巡り巡りて




※現パロ転生if/本編後/無一郎視点




14の秋、いつものように授業を受けて兄さんと一緒に下校してた時だ

ひらひらと舞う銀杏の葉が落ちてきて、それを眺めてると途端に記憶のようなものが脳内に流れ込んできた
自分では無い誰かの記憶、でもそれは間違いなくこの僕の記憶で…うーん、少し説明が難しい


「どうした無一郎」

「っ…ううん、何でもない」


記憶の中の僕も無一郎という名だった
そして双子の兄は有一郎、苗字まで同じなんて偶然とは思えない
それに自分自身なんじゃないかと思えるほどにそっくりなんだ

記憶の中で僕は鬼殺隊という鬼と戦う剣士として生きていた
大正時代…今から100年も前の話だがこの世界に鬼狩りがいたという記録は無い
妖怪とかそういう類のものは描かれていることはあってもあくまで都市伝説的な位置づけで実在しない
だけど記憶はあまりにも鮮明でとても嘘とは思えない

家について自分の部屋に戻ると机の上に一通の手紙が置いてあった
差出人も不明のそれは綺麗な字で時透無一郎様と書かれている
怪しいなと思うも中を見てみると、先程思い出した記憶の事などが詳細に書かれていた

手紙は産屋敷耀哉という人からだった
その名前も記憶の中にあったし、記憶の中の僕は忠誠を誓っていたっけ
どうやらこの世は僕の見た記憶の世界とは異なる時間軸の世界らしい
それなのにどういうことか、鬼狩りの記憶を持つ者が多々現れるという
記憶は突発的に蘇り、前世…でいいのかな、その頃の年齢になると突然流れ込んでくるそうだ

何だかまるでここがあの世で、前世の続きみたいだけど、これまで僕はいたって普通の生活をしてきた
優しい両親と双子の兄と4人で暮していて、ごく普通の幸せを享受して生きてきた
それなのに今日いきなりこんなことが起こったんだ、冷静でいられるはずがないのにどこか腑に落ちるのは何故か

手紙には記憶を取り戻した者が集まっている旨と、その場所が記されている
来いと言うことだろうかと悩むもその週末、僕は自分の好奇心に負けてついつい足を運んでしまった

そこはどこかの御屋敷のような場所で、今の世では珍しい日本家屋の立派な家だった
あまりにも凄い門構えなのでインターホンを鳴らすか迷ってると、肩に手を乗せられる


「うわっ」

「よォ、思い出したかァ?」

「し、不死川さん…?」


会ったことは無いのに記憶の中では会ったことのあるその人の名を告げれば「そうだ」と軽く返される
手紙の内容が事実だったということに驚きつつも不死川さんに続いて中に入ればそこには数名の人物がいた


「あら、お久しぶりですね時透くん」

「相変わらずちいせーな」

「胡蝶さんに宇髄さん…」


スラスラと名前が口から出てくる
その場には記憶の中で柱と呼ばれて共に肩を並べた人達がいた
しばらくぽかんとしてると産屋敷さんが姿を見せる
その途端僕も当たり前のように片膝をついていて、数秒遅れてから「え?」と小さく声を発してしまった


「久しぶりだね無一郎、まだ戸惑いの方が大きいだろうに来てくれてありがとう」

「あの…僕何が何だか分からなくて…でも記憶が嘘とも思えないし…それで」

「記憶を取り戻した時はみんなそうさ、この世では最後に柱だった君達だけが記憶を取り戻した」


この場にいる柱の9人だけ
だから兄さんや父さんや母さんは思い出さなかったのかと納得する


「どうしてこの世でも身内がそっくりなのか、容姿がそのままなのか…それは私も分からないんだ、でも君達とこうしてまた会えたことは本当に嬉しいよ」

「お館様…」


前世ではお館様は鬼の筆頭である鬼舞辻無惨を倒すためにその命を犠牲にしていた
集まった柱も無限城という異空間に送られ各々が戦い命を落とした者もいる…僕もその1人だ
上弦の壱との戦いで胴も腕も切断されて死んだんだった

するとふと気がついたことがある
記憶の中で僕らに縁があった人はその姿のままこの世に存在しているんだ
僕の家族がそうなように、きっと玄弥も不死川さんの弟として生きている


「無一郎はやっぱり賢いね、その通りだよ
鬼殺隊の隊士や身内などはみなこの世に存在している、尤も前世の記憶はないみたいだけどね
しのぶの姉のカナエや実弥の弟の玄弥はごく普通の一般人として生きているからね」

「じゃあ本当に僕らだけが」

「そうだよ、そしてどうして私達だけが記憶を取り戻したのか…この話をしようか」


お館様は今のことを教えてくださった
この世も過去に大正時代はあったがそこでは鬼は存在していないということ
つまり鬼舞辻無惨が存在していないということ
だが今の世でも別の形で鬼と呼ばれる人を襲う化け物が暗躍していること
それらを祓い除けるために僕らの記憶が蘇ったと

既に僕以外のメンバーは鬼と戦っているらしい
お館様は記憶を取り戻され、自分の使命を悟ってから準備をされていたそうで武器などは全て手配済みだという

そして僕にも力を貸してほしいと頼まれた
勿論答えは決まってるがこの世では僕はただの中学生だ
無力どころかお荷物でしかない


「大丈夫だよ、ちゃんと訓練所などは用意しているからね
それにこの世では誰一人も死なせたりなんてしない…そのために私は記憶を取り戻したのだから」


お館様に全員が頭を下げる
不思議と不安なんかは消えていて、残ったのはこの人のためにも出来ることを頑張りたい
ただ漠然とそう思った






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