肝試し3組目

震える私は雫ちゃんの手をがっつり繋いでブルブルしている

「ひっ…今何か聞こえた！」

「鳥の声だよ」

「今何か冷たいものが！？」

「風だよ」

雫ちゃんは怖くないのか平然としていて頼もしい
私はもう本当にダメすぎて一刻も早く終わりたい
というか半分以上これたことを褒めてほしいレベル

と、その時何やら焦げ臭い匂いに気が付く
音波の個性を使えば、遠くから爆発のような音も聞こえた

辺りに漂う煙、おそらくガスだと判断し羽を広げる

「雫ちゃん、呼吸止めて」

羽ばたきで煙を蹴散らす

「もういいよ」

「ありがとう」

流石に肝試しでガスが撒かれるなんてことはないだろう
そう思って何かあったのか考え込む私達の前方には巨大な蛾のような羽と触覚を生やしたヴィラン

「あらぁ？可愛らしい子」

ニタァと笑うそのヴィランの女はこちらへ飛んでくる
その羽、蛾を彷彿とさせるそれに雫ちゃんの嫌悪スイッチが入ったようだ

「気持ち悪いいいいい！！！！！！」

ズアアアアッと勢いよく放たれる大波

「ちょ、雫ちゃん？！」

ここは私有地とは言え個性を使用して大波を放った雫ちゃんにギョッとする
仮免もない状態で個性の使用は原則禁止、処罰対象だ
いつもは冷静な雫ちゃんがこんなに取り乱すなんてと驚いている内にヴィランの女性は氷漬けにされてしまった

「…しゅ、瞬殺…」

死んではないだろうけどまさに一瞬でヴィランを撃退してしまったことにポカンとする
え、これ大丈夫だよね？黙ってればばれない？と顔が引きつった時、脳内に入ってくるマンダレイの伝言

『A組B組総員、戦闘を許可する！
ヴィランの狙いの1つ判明！生徒の「かっちゃん」！
「かっちゃん」はなるべく戦闘を避けて！！！単独では動かないこと！！
わかった！？「かっちゃん」！』

その伝言に時が止まったような気がした

「（勝己が狙われてる…？）」

何で、どうして
ぐるぐる巡る感情
そんな私の肩を雫ちゃんは掴んだ

「唄ちゃん！行こう！」

「雫ちゃん…」

「大丈夫、広場に向かって行って焦凍くんと爆豪くんと合流しよう
4人でならヴィラン相手にもなんとかなるかもしれない」

そうだ、まだ捕まったわけじゃない
今ならまだ間に合う

頷いてから急いで先に向かった
2人で道を駆けていると彼らはいた
それに出久、常闇くん、障子くんも

「みんな！？」

こちらをむいた一同

「唄ちゃん！海色さんも！よかった無事で…」

ホッとした表情の出久はとんでもない怪我を負っていて正直気絶しないでいられるのが不思議に思えるくらいだ

「ちょっと…その怪我っ…！？」

「唄ちゃん僕は大丈夫」

そう告げる出久だけれどとても平気そうには見えない
心配だけれど今は先を急ぐ方が先決だ

「ヴィランの目的の1つがかっちゃんだって判明したんだ」

「爆豪…？命を狙われているのか？何故」

常闇くんの疑問に首を横に振る

「わからない、とにかく先生達のいる施設が最も安全だと思う」

「なるほど、これより我々の任は爆豪を送り届けることか」

勝己をおいて行きぼりにして作戦会議をする他のメンバー

「道はどうする？広場経由？」

「広場は依然プッシーキャッツが交戦中、道成に戻るのはヴィランの目につくしタイムロスだ、まっすぐ最短がいい」

問いに対する出久の言葉に、轟くんが静止をかける

「ヴィランの数わかんねえぞ、突然出くわす可能性がある」

「障子くんと唄ちゃんの索敵能力がある！
そして轟くんの氷結、海色さんの大波、更に常闇くんさえいいなら制御手段を備えた無敵のダークシャドウ
このメンツなら正直…オールマイトだって怖くないんじゃないかな！」

勝己を守るように配置につくメンバー
前方に轟くん、轟くんの両サイドに障子くんと私
勝己の後方には常闇くんと雫ちゃんだ

出久はあまりにもボロボロすぎるので障子くんにおぶられている

「何だこいつら！！！！」

「おまえ中央歩け」

「俺を守るんじゃねえクソ共！！」

「行こう！」

勝己を無視してそう告げる
何を言っても納得しないのは把握済みだ

その後彼を守るように歩く面々
もうそろそろスタート地点付近の通路に出るだろうと思えた頃

「おい俺を守るんじゃねェ！」

「うるさい！ちょっと黙って！！」

索敵中
音波の個性で音の跳ね返りを拾ってる時に後ろから大声を出されて気が散るのだ
後ろを振り返り勝己に怒鳴った

すると静かになったようで再び索敵に集中する
そしていよいよ通路に出た時、そこに見えたのはヴィランと交戦中のお茶子ちゃん

「お茶子ちゃん！？」

慌てて羽を撃つけど避けられてしまう

「人増えたので殺されるのは嫌だからバイバイ」

逃げたヴィラン
見たところ同じ年齢くらいの女の子だったけれど

「お茶子ちゃん怪我…！」

「大丈夫全然歩けるし…ていうかデクくんの方が…！」

「立ち止まってる場合か早く行こう」

「とりあえず無事で良かった、そうだ一緒に来て！
僕ら今かっちゃんの護衛をしつつ施設に向かってるんだ」

そう告げた出久にお茶子ちゃんと梅雨ちゃんは不思議そうな顔をした

「その爆豪ちゃんはどこにいるの？」

振り向いたそこには勝己、雫ちゃん、常闇くんの姿がない

「彼なら俺のマジックで貰っちゃったよ
こいつぁヒーロー側にいるべき人材じゃねえ、もっと輝ける舞台へ俺たちが連れてくよ」

木の上からこちらを見下ろす仮面のヴィラン

「「っ、返せ！！！」」

私と出久の声が同時に発せられた










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