作文 | ナノ

好きな子に対して素直になれなくて意地悪しちゃってた幸村がなんとかマネに引き入れることにしたし成功したはいいけど青学との練習試合で嫌な予感がする話


「私青学に知り合いとかいないから初めて会う人たちばかりだなぁ」
「お前なら大丈夫だろう、すぐに打ち解けられる確率、87%」
「思いのほか高評価じゃん」
「物怖じしないのはお前の長所だろう」
「幸村聞いた?柳は褒めてくれるんだよ」
「蓮二、もしかして熱でもある?無理はするなよ」
「失礼だな〜ほんとに…あっ、向かいの青ジャージもしかして」
「ああ、来たみたいだ」
「いや、え!?あの……やばい」
「は?お前の頭が?」

じっと前から歩いてくる青学から視線を逸らさず俺の手首を掴んで、小声で「やば」と言う。彼女から触れられたことが嬉しく思うも、必死に隠して「離しなよ」なんて言うけれど、いや離さなくていい。なんならこのまま手を繋いでもいいかな、そう思考が狂いだしたときだった。

「あ、間違えた」
「は?」

ぱっと腕を離すと今度は蓮二のほうへ駆け寄り、何やらこそこそと耳打ちをしている。ぐいと腕を引いて屈まされている蓮二が恨めしい。なんか近くない?それ俺には聞かれたくない事?不機嫌を隠さずにいると、ひそひそ話をしていた彼女の努力をすべて無に帰すように普段通りの声量で話し始めた。

「青春学園3年、不二周助だな。身長168cm、カウンターを得意とするプレイヤーで天才と呼ばれている。ウチだと過去に赤也と仁王が試合をしたことがあるが、確かに見事なものだった。性格はあの乾貞治をもってしても正確なデータを取るのに苦労するほどだと言う」
「柳青学に知り合いいるの!?ちょっとあとで話し掛けにいこうよ私も行くから」
「下心しかない確率、100%」

一瞬目が合った蓮二はなんだか楽しそうに口元を歪めているし、彼女は「不二周助くんかぁ…」とほのかに頬を赤くして青学を見ている。そんな表情、俺の前でもしたことないくせに。「めっちゃタイプ。好みが擬人化したみたい…かっこいいなあ」俺にもかっこいいとか言った事ないくせに。無理にでも思考を戻したくて軽く腕を引く。

「ちょっと。間違えたって何」
「え、ああ…だって幸村に聞いても意地悪して教えてくれなさそうだし…柳なら普通の返事してくれそうだし」
「……」
「日頃の行いだな、精市。……っふ、」

笑いがこらえ切れていないようだね。一層増した俺の不機嫌オーラを感じ取ったのか、後ろから赤也や丸井の声で小さく悲鳴が聞こえてきた。あーあ、今日の練習試合、都合よくS1に不二いないかな。別に取られるとか、そんなこと思ってない、けど。俺の見たことのない、むかつくくらい可愛らしい笑顔を浮かべる彼女の姿は正直気分が悪かった。
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