作文 | ナノ

「最近涼しいね、ひぐらしの声もあまり聴かなかった気がする」
「過ごしやすくていいけどね」
「確かにいいけど…この辺にはまだいるんだよね、奴が」
「この前いた。すごくびっくりした」
「マジ?やだな…ってあーーーー!!!!」
「うわあ!?何!ちょっと大声出さないでよ!」
「そそそそこ!そこ!蝉!セミファイナル!?生きてる!?!」
「確認してから驚いてくれる!?もう…っわああ!」
「ぎゃーーっななな何!郁弥!?前見えないんだけど!」

蝉、無理なんだよね。そんな話をしながら歩いていたら足元にいた蝉に、蝉がダメな私たち2人はわあわあ騒ぐ。郁弥の傍にいたひっくり返った蝉を見つけた彼が唐突に抱きしめてきた。何が起きたのか分からないし暑いしで混乱の極みだ。

「えっいやちょっと…郁弥ほんと大丈夫?てか暑いし…そこまで怖かった?」
「なっ、ち、違うし!君が気持ち悪い蝉のこと見たくないかと思ったから!庇ったんだろ!」
「あ、うん……ふふ、うん、ありがとう郁弥。蝉無理なのは本当だしね?えへへ、暑くない?」

未だに後頭部を胸に押し付けてくる郁弥にそう告げるとはっとして、ばつの悪そうな顔でゆっくり身体を離される。何か言いたげだけど、多分今言葉を探しているであろう彼を待つ。混乱の色を瞳に写した郁弥は咳払いをひとつ、照れくさそうに口を開く。

「……ま、平気ならいいけど。ほらいくよ」

そう言って手をとる。ああ、そういえば私たちは夕飯の買い物に行くんだった。手を繋ぎ直してスーパーへの道を歩き出す。今夜はエビフライも食べたいよね?私も食べたいし、献立はこれで決まりかな。


ハイスピードドラマCDで蝉無理って言ってたので
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