作文 | ナノ

真琴と、11/17が誕生日の人おめでとうございます

「へえ、橘くんって今月17日が誕生日なんだあ」

教室の後ろの方で女子と橘と七瀬が話をしている。いや、七瀬は窓の外を見ているから最早ただあそこにいるだけだけれど。クラスメイトの女子の声があまりにも大きいからきっと今の会話でクラスの半分以上が橘の誕生日を知っただろう。友達と一緒に学食に向かうために鞄から財布を取り出しながら、口の中で「そうなんだ」と零す。行こう、友達に声を掛けて教室を出る寸前、友達が声を上げた。「今月17日ってみょうじと一緒だね」「そうだねー」それよりお昼は何を食べようかな。友達は牛丼にするというので私はカレーにした。


「あ、あのさっ」

放課後、部活が休みの日だし買い物でもして帰ろうか。と話をして、帰り支度をしている途中で橘が声を掛けてきた。「何?」少し離れたところに鞄を持って早く教室から出たそうな顔をした七瀬がスタンバイした状態で橘が声を掛けてきた。

「え、っと…その、ごめん聴こえちゃったんだけど。みょうじさんも誕生日一緒なんだね」
「そうみたいだね」
「俺も17日なんだ!」
「そうなんだね、お互いにおめでとう」
「ああ、うん……そう、だね」

なんでそんな微妙な顔するんだろう。「橘?」顔を覗き込むと「えッ!?あ、ごめん!大丈夫、ありがとう!そうだね、おめでとう!そ、それじゃッ!また明日ね!ハル!部活行こ!」いろんなことを一気に捲し立てて橘は七瀬の腕を引いて教室を出て行った。されるがままに引き回されている七瀬は感情がなくて少し面白かった。


■□

「誕生日おめでと〜!」
「ありがと〜!」

11月17日。登校したら友人たちが口々に声をかけてくれる。誕生日プレゼントやお菓子をあれやこれやと渡されてあっという間に腕の中が埋まる。有り難いし嬉しくて自然と顔が綻ぶ。教室の反対側では橘もいろんな人に取り囲まれていた。そういえば私たち、同じなんだったな。あとで隙を見つけて声を掛けてみようか。予鈴が鳴ったので解散した。

「あ、橘」

昼休み。今日はお母さんがお弁当を作ってくれた。私の好きなものばかりはいっている特別なお弁当。嬉しいな。友達を置いて飲み物だけ買いに自販機へ向かった先に橘はいた。

「あ!みょうじさんも自販機?」
「うん。今日はねえイチゴオレ」
「美味しいよね。オレは…何にしようかな」

到着した先でさっさと買い物を終えて、自販機からイチゴオレを取り出して、そこで一時停止。「……どうしたの?」橘に返事はせずお金を追加で自販機に投入する。

「迷ってるなら」
「えっ」
「はい。迷ってるなら、これ。私のおすすめだから」

がこん。自販機から出てきたイチゴオレを差し出した。「ええっ!?あ、ありがと…お金払うって!」「いらない。誕生日プレゼントだから。橘誕生日おめでとう」「それならみょうじさんだってそうだろ!」「そうだけど!」イチゴオレを持った手を押し付けあう様になっていて……って橘、これはこれで私に失礼じゃないか?「そ、れと!」ぎゅ、と橘の大きな手のひらがイチゴオレごと私の手を握る。手汗でじっとりと湿った橘の手のひらがやけに気になって仕方がない。「みょうじさんも、た、誕生日おめでとう!どうしても直接言いたくて…!好きな子のお祝いは絶対したいって思っててッ!あっ!?」「は?」「あ」みるみるうちに真っ赤になる橘の顔と、よりびしゃびしゃになる橘の手のひら。「ごめん…」そう言う割にはなかなか手を放してくれない。「た、橘、あの…手……」「うわーっ!手汗ひどいよね!?ごめんね!」手汗とかより、いやあ今の言葉、色々言いたいことはあるのに橘の慌てようを見ていたら冷静になってしまって笑えてきた。

「あの、放課後!改めて時間貰えないかな!?改めて言わせてほしいんだ…!」
「いいよ」

ぱあ、と笑顔を見せた橘がまだほんのり赤い頬のまま「じゃあまた後で!」と走っていった。同じクラスだから、この後またどうせ教室で会うのにね。互いの体温で温くなって受け取ってもらえなかったイチゴオレを手に、私も教室へ戻ることにした。
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