作文 | ナノ

※すこし注意

「あれ?誰もいないのか」

机に伏せて眠ってしまっていたようで、春名くんのこの声で目を覚ました。寝起きで声が出せなくて、でもぼくはいますよとアピールしようとするより先に春名くんが動いた。

「プロデューサー、最近しばらく会えてないよなあ。うちにも来てくれねえし…」

ぼくの机の上に聳え立つように積まれた書類やら何やらのせいで春名くんからはぼくは死角に入ってしまっていて見えていないらしい。

「…プロデューサー…」

プロデューサーさんのデスクを撫でてため息をつく春名くん。かっこいい子だなあ。すると春名くんは椅子を引いてプロデューサーさんのデスクに座る。ペン立てをいじったりメモ帳をペラペラ捲って、「あ"〜〜〜〜」と大きく息を吐く。流石に大丈夫かと声を掛けようとすると金属の触れ合う音がする。

「プロデューサーの匂いだ」

椅子の背もたれに掛けてあるひざ掛けに顔を埋めているのだろう、くぐもった声。と、金属の擦れる、そう。ベルトを外すような音。「…っん…は…」ぼくも同じ男だ、わからないはずが無い。というか、家に来てくれない?会えなくて寂しいというようなことは四季くんだったりもふもふえんだったり、他のアイドルも口にすることだがこの場合はもしかしなくてもそういう意味。次第に切なそうな声、苦しそうな吐息が断続的に聴こえてくる。他人の自慰を見るのも聴くのも初めてだ。今さら声をかけるわけにもいかないし逃げられないしで、ぼくは再び眠るフリをする。春名くんがいかにプロデューサーさんに飢えているのかはよくわかった。から、もっと周りを確認してほしい。本当に。いまのぼくには一刻もはやくプロデューサーさんのためにも、春名くんのためにもプロデューサーさんがお休みをとってくれるのを祈ることしかできなかった。
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