ヴェパシ ワンドロお題:キス

最近パーさんがつれない。
そりゃあ、団長があちこち行くからそのお供に駆り出されてるってのはあるけど。
だからって、帰ってきてすぐシャワーあびて寝ちゃうのはどうかと思うんだ。
食事は携帯食で済ませてから帰ってきてるみたいだけど、たまにはあったかい出来立ての料理を食べたほうがいいし?
シャワーだけじゃなくて、浴槽につかってゆっくりくつろいだ方が疲れも取れるし?
なにより!
せっかく時間取って顔見せに来てるんだから、かまってほしいなあって思うわけですよ。
駄犬だなんだって、顔つき合わせたら言い合いにはなるけどさ。
それすらないのは味気ないし、じゃれ合いもできないのは正直なところ…ちょっと寂しいなって思ったりもするんです、パーさん専用の駄犬としてはさ。
今日とか特にひどくて。
夜更けにやっと戻ってきたから、おつかれさまーって蒸しタオル差し出したら。
耳を出すな尻尾をしまえ俺はもう休む、ってこっちをちらっとも見ずにまくしたてて部屋に入っちゃって。
みんな疲れてるから仕方ないんだ、もう少しで依頼も片付くからそれまではパーシヴァル借りるね、って団長に言われなきゃ。
用意した蒸しタオルでこうして、熟睡中のパーさんの体を拭いたりなんてしないんですけど!
……仕方なく!
団長の顔を立てて、仕方なく拭いてるんです、俺は!
……なんてね。
明日も朝早くから依頼のために出かけるパーさんのコンディションを、俺のできる範囲で整えてるだけです。
埃っぽいまま送り出したくなかったから、自発的にやってることだったりする。
最低限着替えて寝てくれてたから、アンダーウェアを脱がせる手間は省けてるあたりが、なんだかパーさんらしさを感じるんだよなあ。
これきっとランちゃんあたりだと、下手したら適当に色々脱ぎ散らかしてベッドに直行してそのまま寝落ちてるってやつだろうし。
次の日のことをそこそこ考えて動けてるんだから、全く余裕がないわけじゃなさそうなんだけど、なんだかなあ。
埃や泥、ススなんかで汚れていそうなシーツは明日取り替えて洗濯するとして。
時間を縫って顔を出しつつ甲斐甲斐しく世話を焼いてる俺に、当座のご褒美か何かがあってもいいんじゃないかなと思いまして。
パーシヴァルさまのご尊顔を拝んでいるだけで満足できるような出来のいい犬じゃないから、即物的なご褒美をねだってしまうわけですよ。
ねぎらいの言葉とかでもまあ誤魔化されるかもしれないけど、なんかこう、トクベツ感がほしいかもなって。
…………はあ。
服のボタン外して、体をしげしげと眺めてみると。
水着でも隠されるエリアが気になって仕方がない。
あっ、そこを見せろとかって話じゃないんだぜ!?
間違いなく蔑まれて拒否されてしばらくの間距離置かれるし、そんなこと言い出した日には!
……俺にそっちの趣味があるのかどうかはわかんないけど、どういうことかパーさんのことは気になるから、見せてくれるなら見てみたいってのはある。
けど、照明を落とした部屋のベッドの中で。
自分の手で暴いてみたいってのは、あるかな。
どんな風に、パーシヴァルは人と親密な関係を築いていくのか。
狭くはないパーソナルエリアに他人を迎え入れたとき、どんな反応を返すのか。
知らない顔はまだまだ多いから、もっといろいろな表情を見てみたいし。
寝顔だって見慣れるほど回数重ねてないから、たくさんの時間を捧げてようやく目に出来るものなのかなって思わないわけでもない。
(けど、今は)
暗い部屋の中、顔を近づけてみると。
細かく整ってる肌理とかも見えるし……案外しっかり生えてる睫毛がつくってる薄影は、初めて目にしたかな。
あったかい寝息が、生きてるひとなんだ、って感じさせてくれて。
同じ空気を吸い込めば、体の芯にぽっと火が灯ったようになる。
あ、勃つかも。
毛布からいつの間にかはみ出ていた手をそっと握ると、やんわりと握り返してくる。
吐息の交換を何度か繰り返すうちに、うっすらと開いた唇から白い歯が見えて。
魔が差した。
その白い歯に舌が伸びて、ちゃんと硬い感触に触れたのもつかの間。
かすめた唇の感覚を、もっとよく知りたくて。
重ねてはじめて知ったパーシヴァル本人のぬくもりを、許される限り味わっていたくて。
顎を掴んで口を開かせて……強引だなと自分でも思ったけど、口づけを深めて舌を絡めた。
ありえない位に興奮して、たまらずに前をくつろげた。
口を吸うのに夢中だったから、気がつくのが遅れたんだ。
パーシヴァルが夢の世界から帰ってきていたことも。
重ねていなかった方の手が、いつの間にか毛布の中から出て俺の股間に伸びようとしていたことも。

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