作文 | ナノ

名前を呼ばれて、肩に手を置かれて、あの澄んだ水のような美しい瞳に見つめられて思わず息が詰まる。遙が何かを私に伝えようと口を開いて、じっと言葉を待つ。いつになく真剣な遙の表情は、やっぱりかっこよかった。

「お前は、………………鯖だ」
「え?人違いですけど…」
「違う、その…お前は…水で…」
「人ですけど…」
「お前は!水で鯖で人だが!」
「人間以外ないけど!?」
「だから…そうじゃなくて……」

眉間に皺を寄せてもにょもにょと言葉を選んでいる。彼は本当に口下手だから、時間をかけて彼の言いたい事を待つ。

「……ずっと、言いたかったんだ」
「うん、うん、ゆっくりでいいから、聞かせて。遙の言いたい事」

ゆっくり目を合わせて、不安そうに揺れる遙の瞳を見る。肩に乗せられた腕をゆっくりさすると深呼吸して、私を見据える。

「俺にとってのお前が、鯖で水なんだ……そのくらい、俺の中で大きな割合を占めてる、から……つまり、好きなんだ、………………ああ」
「え?」
「俺は、お前のことが…好きなんだな」
「えっ今?」
「ああ。好きだ。お前が、好きだ」
「わ、わわわかった、わかったよお!」

わかったの意味をどう捉えたかは分からないけれど、ぱあっと嬉しそうな顔をした遙が私を抱きしめてきた。苦しい、痛いくらいの抱擁だけれど、遙の匂いとプール独特の塩素の香りが薄く漂って、つい思ってしまったのだ。

「私も、すき」


好きと同時に笑いが零れて、遙もつられて笑っていた。ああ、これだから、好きなんだよ。
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