ヒロアカsong


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ナイトアイが構成員と接触、その際個性を使用しエリちゃんが本拠地にいることが判明
八斎會邸宅には届出のない入り組んだ地下施設が存在し、その中の一室にエリちゃんが匿われていることが確定した
構成員の男は地下の入り口からエリちゃんの部屋まで一切の寄り道をせず、その為地下全体を把握することはできなかったらしい
ただそのルートは最短距離であり、こちらにとっては好都合

しかし目指すにしても個性を駆使されれば捜索は難航する
そこでわかる範囲で八斎會の登録個性をリストアップしてくれた警察の人
もらったものを確認して記憶していく

時刻はAM8:00 警察署前
大勢の警察官とヒーロー達が集まる

「隠蔽の時間を与えぬためにも全構成員の確認、補足など可能な限り迅速に行いたい」

警察の人の発言を聞きながら傍にいたギルティルージュを見れば余裕そうだ
私と雫ちゃんは緊張しているというのに

「ほら2人ともリラックスして、私が傍にいるから大丈夫よ」

終わったら皆川のアイスでも食べましょう!そう告げた彼女に緊張が和らいだ

「ヒーロー、多少手荒になっても仕方ない
少しでも怪しい素振りや反抗の意志が見えたらすぐ対応頼むよ!
相手は仮にも今日まで生き延びた極道者、くれぐれも気を緩めずに各員の仕事を全うしてほしい…出動!」





AM8:30 死穢八斎會事務所・邸宅


「令状読み上げたらダーッ!と行くんで!速やかによろしくお願いします」

そう言った警察の人がインターフォンを押そうと手を伸ばす
それが触れる前、扉を突き破って現れたマスクの男

「何なんですかァ!?朝から大人数でぇ」

その男は警察の人たちを殴り飛ばした
宙に浮くその人達を先生と出久が救出する

「オイオイオイ待て待て!勘付かれたのかよ!!」

「いいから皆で取り押さえろ!!」

暴れる男を前にヒーローが臨戦態勢に入る

「少し元気が入ったぞー…もぉー…何の用ですかァ!!!」

「離れて!!」

即座にリューキュウが姿をドラゴンに変え男の攻撃を受け止めた

「とりあえずここに人員を割くのは違うでしょう
彼はリューキュウ事務所で対処します、皆は引き続き仕事を」

予定とは違うけれど突入となったので駆け込む
するとそこには数人の男たち

「おォい何じゃてめェら!」

「勝手に上がり込んでんじゃねー!!!」

どう見ても悪党以外の何者でもないくせに警察もヒーローも怖がる素振りを見せない
どれだけ捜査だと言っても通用しないのでギルティルージュがため息をついた

「オーケー、私たちでここを引き受けましょう」

と、その時、ギルティルージュに向かって飛びかかってきた1人の人物
先ほどの男と同じペストマスクをつけたそいつは彼女に強烈な蹴りを入れた

「っ…う゛!」

「ギルティルージュ!!!?」

明らかに周りの悪党とは違う風格のその人物はくるくると回転し着地する

「…咄嗟に庇ったか、お見事」

あのギルティルージュでも反応が遅れたその攻撃
速すぎる足捌きに目が追いつかなかった

「そのマスク流行っているの?」

「これは若頭にいただいたもの…」

大切そうにそう告げたその人
しかしギルティルージュのコウモリがそのマスクを弾き飛ばした

「ダッサいから外しなさい」

挑戦的なその表情
不覚の攻撃を受けてもギルティルージュは未だ余裕だった

外れたマスク、その向こう側の素顔は可愛らしい女の子
年は私たちより少し下くらいのその子に思わず怯んだ

「大切な…マスクを…!!!!!」

その子は自分に何かを打ち込んだ
おそらく個性増強のクスリだろう、彼女の足を覆っていたブーツが変形する

「…殺す!!!」

そう叫んで飛び出した女の子の速さは目で追えない
気がつけばギルティルージュと女の子は空高く舞い上がっていた

「っ、雫ちゃんは地上からサポートを!!」

「唄ちゃん!!」

羽を広げ飛び出した
ギルティルージュを守るためにできることをやらなきゃ

「(それに出久たちがもう突入している、エリちゃんを保護できればこの作戦は完了だ)」

私たちの役目はそれまでの足止め

多分あのブーツに見えるものは個性なんだろう
筋力増強の瞬発力と攻撃力を持ち合わせたものだ
先ほど警察の人から見せてもらったリストに名前があった
跳飛蹴里奈…個性は"靭足"

「あら、怒ったの?」

「殺す」

「ごめんなさいね…でも」

「殺す」

「とっても趣味が悪いようだから」

「殺す!!!!!」

ギルティルージュに炸裂した強靭な蹴り
それを彼女は眷属のコウモリを使用しなんとか受け止め、その隙に飛んで間合いに入る
ギルティルージュの魅了は触れた者に発動する技
伸ばした手が触れかけた、けれど跳飛は躱してしまう

私もできる限りサポートに回るが動きが早すぎてワンテンポ遅れてしまっている

「(せめて空中から叩き落とせれば…!)」

そうするには隙が必要だ
羽を撃ったところであの強靭な足蹴りで相殺されてしまう
音波の個性は狙いが定まらない上に下手するとギルティルージュを巻き込む

完全にギルティルージュの合図待ちの私はせめて…と跳飛の動きに集中し続けた
瞬間、跳飛は銃を取り出した
脳裏を過るのは会議中に聞いた個性を消すという弾のこと

「っ!!!」

気がつけば飛び出していた
私は考えてから動くということができない、いつも感情で動いてしまう

「(またやっちゃったな…)」

ギルティルージュを庇うように飛び出し彼女を弾から守る
この場でギルティルージュの個性が封じられる方が痛手、そう判断しての行動

肩に命中したそれは特に痛みもないが一瞬で全身を駆け巡り、私の背から羽が消えた
フッと身体が重力に無抵抗になる感覚

「フリューゲル!!!」

ギルティルージュの焦った表情と叫びを聞きながら私は地面へ向かって急降下した









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