ジクパー お薬ネタその1

その日パーシヴァルは、ジークフリートの私室に呼ばれていた。
つい癖で、いつもの部屋と何か違う点がないかどうかを最初に確認してしまう。
散々な目に遭わされた過去を思い出して身を震わせれば、どうした、と言わんばかりの目が、心配そうにパーシヴァルを見つめてくる。
パーシヴァルが部屋にやって来るまでに葡萄酒でも口にしていたのか、飲み残しの入っている瓶とグラス、それと共に水差しが机上に置かれていた。
置かれていても特段不思議ではないものとして気を止めなかったのが、今回の件の最大の敗因だった。
「ああ、丁度いいところへ来たな、パーシヴァル」
ベッドに腰を下ろしていた男──ジークフリートが立ち上がり、おもむろにパーシヴァルを抱き寄せる。
これは通過儀礼だ。
耳元で愛を囁き、恋人を出迎える。
しかし、ジークフリートとて日課のみで日常を形成しているわけではない。
今日のように、パーシヴァルの来訪が遅くなりそうな時には、酒を嗜む日もある。
耐え切れずに自慰に耽っている最中に、間悪くパーシヴァルが足を踏み入れたことだって一度や二度ではない。
見た目の割に──いや、ジークフリートの見目を婦人がどう解釈するのかまではパーシヴァルの知った事ではなかったが──この男は色を好むのだ。
色を好み、色を愛し、色に愛されて。
彼は様々なプレイをパーシヴァルに要求したが、当然パーシヴァルの機嫌次第で却下されることもある。だからジークフリートは策を練り、あの手この手で自分の望むプレイをパーシヴァルが受け入れるよう、手を尽くしていた。
それはパーシヴァルも熟知している。だからこそ、ジークフリートのやることにはある程度の警戒を解かずに身を委ねていたのだが……身を預けて一度体を重ねても何もしてこなかったから、つい失念してしまっていたのだ。
ジークフリートが、何食わぬ顔をして一服盛るような面を持っていたことを。

「か、はっ……ジークフリート、貴様一体何を……!」
水差しの水が飲みたい、と確かにパーシヴァルは言った。ジークフリートに指図して、事後の気怠さに揺蕩う身の欲求のまま、飲ませろと訴えたのも認めよう。
だが、一服盛れとまでは言っていない。
口移しで何らかの液体を飲まされたと気づいた時にはもう遅く。
嚥下してしまってから、一服盛られたのだとパーシヴァルは気が付いた。
吐き出そうにも既に胃の奥まで入り込んでしまったそれはどうやら、即効性のある特殊な薬らしい。
見る間に体が火照りだし、色素の薄い部分が薄紅色へと色づいていくのが見える。
「ほう……効き目は確かなようだな」
どこでこんなものを手に入れた、と問おうとしたのだが、そう声にするまえにジークフリートが手を伸ばしてくる。
申し訳程度にしかついていない小さな乳首を摘ままれただけで、どうしてか雷撃を受けた時にも似た刺激が全身に走る。
間違いなく、快感と呼べる感触として。
「ん、あっ!」
「声を抑えろ、パーシヴァル。皆に聞こえる」
そう言うなりジークフリートは、パーシヴァルの口元を布で覆った。後頭部で縛り、猿轡を噛ませたと言ってもいい状態にされたパーシヴァルは当然憤慨したが、ジークフリートは意に介さない。
すぐさま潤滑油を手に取り、慣れ親しんでいるパーシヴァルの秘所に塗りこめて、拡充していく。
前戯も何もあったものではない実に性急なプレイを好まなかったはずのジークフリートが、どうしてこんなことを。
パーシヴァルが疑問符を浮かべている間に手早く準備を終えてしまった頃には、パーシヴァルの陰茎も反り返って雫を垂らしており、すっかり『出来上がって』しまっていた。
口惜しそうにジークフリートを睨んでみても、状況が状況なだけに平時の威力がまるでないパーシヴァルの視線。
早く体を繋げてほしい、というメッセージしか浮かべていないその瞳の欲求に応じるべく、ジークフリートは己が雄刀をめり込ませて、一息に腰を突きこんだ。
その拍子に猿轡の結び目が緩み、パーシヴァルの口が自由になる。
「……っ、ひ、やぁ……! きさ、ま……俺に、何を……んっ、あぅっ!」
「黙っていろ、舌を噛みかねないぞ、パーシヴァル」
再びパーシヴァルに布を噛ませて、ジークフリートはパーシヴァルの体内を蹂躙し始める。
ふかふかとやわらかな粘膜に精を塗り込み、コリコリとした例の臓器には思い切りカリを押し付け突き上げて。
声が強制的に殺されるのをいいことに、ジークフリートは好き勝手にパーシヴァルの中を突き、中に二度放った後執拗にパーシヴァルの陰茎を扱きあげた。
何かを悟ったのか、全力で暴れるパーシヴァルを強引に押さえつけて。
じたばたとしばらくもがいていたパーシヴァルだったが、やがて観念したのか大人しくなり、それと前後して陰茎の先端から薄黄色の液体を零し始めた。
「……いい薬だった、と後で礼を言わねばなるまいな」
チョロチョロと音を立てて失禁を続けるパーシヴァルの瞳からも、溢れ出るものがあった。
恥辱による涙だった。

結局パーシヴァルの尿量が思いのほか多かった影響でジークフリートのベッドは使えなくなり、その日はパーシヴァルの部屋で二人とも休むことにはしたのだが。
恥の意識が抜けないパーシヴァルは、体を洗い流してくると言って部屋を出ていったきり、なかなか戻ってこない。
無聊を慰めようにも肝心の恋人は体を洗うのに時間を割いているようだし、ジークフリートのできることといったらランプの炎を気ままに見つめることくらいで。
(…………炎、か)
今度はきわどい意匠の下着でも着せて辱めてやろうか、と余計なことを考え始めたジークフリート。
紅の絹で出来た下着なら、渋々でも身に着けてくれるかもしれない。
ああ、そうしたら絵姿で以前見せてくれた母親によく似ていると言葉責めするのも一興か。
ジークフリートの、夜は長い。

(……さて、あのベッドの始末をどうつけようか、朝にでもヴェインを叩き起こして相談した方がいいのだろうか……?)
このように、時折周囲を巻き込みながらも、夜に王は君臨し続けている。

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