作文 | ナノ

「ゾロ!!!お願いがあるの!」
「ンっだよやかましい!引っ付くな離れろッ!!」
「ゾロにしか頼めないのこんなこと……」

ゾロの腕に最早ぶら下がるようにしがみついてグズグズと鼻を鳴らす。この筋肉おばけは私ひとりくらい大したことないというように私を引っ掛けたまま(私を外すことを諦めたようにも見えるが)非常に面倒くさそうに「なんの用だよ…くだらねェことならたたっ斬るぞ」と小さくため息を吐いてみせた。

「私のこと力の限り引っぱたいてほしい」
「……………お前そういう趣味だったのか?」
「ちっがう!私の頭?脳かな、もしくは眼球!おかしくなっちゃったみたいなの!」
「元からだろ」
「あーもう言うと思った!いいから聞いて!?だって壊れたら叩くとなおるっておばあちゃんも言ってたんだもん!だから叩いてほしいの!」
「デケェ声でその言い方やめろ!語弊があンだろうが!」
「だって事態は深刻なんだよ……」
「そんな訳のわかんねェことを言い出すくらいには深刻だろうよ……」
「聞いてくれるまで離さないんだけど、なんか…サンジがすっごくかっこよく見えるの……サンジの周りだけ電球交換したばっかりみたいにキラキラしてて……」
「なるほどそりゃあ重症だ。おれの手には負えねえからチョッパーのところに行くかアホコックに直接言え」
「見捨てないで。だから叩いて直してって言ってんだってば!」
「お前がおれの全力に耐えられるとは思えねェし、その方法でなんとかなると思ってるなら今後のお前の見方を変えるぞおれは」
「だってどうしていいかわかんないんだよ……」

ゾロの腕にしがみついたままべそべそと話を続ける。ものすごく嫌そうな顔はするけど、無理に引き剥がしたりはしないあたりゾロは地味に優しいし、なんだかんだ私に甘いと思った。そうこっそりとゾロのいい所を再確認していたら頭上からはああ、と特大のため息を吐いたのが聞こえて「チョッパー!なまえが重症だ!!」と大きな声でチョッパーを呼びつけた。え!?ばかなの!?ここに?!今!?それなりのボリュームでゾロが叫ぶものだから、チョッパーが血相を変えて医療キットを抱えて走ってきたし、他のクルーたちもどうした?怪我でもしたか?なんて顔を覗かせたりと(気にかけてくれているのは本当に嬉しいけども!)何なら「なまえちゃんが何て!?!?」と原因であるサンジ本人もとんでもないスピードで来た。いや今は来ないで欲しい本当に。

「どうしたんだなまえ!ゾロが大声で呼ぶなんてよっぽど…と思ったけど…外傷は特になさそうに見えるぞ?」
「いいやチョッパー。これは間違いなく重症だ。なまえちゅわん!そんなクソマリモに抱き着くと体に良くねェからおれのほうにおいで〜!」
「何言ってやがる、なまえはテメェのアホが移っちまったんだぞ。主に頭をやられてる」
「あァ!?テメェコラクソマリモなまえちゃんを悪く言うんじゃねェよ」
「なまえ?本当にどうしたんだ?熱があるとか?1度医務室に行こう、ゾロの後ろに隠れてないでちゃんと診察しなくちゃダメだぞ!」
「あ、あの、あのねチョッパー、大丈夫なの、私は平気だから……ゾロもサンジも、みんなもごめんね、何ともないから!気にしないで」
「……それか話しづらい事であれば、私かナミでも聞くくらいはできるわ。あまり無理しないようにね」
「………………ロビン好き……」
「おれに言うな。ロビンに言え。そんで離れろ。いつまで引っ付いてるつもりだ?投げるぞ」
「…………サンジがキッチンに戻るまで…」
「え!?おれ!?……なまえちゃん、おれ何かしたかな?しかしまずはクソマリモが羨ましいから離れて欲しいんだが……」

ゾロの後ろに隠れたままそう告げれば、落ち込んだ様子を隠さずサンジはしょんぼりと眉を下げていた。その様子に胸が苦しくなる。そ、そんな顔しないで、サンジは笑顔が一番素敵だよ、笑ってほしいよ。でも私のたった一言でこんなに落ち込んでくれるの?それはそれで興奮するな……。なんて、そんな邪念に満ちた考えを脳内で繰り広げていたらぱちりとロビンと目が合った。するとロビンは何かを納得したように頷いて、「なまえはきっと大丈夫だと思うわ」と集まってきてくれたクルーたちに声をかけた。助かる。なんのこっちゃ?まァしかし怪我じゃないならよかったな、何かあったら絶対に医務室に来るんだぞ、なんて口々に言い合うのが聞こえて改めてみんなのことが好きだな。いい一味に入れたなと実感した。そんな風に噛み締めているとゾロ越しにサンジが私に声をかけてくれた。

「なまえちゃん、」
「……うう……」
「理由はよくわからねェが…おれは元気なきみの笑顔が好きだからさ、おれがいないほうがいいって言うならなるべく視界に入らないように……しようと思う…!したくはない…けど!でもな、これだけは覚えていてほしいんだ」
「おい」
「特別に愛しいレディにそう言われるのは、なかなか堪えるもんだよ」
「………………………え」
「コラ聞いてんのか」
「今すぐきみを拐ってしまいたいけど…!お望み通り一度キッチンに戻るよ」
「……っサンジ」
「〜〜〜〜テメェらいい加減にしろ!!おれを挟んで会話すんな!!!!おら!クソアホコックなまえ持ってけ!」

むんずと私を引き剥がしてゾロは文字通り私を投げた。うそでしょ腕の筋肉だけで女ひとり投げられるものなの!?「うぉあ!?テメ何して、なまえちゃん…!」一瞬宙を飛んだ身体をサンジが受け止めてくれた。「めんどくせぇことしてんなよ、おれを巻き込みやがって……アホどもには付き合いきれねぇな」と首をコキコキ鳴らしながらゾロも船内に消えていった。………………えっ、受け止めて??

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