ジクパー 猫カフェ?

ここは猫カフェ。

猫たちが自由気ままに過ごし、それを遠巻きに眺める人間が癒しを得る楽園。

オーナーのダーントも猫耳を装着して接客にあたり、種族もばらばらのはずの店員も全員エルーンのように何かしらの動物の耳をつけて軽食の提供や猫たちの世話をしている。



……しかしそれは、昼営業の話。

夜になると、この猫カフェの猫はゆっくりと休み、夜営業専門の「ねこ」が代わりに接客にあたることになっている。

個性豊かな猫と「ねこ」たち。

耳も尻尾も愛らしく、大胆にさらけ出した肌を申し訳程度に隠すふわふわとした被毛にはそう簡単に触れさせてはくれないくせに、客の人間に過度に近づいて心を乱させてばかりいる。

容姿の整っている店員が猫に扮し、法に反しない範囲で飲食に伴う接待並びに──気が向いた時にのみお許しの出る自由恋愛。

オーナー公認の、店員たちの副業の実態やいかに。



伸びてきた髪をポニーテールにくくり、パーシヴァルは仕事を終えたばかりの猫たちへのねぎらいの給餌をサンダルフォンに任せて、先に着替えを始めた。

爪を立てられても構わない服装の上から身に着ける、猫の刺繍が施された店員共通のエプロンを外すと一気に気分が切り替わる。

昼の営業だけでは収入が足りないというわけではないが、費用を工面しながら学業にも打ち込む必要があるパーシヴァルにとっては、何倍も実入りのいい夜の営業に出ない理由などなかった。

家からの仕送りに極力頼らずに自立した生活を送り、家族に心配をかけずに自身の夢を追いかけてみたい。高邁な理想に燃えるパーシヴァルはではあるが、その理想とかけ離れた働き方をせざるを得ない点について何も思わないわけではなく、自由意志のもとでこういった職に就く分には何ら問題はないが収入面でやむを得ず働くのであればこういった点も改善すべき事項に入るのではないか、云々と想いを馳せながらも着替えの手は止まっていない。

下着さえ専用のものに取り換える都合、裸になってアナルプラグになっている尻尾を慣れた手つきで挿し入れて。

肌にぴったり密着する鮮やかな赤のホットパンツの穴から尻尾を通し、きちんと思考と連動して動くことを確認してから、平たい胸をそれっぽく隠すためのふわふわもこもこを頭からかぶる。

伸縮性のあるそれの位置を微調節してチップホルダーが空なのも確認してから、ショートブーツと手袋、猫の耳カチューシャがあるべき位置に着いているのも姿見で確認してから夜営業のホールへと出た。

「ねこ」の一匹として。



夜の営業は21時からであるのに、営業開始30分前には玄関口に何人もの常連客が待機しているのがこの店の日常である。

そんな事情は「ねこ」たちも当然把握しており、店の外から見える位置でわざとのんびりくつろいで見せたり、他の「ねこ」にぴったり密着して外を覗いてみたり、あるいはカウチの上でしどけなく横になっていたり。好き勝手に過ごしていながら高額の給金が生じるのだから肌の露出が何だ、と思っていたはずが入店から二月も羞恥心は保たれず、のんびりと外を眺める他の「ねこ」の尻尾に自分の尻尾を絡ませてちょっかいを出すのが、パーシヴァルの十八番になってしまっていた。

夜の営業でオーナー代理を務めている、ただ一人「人間の」給仕服をまとった青年が玄関を開錠しドアを開けて、開店を待っていた客を店内へと誘導する。

横になろうとしたパーシヴァルのいるカウチに、内心あまり好んでいない壮年の小太りの男が近づいてきているのが見えたが。

昼の営業での疲労を癒したい気持ちの方が勝り、横になったまま目を閉じるとすぐに意識が遠のいていった。



目を覚ましたとき、パーシヴァルのふわもこのおひねりポケットには既にそこそこの額のおひねりがねじ込まれていた。寝ていただけなのにどうして、と思った瞬間、暖房が利いているはずの店内なのにやけに下半身の通気がいいことに気づいてしまった。

どうやら寝ている間にイタズラをされていたらしい。

ホットパンツの前は全開で、性器も反応し膨張している。

だが、このイタズラの犯人がなぜか同席していない。

どうして?

ゆっくりと起き上がると仕立ての良いスーツのジャケットが肌の上を滑り降りていき、絨毯を敷いた床の上に落ちた。

カウチにひとつ備えてあるひざ掛けを腹部にかけて、その下でこっそり自慰を始めていると、佳境に入りそうになったところで誰かがパーシヴァルのカウチに近づいてきた。

ひざ掛けの中は先走りの液でとろとろになっているし、正直なところ少しでも早く出してしまいたくて動かしている手も止まらない。

ぬるぬるの亀頭を指先で撫でていた時に、性感に支配され俯いていたパーシヴァルの顔を覗き込んできた男は、あろうことかパーシヴァルの足を開かせアナルプラグの抜き差しを開始する始末で。

知ってはいたものの想像を軽く凌駕していく快感に呑まれ、同僚に声を聞かれるのも気にできなくなったパーシヴァルは、愛らしい声を店内に響かせながら男の掌に思いきり精をぶちまけて腰を抜かし、しまいには自ら尻尾のアナルプラグを抜いて男を誘い。

指を入れてもらって奥を初めて開拓されたパーシヴァルが、ジークフリートと後に名乗ったその男によって性の道を踏み外すまでそう時間はかからなかった。


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