ジクパー&ヴェラン(交差風味)何かの始まり 

家宅捜索、という言葉を使うほど大掛かりではないけれど、探し物という単語だと少々物足りない印象がある。
これがランスロットの部屋ともなれば掃除と片づけも兼ねてくるから、いよいよ相応しい形容を探すのに骨が折れる。ジークフリートの部屋は逆に必要最低限の家財道具さえ抜けや漏れが生じてしまうから、多少物が散らかっていても殺風景から抜け出せない一部屋が生まれるだけ。
日頃から整理整頓を心掛けている方の、ヴェインとパーシヴァルの私室は平穏が保たれているのが常ではあるが……忙しさに追われ、明日やろう明日やろうと一日一日先延ばしにしてきた結果が現在の惨状である。
自己の部屋が乱雑である限り、誰も部屋に上げたくないとパーシヴァルが主張しただけではない。返り血と泥で床がまだ汚れたままだというジークフリートの自己申告があった以上は、相当な惨事になっていると予想できる。
ランスロットの部屋などそもそも誰も使おうとは思わない。あの部屋でコトに及ぶくらいなら家畜の小屋を選ぶと言い出したパーシヴァルが、ランスロットと小競り合いを起こしかけて団長に四人の爛れた関係が知られそうになったのだが……当人たちは懲りているとは思えない言動を繰り返すばかり。
事が露見した場合にどうなるのか、危機感らしい危機感を持っていると思われるのはヴェインただ一人で、他の三人はゆったり構えてマイペースそのものである。

そんな事情もあるせいか、四人揃ってことに及ぶ際にはヴェインの部屋が使われるのが通例となっており、続けての休暇をもぎ取った男たちはごちゃごちゃになったヴェインの部屋をせっせと片づけていた。
勿論、ランスロット以外の三人が、であるが。

「ほら見ろヴェイン、この間着てうっかり回収し忘れた透けてる下着、今日も着てみるか?」
この通り、ランスロットは片づけよりも発掘されたもので遊ぶばかり。
豪華でありながらひとつひとつに目をやると華奢で繊細なつくりをしたレースがあしらわれているのは、つややかな光沢を放っている絹。
藍色に染まったヴェールが隠しているのは、年齢に不似合いな肌艶をしたランスロットの体。あどけない顔をしていながらもその下に続く肉体は与えられる悦びを知っている。局部を隠すはずの布面積は小さく、臍の下あたりからうっすらと続いているブルネットがほとんどすべて見えているのだが、そんなこと本人はおかまいなしだった。
「ら、ランちゃん……それ、反則だよぉ……」
前かがみになるヴェインがいるかと思えば。
「駄犬め、色違いを俺が着てもそこまで反応しなかっただろうが、そんなにランスロットの胸が好きか」
なぜか張り合おうとするパーシヴァルがいて。
「俺はパーシヴァルの腰を掴んで中を穿っている時が、最も支配欲を満たされるんだがなぁ」
腰が細いのがやけに背徳的でな、そういう意味でやはり俺はパーシヴァル派なのかもしれん、と一人納得しているジークフリートが話を余計にややこしくする。
「俺だってコルセットとかつけたら同じくらいにはなりますけど……だめですか?」
ランスロット渾身の上目遣いで、小首を傾け精一杯愛らしく振る舞っている様子を前にしても、
「脱がせた時に危うさを感じさせるような、絶妙な細さの黄金比があってな。装身具で体つきを変えていられるほど騎士団の仕事は暇ではないことくらい、お前は把握しているだろう?」
ジークフリートの性癖には大して刺さらなかったらしい。
「やっぱり難しいですよね……あ、俺はジークフリートさん派ですよ今も昔も!」
あれ、じゃあ俺はランちゃんの何なんだろう。自問し始めたヴェインの手が止まり、パーシヴァルがそれをせっつく。
安心しろ駄犬、俺はお前の淹れるフルーツティーが甘ったるくてもどうにか飲み干せるようにはなったからな。さっさと立ち直って部屋を片付けろ、でないと欲求不満のまま明日を迎える破目になるぞ。
ハイソウシマス、と従順に答えて手を動かし始めるヴェインを見て、濃紫紺の師弟は微笑む。
ランスロットは、他の三人に茶々を入れるのを何より楽しんでいた。

四人で淫行に耽るのは事実だが、組み合わせは七割方固定されている。
今回も例に漏れず、ヴェインがランスロットを、ジークフリートがパーシヴァルをそれぞれ組み敷くかたちとなり、ベッドの使用権をかけてランスロットとパーシヴァルを競わせようとしていた。
「今日は何で勝負しよっか、ランちゃん」
灼熱の杭によって体の中心を固定されたランスロットに、まともな受け答えを求めても大して意味はないのだが。体の奥にあるもうひとつの扉をしきりにノックされ、はしたない粘着質な水音をたてながら抜き差しとともに腰を振りたてている彼は、隣の人物よりはまだ理性が残っていた。
一方の隣の人物はといえば──ベッド脇に膝をつき、シーツを手繰り寄せて必死に快楽と戦おうとしているパーシヴァルはすっかり「出来上がって」しまっていた。上体を完全にベッドに預けて、潤んだ瞳はひとところに視線を定めようとはせず、遮るもののないまま発せられる声が夜中の船室の雰囲気を決定的なものに変えている。
体の開拓に一切の手心を加えず、躊躇らしい躊躇といえるものに縁のなかったジークフリートが相方では、ひとつの果てまで辿り着くまでに大した時間を要しなくとも仕方なかった。
「……ヴェイン」
そのようにパーシヴァルに教え込んだジークフリートが、ヴェインの注意を自身に向けさせる。
「今日はおそらく、勝負にならないだろうな」
パーシヴァルにはおそらく勝負を成立させるだけの理性がもう残っていない可能性が高い。
そう口にしたジークフリートが、一際深くパーシヴァルを穿ち、胴震いを何度か繰り返す。
ただでさえ蕩けていたパーシヴァルの瞳が一層ふにゃふにゃとしたものになり、息をのみ込むような音がした直後にパタパタとシーツを雫が打つ音がした。
パーシヴァルの会陰を撫でさすりながらゆっくりと、己のものを引き抜いていくジークフリート。
音を立てて亀頭が引き抜かれると、栓を失って溢れる白濁液を指で掬って、すぐには閉じきらない孔の縁を指先でくすぐる。
膝からも腿からも力が抜けた体を支え、慣れた手つきでまだ体内に残っている液を大方掻き出してしまうと、意識が落ちかけているパーシヴァルをあやすように抱きかかえた。
「今日は早めに休ませてやろうかと思うのだが、構わんか?」
律動を止めていたヴェインは、髪を梳く指の器用な動きと独占欲丸出しの目とを交互に見ながら、すぐ近くに落ちていたパーシヴァルの私服をジークフリートに手渡して。
その後もやはり例に漏れず、それぞれが甘い一夜を過ごしたことは語るまでもないだろう。

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