ヒロアカsong


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フィールドが本日何回目かのメンテナンス後、私と勝己はその舞台に上がった

「よぉ唄、ようやくてめぇをぶっ飛ばす日が来たぜ」

「物騒だからやめなよ、ヘイト買うよ」

「るせぇ!俺が勝ったらその減らず口すりおろしてやる!」

「じゃあ私が勝ったら動物園ねー」

「連れてくわけねぇだろ!」

キレッキレのツッコミにやれやれと思っていると、プレゼントマイクの声が鳴り響いた

『準決勝第2試合!

実はこの2人幼馴染らしいぜ、燃えるなオイ!

舞羽唄 対 爆豪勝己!START!!!』

勝己はまずは右の大振り
それをすかさず避けて羽を撃つ

『舞羽が先にダメージを与える!!!』

「ってぇな!」

勝己が私を睨みつける
そして爆破を繰り返して瞬く間に目の前へ迫る
私の頭目掛けて伸ばされた手を見て何をするかを理解し口元がひくついた

「(あ、これ…顔面…!!)」

「ぶっ飛べぇえ!」

顔に向けて爆撃を放ってきた勝己に慌てて至近距離で音波を放って応戦した
咄嗟すぎて正直威力のことも何も考えられなかったけれど大丈夫だろうか
勝己相手には何度か音波の個性を放ったことがあるため防いでくれていることを祈る

「(というか、つい撃っちゃったけど人相手に使いたくないなあ…)」

あまりの衝撃に2人とも飛ばされフィールドが煙に包まれる中立ち上がって体勢を整える

『オイオイマジかよ、コイツらお互いに顔面に向かって個性ぶっぱなしたぞ…お前の教育どうなってんだよ!』

『こいつら幼馴染だから手の内互いに知ってるようなもんだ、こいつらの頭にあるのは勝利のみ…その結果顔面爆撃じゃねえか』

『いや、わかんねえよ』

『俺もわからん』

煙が完全に晴れる前に音の跳ね返りで勝己を見つけた
羽を硬化させ突っ込むと、確かに羽で勝己を捕らえた感触があったので口角が上がる

「っ、んの…!」

「え!?」

私が勝己を捕らえたはずなのに何故かぐらりと視界が歪む感覚がしたと思ったら、羽を掴まれ地面に叩きつけられていた
いくら体から直接生えていないとは言え、常に一定距離に浮遊するそれは引っ張られれば勿論私もつられて引っ張られるというわけだ
そしてフィールドの煙が完全に晴れた頃、私は勝己に馬乗りになられていた

「チキショー!!!爆豪羨ましい!!」

「落ち着け峰田ああああ」

何やら外野の声がうるさいけれど、そんなのを気にしている場合じゃない
目の前の勝己の表情が怖過ぎてヒュッと息を飲んだ

「歯ァ食いしばれや」

ああ、またこれ顔面狙いだなと思い、すかさず羽を硬化させ顔面の前に覆うように持ってくる
BOOOMと爆破した勝己、しかしそのダメージは羽の反射により勝己自身が受ける形に

『ここで舞羽のカウンター炸裂ゥ!爆豪苦戦しているぞ!』

勝己がダメージを食らった瞬間に何とか脱出し、体勢を整える
何とか凌いだけど、今ので確実にスイッチが入っただろうなと思い振り返ればそこにはヴィランばりの悪人顔の勝己がいた

「…うっわあ」

「この鳥野郎がァァア!」

ボボボッと爆破を繰り返し跳んできた勝己に構えるものの、すぐさま視界からフェードアウト
その後背後から爆破される、これは対人戦闘訓練の時に出久に見せた技だ

「う゛っ…!」

「立てや!」

爆破しといて無茶苦茶だと思いつつ勝己を見れば、徐々に汗をかいてきたのかコンディションは最高な様子

私も羽をはためかせ宙に浮く
が、すぐさま間合いを詰めてきた勝己に慌てて飛んで逃げる選択をした

「待てやァァ!!」

「顔怖すぎぃい!」

幼馴染ということを差し引いてもフォローできないその顔に内心ビビってしまう

「(何かしら策を練らないと羽の耐久がもたない、羽なしで地面に落ちたら最後、集中砲火だ)」

爆破の集中砲火を想像して身震いしてしまった
リカバリーガールにお願いしても怪我が残りそうで本当に怖い

『ここで形勢逆転!舞羽ピンチか!?』

頭をフル回転させ周りをよく見る
辺りには勝己が爆破したあとの瓦礫たちが複数落ちていた

一か八か地面に落ちている瓦礫目掛けて羽を撃った、すかさず巻き上がる砂埃
三奈ちゃんの時と同じ目眩し作戦
この煙の中で勝己が私の場所を捉えられないことは最初の顔面爆破のくだりで立証されている
なら先に見つけてしまえば勝機はある

そう思っていたはずなのに、私の耳に届いたのは勝己の声

「ナメてんのかテメェ!!」

ぎくりとした時、既に勝己の拳が迫っていた

「(ダメだ、間に合わな)」

「ぶっ飛べ!!」

お腹を殴られると同時に爆破させた勝己に避けることが出来ず、そのまま勢いよく吹っ飛ばされる

「ぅあっ!!」

『モロだぁああー!!!!』

あまりの衝撃に目眩がする、フルパワーでやられたであろうそれに手足が痺れる

「俺相手に他のやつに使ったのと同じ技だァ?随分余裕じゃねェか!!」

勝己の言う通りだ
音波の個性を使いたくないからって守りに入ってしまった
相手は誰よりも私の個性を理解している勝己なんだから他の人よりもずっと考えなきゃいけないのに

「(まだ場外じゃない、立て直)」

咳き込みながら体勢を整え顔を上げた私は目の前に迫る勝己の手に時が止まった
その動きがスローモーションに見える

「(…あ、やばい)」

凄まじい爆発音と共に顔面に弾けるような痛みが走り、爆破されたのを感じた
受け身も間に合わず勢いよく吹っ飛ばされ壁に激突する

『や、やりやがったああああ!爆豪顔面爆破!!!』

「舞羽さん場外、よって爆豪くん決勝進出!」

瓦礫の中、「(口の中切れた…)」と思いながら座り込んでいると、こっちに勝己が歩いてきた

「なに、まだ爆破する気?」

「しねーよ」

ぐいっと腕を引かれて、無理矢理立たされる
勝己がこんなことするなんて珍しいと思って驚いていると、悪い顔をした彼が「俺の勝ちだ!」と高らかに笑った
一瞬でも優しいと思った私がバカだったらしい

「ヘイトまみれになればいいよ」

「んだと!」

騒いでる勝己を他所にため息をついてリカバリーガールの元へ向かう
家に帰ったらお母さんやお父さんが騒がしそうなので綺麗に怪我が治りますように









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