作文 | ナノ

屋上でアイギスの膝の上で有里くんは  だ。
近寄って触れる。髪も頬も手も有里くんそのままだった。だけどどうしても瞳だけが開かない。
順平が必死に名前を呼ぶ。ゆかりが膝から崩れ落ちた。美鶴先輩がゆかりの肩に手を添える。真田先輩が有里くんをゆする。天田くんが呼びかける。風花が有里くんの手首をやさしく触れる。わたしが有里くんの隠れた瞳をあらわにしても、いまだに瞳は瞼に覆われたままで開かない。

「大丈夫です」

アイギスは静かにそう告げてわたしの頭を撫でる。まるで母のように暖かく感じる。
春の風は笑ってしまうほど柔らかい。とても悲しいのに、ひどく穏やかにおもえた。有里くんはきっとわかっていたんだろう。いずれこうなると。でもそれを言わなかった。今こうして偲ぶ順平もゆかりも美鶴先輩も真田先輩も風花も天田くんもコロマルもわたしもアイギスも、きっと言わずとも心のどこかでわかっていたんだろう。
わたしたちは泣いているのに、どこまでも春は穏やかだった。
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