作文 | ナノ

 ふと目を覚ますと空はすっかり朝の色を纏っているのがカーテンの隙間から見えた。そのまま視線を動かして壁掛け時計を見ると時刻は朝6時過ぎ。(まだ早いかな、)再び目を閉じようとするとベッドが軋む。隣で寝ているはずの凛が身体を起こしたからだ。

「りん、」
「悪ィ、起こしたか」
「早朝ランニング?」
「ああ、お前は寝てていいぜ」
「ん……いや、私も行く」
「あ?お前も?」

 そういえば牛乳を飲み切ってしまったことを思い出した。一緒に出てコンビニにでも行こう。「今日はどうしたんだよ」「コンビニいく。ついでにお散歩しようかな」着々と支度を進める凛と、もそもそとベッドから這い出て洗面所に向かう。「めちゃくちゃ眠そうじゃねーか、買い物くらい俺が寄ってくるよ、寝てろ」「一緒にいたい」そう言うと髪をぐしゃぐしゃにしてほんのり色づいた目元を隠すようにそっぽを向いて言う。「そーかよ。おら、顔洗ってこい」彼がいつも照れ隠しの時に取る行動だ。かっこいい人の癖にこういうところが可愛いのだ、松岡凛という人間は。
 
 徐々に脳も覚醒してきた。洗顔と歯磨きを終えて、着替えて髪を直して簡単にファンデーションだけ塗って、財布とスマホを手にふたり、家を出た。

「おまたせ」
「……あー、今日はランニングじゃなくて散歩の気分かもしれねぇな」
「ほんと?奇遇だね」

 朝の、まだ人の少ない町。空は晴天でも真夜中の空気が少し残っているから程よくひんやりとしている。ぐっと伸びをすると筋が伸びているのを感じて気持ちが良い。
凛も深呼吸をして気持ちよさそうにしている。「凛、コンビニ寄っていい?」「おー。あ、のよ」「うん?」「……お前のオレムツ、食いてえんだけど」「いいよ。今朝はおいしい朝ごはんにしよっか」さり気なく私の手を攫って歩く彼の隣は心地良くて、今日一日はとても良い日になる気がする。

「凛、好き」
「な!……んだよ急に」
「言えるときに言っておこうと思って」
「そーかよ……」

 何かと照れがちな、優しい彼と過ごす朝が愛おしくて仕方ない。今日はまだ始まったばかりで、街もうたた寝をしているようなまどろみの中をふたり歩く。繋いだ手をい繋ぎなおして、示し合わせずともぶつかる視線にちいさく笑う。帰ったら二人で囲む食卓が楽しみで仕方がない。しあわせな予感を胸にまた一歩踏み出した。
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