作文 | ナノ

「トリックオアトリート!なんかちょうだい」

言うと思った。とにかく楽しいことが好きな彼女の事だからきっとこの季節の行事にも乗るだろうと思っていた。僕だって幼いころならハロウィンに兄とお菓子をもラったりしたこともあるけれど、それももうずいぶんと昔の話だ。今やもう大学生、大学生の言うハロウィンなんてのは飲み会の口実だ。そう思っていたけれど彼女に限っては違ったみたいだ。

「郁弥お菓子もってないの?」
「いや…お菓子がどうこうというより今は驚いてる」
「なんでさ」
「本気でハロウィンやる気がある人を見たのは留学していた時ぶりだから……」
「さり気なくディスるな」

不満そうに頬を膨らませる彼女はとても同い年に思えなかった。楽しいといえば楽しいので構わないけれど、こういう訳のわからない方向にフルスロットルなのはどうかと思う。もう少し落ち着きも必要だよ。

「にしても、その服なに?」
「あ!気が付いた?これ仮装なの」
「……一応聞くけど何の仮装?」
「新宝島のMVの山口一郎」
「その服のまま大学の敷地から出たら怒るから」
「で、出ないよ!」

あやしい。せめてミュージックとかアルクアラウンドあたりにしておけばいいものを。いやそうじゃない。衣装のチョイスもそうだけどそうではない。

「ところで郁弥お菓子は」


2020年ハロウィンでした。まとまらなくて諦めたので供養
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