作文 | ナノ

時折霜狼に貴澄くんや旭くんたちが遊びに来るようになって、中学生のころの写真を持ってきてくれるようになった。私は郁弥と日和に知り合ったのが高校からなので、それ以前の事はあまり知らない。見せてもらえるだけでもとても嬉しいし、何よりとんでもなく可愛いのだ。この世の宝か?彼氏、推せる。認知もあるし私が郁弥のTOだ。今日は貴澄くんが遊びにきた。食堂でいろんな話をして郁弥との待ち合わせまで時間をつぶす。

「これが中一の時のアルバム!郁弥とはクラスが同じだったからねー、色々残ってたよ」
「貴澄くん天才じゃん!いくら払う?」
「お金なんかいらないよぉ、その代わりまた僕とこうしておしゃべりしてくれる?」
「する!」
「しなくていい、貴澄また来てたの?」
「郁弥!」
「遠野くんも!やっほー」
「ふたりとも暇なの?」
「うわ、貴澄くん見た?あんなに可愛かった天使のような郁弥、今こんな…とんでもないイケメンに育ったよ、ビフォーアフターがエグい」
「は?」

不機嫌を表情とオーラで表した郁弥は大きなため息をついた。「だいたい可愛いって何?嫌がらせ?」地を這うような声がちくちくと刺さるけれど、美人がすぎるので迫力のある絵画みたいでアリだな…と思う。郁弥の横にいる日和が「可愛いやつだよねぇ。わかりやすくてさ」と笑う。「日和」日和は時々こうして郁弥をからかって遊ぶ。こういうところあるよね。

「もういいから。この後僕達予定あるんだし準備して。貴澄ははやく帰って」
「郁弥ひどいなぁ、まあまた来るけどね」

いいから早くしろと言わんばかりに私の腕を掴んで郁弥が引く。ここで下手に反論するのは得策ではないと思い椅子から立ち上がると手首を引いてずんずんと食堂を出ていく。あ、足の長さが違うので完全に引きずられる人になってしまった。「みんなまたねー!」「郁弥によろしくねー」「聞こえてる!」食堂を出てなんとか隣に追いつくと掴んでいた腕を離された。「あ……ごめん、歩くの早かったよね」「ううん。大丈夫」バス停に向けて歩く道すがら、ぽつぽつと話をする。

「貴澄と話すの、楽しい?」
「まあね。明るくて話題も豊富だし、絶対女の子にモテるでしょ?気遣いがすごいよね」
「……そう」
「あ、やきもちやいてる?」
「もし、…………そうだって言ったらどうするの」
「そうしたらねえ、うーん、もっと好きになっちゃうな」
「単純だなあ…」
「簡単なほうが生きてて楽だよ」
「きみのそういうところは見習うべきなんだろうね」

タイミングがいいのか悪いのか、バス停には私たち以外に人がいなかった。到着予定まであと6分。ベンチに座ってバスを待つ間、顔がにやけてしまいそうで困った。「百面相」と呟いた郁弥の機嫌は多分治っている。二の腕のあたりに頭を軽く寄せて見上げると肩を引き寄せられる。好きな気持ちがパンクしそう。鳥取県の大地、郁弥のお母さん、郁弥と夏也くんのふたりという素晴らしい人を生んでくれてありがとうございます。拝んでおこう。鳥取ってどっちの方向だろ?

「何してんの?」
「郁弥のお母さんと鳥取県に感謝してる」
「やめて拝まないで」

(推せる彼氏が最高に可愛い話)
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