作文 | ナノ

R-15部分くらい(?)まで

引き摺られるようにして参加した飲み会の二次会を断って、なまえの部屋に向かった。記憶が正しければ、恐らく特になんの予定もないと言っていたはずだった。――喉が乾いて飢えて仕方がない。はやく、はやくあの子に会わなきゃ。そのひとつの衝動のみで足を動かす。騒がしい街の声や音が妙に大きく響いて、耳がぴんと立つのがわかる。ああ、うるさい、うるさい!
駅からそう遠くない距離ですらもどかしくて、なまえの住むアパートに着くや否や早足でフロアの廊下を歩く。インターホンを鳴らして、鍵を開ける音に続いて「はい」と聴こえた待ち焦がれた声が、すとんとこころに沁みるようだ。音を立てて開かれた扉をこじ開けて、身体を押し入る。「わあ!郁弥!?どうしたの突然」後ろ手に鍵を掛けて、なまえの細い身体を掻き抱いて腕のなかに閉じ込めた。息を吸って、吐いて、驚いて固まるなまえの髪の香りを肺いっぱいに吸い込んだ。僕はここではじめて、呼吸を取り戻した。血液が全身を巡るのがわかる。指先まで熱が行き渡ってあつい。

「ごめん、喉が乾いて、おなかがすいて、仕方がないんだ」
「えっと…大丈夫?残りのカレーならあるけど」
「ちがう」

 僕を見上げる瞳が、困惑に揺れている。ビー玉みたいで可愛い。目が合う。当然だ、こんな突飛な行動を僕は今まで取ったことがなかったから。頬を両手で包んで上をむかせる。
鼻先が擦り合う距離で告げる。「なまえがたべたい、ほしい」何かを言おうと開いたなまえの唇にぱくりと噛み付いた。

▲▼

 自分は淡白なほうだと思っていた。理性的な判断が出来ているとも思っていた。しかしそんなのはとんだ間違いなのだと現実を突きつけられた気分だった。だってこうして今も、欲のままになまえをベッドに押し倒して首に噛み付いている。キスマークを付けて、文字通り"噛み付いて"。けれどなまえもなまえで、首を噛むと中がよく締まるんだ。小さく上がる声が甘ったるくて愛おしい。海外の入れすぎなくらいの砂糖みたいに、骨の髄まで染み込むような。

「郁弥、手」

繋いで、と伸ばされた手を絡めとってシーツに縫い付ける。何なら手首ごと僕が貰うよ、最近色を変えたネイルがよく似合う。白くて細い指にもキスをしてからもう一度唇にもキスをする。眉を八の字に下げながらも、口元は柔く笑んでいて、なんとも言えない色香を放っている。手を繋ぐだけじゃ、キスするだけじゃ、僕もなまえも満足には程遠いくせにね。
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