長ちゃん、こんな時間に何か用?」
小さな桶を片手に、捜していたシエテがあっけらかんとした様子でこちらへ向かって歩いてくるではないか。
「シエテ……話があるから、部屋に入れてもらっても?」
許可を取っているように聞こえるかもしれないが、実態は異なり命令の方がこの場では相応しい。
気に食わなければ剣拓のひとつでも振りかざして牽制したのちに部屋に引っ込んでしまう、そんな選択肢を選ぼうと思えば出来た。だがシエテはそうしなかった。
気まぐれだったのか、頃合いだと感じたのか。
「そのうちこうなるだろうなあ、とは思ってたからさ」
かけてあった鍵を開けて、部屋の中へ入れるように団長を促した。

「まだ団長ちゃん以外の人には話してないから黙っててほしいんだけど」
最初に前置きをして、シエテは部屋の照明を灯す。
光によって照らされる室内の隅、相当意識しなければただの洗濯ものにしか見えない『下着』が、いくつも平干しされていた。
「平干ししなきゃいけない理由が、コレにはあるんでしょ」
団長の言葉に、ああもうこれは、とシエテは中空を仰ぎ見る。
「団長ちゃん、察し良すぎない……? お兄さんのとっておきの秘密が秘密でなくなっちゃう決定的な瞬間なのに、こうもあっさりばれちゃうと緊張感とかそういう大事なものが」
「なくていい」
まだ乾ききっていないシエテの下着の一枚に、団長が触れる。
陰茎が本来収まるゆとりがない代わりに、あたかも『ないもの』を補うように生地を何枚も重ねて縫い合わせ、ぶ厚くつくられ生み出された股間の膨らみ。ご丁寧に陰嚢とその中の睾丸の重量感まで再現されているという徹底ぶりで、この下着であれば単独で男性の股の構造物が揃ってしまう、実用的なのか機能的なのか誰のこだわりなのか突き詰めるとわけがわからなくなる逸品だった。
「シエテ、この下着のことをずっと隠してたんだよね」
部屋の隅に干されている下着を見つめ、シエテには背中を向けたまま、団長は続けた。
「秘密を秘密にしておく上で、僕にできることがあれば協力するし、もちろん口外しないし余計な口出しもさせない」
けど。
団長の表情が悲しげに歪む。
「こういう下着を身に着けてまで、シエテが秘密にしようとしてることを、僕が知ってもいいの? 大体想像はついたけど、まだ僕の憶測の領域から出てきてない今だったらまだ」
「団長ちゃん、こっち来て」
シエテが団長を呼ぶ声は、とても穏やかだった。
「今も俺、それと同じパンツはいてるんだけどさ……なぜなのかって理由を、やっぱり団長ちゃんには知っておいてほしいんだ」
部屋着の下を脱ぎ、パンツ一枚の姿になったシエテがベッドに腰をおろす。
団長の目には、股間の膨らみが若干不自然な形に歪んでいるように見えた。

「俺さ、体の構造は……ほとんど男なんだけどね、ちょっとばかり他の男とは違ってる部分があるんだ」
団長ちゃんは見るの初めてだろうなー、と自嘲気味に軽口として流そうとするシエテと。
「え、それって尚更僕が見てもいいものなの!?」
たじろぐ団長をよそに下着に手をかけたシエテは、立ち上がりそれを一気に足首まで引き下ろして脱衣籠に放り込み、自身の体の構造が団長にも見やすいように着ているシャツをめくりあげた。
「…………え、シエテ、これって……」
「団長ちゃんは、カントボーイって言葉、聞いたことあるかな」
シエテが足を左右に広げると、肉付きの薄い二枚の花びらがぱっくり開く。
「俺のカラダって、そういう構造らしいんだ」
髪と同じ色をしたごく薄い下生えは、シエテの性器を何一つ隠しておらず。
「身体能力はちゃんと男なのは知っての通りだけどね、ここの構造だけがなんでなのかなー……女の子なんだよねー……」
生殖能力はないみたいで、妊娠とかはしないからそのテの心配はしなくていいものの、興味本位で近づいてくる奴が今以上に増えるのも面倒だし?
お金かければごまかせる下着だって作ってもらえるから、団長ちゃんに心配かけるようなことはないと思うし安心して?
表情を曇らせた団長を気遣い軽い口調でまくしたてるシエテだったが、目の前で明かされた現実そのものに対して衝撃を受けている団長にとってはあまり効果がなかった。
「…………団長ちゃん」
そんな顔しないでよぉ、とシエテの眦が尚も下がる。
「口止め料の代わりにお兄さんとえっちなことしよ、って言いだそうとしてた俺が、馬鹿みたいじゃん……」
団長の股間にシエテがそっと掌を押しあてる。
シエテにも生来あるはずの男性器の一式が、団長の肉体には未成熟ながらも確固としてそこにあり。
わずかに兆してしまっている自己嫌悪と羞恥心、両方と戦っている団長は、シエテを慮るあまりに肉体がどうしても定期的に高めてしまう欲求にまでは考えが及ばなかった。
「シエテ……その、ソコは他の人にはやっぱり見せちゃダメだし秘密にしておくけど」
目を泳がせ、種の本能の芽生えを察知した団長は、シエテとの良好な関係を破綻させぬように必死に言葉を探す。
「あんまり無防備だと、その、僕もシエテも男なんだし、よくないこともしたくなるし」
「シて、いいよ?」
団長ちゃんなら。
「……シエテ……?」
「いつか本当に大事なコができた時に、何もわかんなかったら大変だし」
シャツを脱いだシエテがベッドに横たわり、足を開く。
「それに俺だって、人並みに欲求不満にもなるのに、自力でどうにかしなきゃいけないし」
だからお願い。俺とセックスして。中にいっぱい、かけて。
シエテの囁きを正確に聞き取ってしまった団長は、自分の衣服に手をかけて脱ぎ捨てる以外の行動ができなくなっていた。

ちゅぷ、と音を立てて団長の陰茎の先端を含んだ、シエテの陰裂。
「いきなり入れたら痛がられるから、入れたいだろうけど我慢してじっくり慣らしてからね」
熱い粘膜をすぐにでも割り開いてひとつになってしまいたい、そんな欲求を理性で押しやり相手の体のことを考えろ。シエテは簡単に言うが、そんな無茶な、というのが正直な団長の感想だった。
せいぜい知っているのは自分の掌と指の感触だけだったところへ、本物に限りなく近い異性の生殖器の感触を教え込まれているのだから。
「……って、こらこら、入ってきてるって! ……もう……仕方ないなぁ……」
愛液を陰茎にまぶすように、濡れてとろとろになっているシエテの内側の粘膜の入り口を、ただただ往復していたはずなのに。
団長の腰は勝手にシエテの奥にある、ふわふわふかふかした場所を目指して前後運動を始めてしまっていた。
「今日だけ特別ね、本当はちゃんと指とか使って中も太さに慣らしてあげたほうが、お互い気持ちいいから」
先端のやや太くなっている部分をちゃっかり埋め込んだ団長は、まだ指でも陰茎でも抉じ開けていないさらなる奥を目指して腰をシエテに押し付けていく。
抱きしめた枕に顔を埋めたシエテの声は高く、教え導く上での仮定の肉体とはまるで違う反応を返していた。
「や、ぁぅ、団長ちゃん、奥……おく、きてぇ……」
にゅぷん。
シエテの中の潤みにたどり着いたとき、陰茎のすべてをやわらかくあたたかく包み込まれる感触にたまらなくなって。
根元まで埋め込んだ陰茎の先端からだらだらと溢れていた我慢汁が途絶えたかと思われた直後に、ピュウッ、と勢いよく噴出した精液がシエテを孕ませようと子宮口にかけられた。
ドクンドクンと脈打つ感覚で、団長の射精を感じ取ったシエテは。
「団長、ちゃぁん……もっかい、もっかい、だしてぇ……!」
まだ自身は満足できていないせいで、火照ったままの体が団長の精を一滴残らず搾り取ろうとして……膣壁は陰茎に絡みつき、愛液でびしょびしょになっている陰唇は団長の陰茎の根元にはりついて、抜き差しのたびにペチョペチョと音がする。
一度放って余裕が少しだが生まれたのか、団長はシエテの足を大きく左右に開いて結合部をあらわにし、目でもシエテの肉体を堪能しながら陰茎を引き抜こうとした。
「あ、やだ、まだ抜いちゃやだ……ちゃんと入れて、中にかけてよぉ!」
一度完全に抜き去ってしまってから、シエテの膣口が男のモノを求めてひくついているのをひとしきり視姦し。
仰向けに体を横たえているシエテの目にも結合部が見えるように、腰を高い位置で固定し支えてから、一気に貫いた。
「あーーー!!!」
投げ出された腕から枕が転がり落ち、静かな部屋にシエテの声がこだまする。
ちゅぷん、ちゅぷん、と最初こそ抜き差しの長さも間隔も控えめにしていた団長だったが、じゅぽじゅぽぐちゅぐちゅ、遠慮がなくなっていきシエテの柔肉を夢中で貪った。
「ん、ん、ん、団長ちゃん、団長ちゃん、俺、もう、イきそう、イっていい……?」
きゅうきゅうと締め付けてくる粘膜の筒が、シエテの言葉の後すぐに、一際熱く狭くなり。膣の奥からさらさらした液体がたっぷりあふれ出て、シーツを盛大に濡らした。
「う────はぁ…………あ……団長ちゃんありがと、すっごくヨかった」
ゆっくりと膝を曲げ、自分の足でも腰を浮かせて結合部を支え始めたシエテは、上気した頬を気にかけているのかはにかみながら続けた。
「今の俺の中狭いでしょ、ちょっとくらいなら動けると思うから擦っていいよ、俺も気持ちよくなれるし」
言われたままに団長が腰を揺らせば、吸い付き絡みついてくる肉の筒が離すまいと一分の隙間も生まぬように陰茎についてくる。
不用意に射精してしまわないようずっと下腹部に込めていた力を抜けばすぐに、間欠泉のように精液が噴出しシエテの中に種を撒いていく。
「──っ、シエテ……僕も、すっごく、気持ちいい……」
最奥に放たれた種は実を結びはしないけれど、だからこそ許しが下りたシエテの花園。
「ふふ、よかったぁ…………俺とシたくなったらすぐ言ってね、団長ちゃんとするの気に入っちゃった」
引き抜いた陰茎のぬめりを丁寧にふき取ったあと、同じように濡れそぼっているシエテの股座は水を取りに行った団長が濡れタオルで何度も丹念に拭って。
それでもなかなかぬめりが収まらなかったシエテの膣の中を、団長が舌で舐めてどうにか満足させたのは明け方に近い時間だった。

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