ヒロアカsong


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翌日


必要最低限の荷物だけ持って雄英の門へと向かうA組のみんな
4日後に死柄木が動き出すという情報があるため避難民のみんなのことを考えて今日私たちはここを出ていく

「みなさん、ありがとうございました!」

私たちが出ていくことを聞いた避難民のみんなが見送りに来てくれたようで集まっている
そんな彼らに頭を下げた

「兄ちゃん!ここを出るって本当!?」

「うん」

洸汰くんが心配そうに声をかけるので出久は頷いた

「泥を払う暇はもう十分にいただきました」

「あなた方の安全が我々の命題です、ただ一つ…いつ避難システムが作動しても大丈夫なよう心構えだけお願いします」

するとA組の保護者の面々が慌てて姿を現したので各々家族に暫しの別れを告げることに

心配そうな顔をしている両親のところへ行けば2人は無理やり口角を上げる

「大丈夫だよ、絶対戻ってくるから」

「っ…唄ちゃん…!!」

お母さんに抱きしめられてよろけそうになったけれど踏ん張ってその抱擁を受け入れた
しばらくお母さんの背中をさすってからお父さんに目を向ければ、困ったような表情でこちらを見ていた

「本当に…行くんだね」

「うん」

ヒーローになるため2人の心配を蔑ろにしてきた私にはなんと言うのが正解かわからなくて言葉を探していると、お父さんが頭に手を乗せる

「いつの間にかこんなに大きくなってたんだね」

「…お父さん…」

「待ってるよ」

多くは語らない
それでも両親の思いや私の成すべきことがはっきりした

「唄ちゃん」

「勝己ママ…!」

声をかけてくれた勝己の両親にぺこりと頭を下げる
肝心の勝己も仏頂面で後ろにいるので多分激励を受けたんだろう

「女の子なんだからとか野暮なことは言わないよ、ヒーローとしてやれることをやっておいで」

「はい!」

「あと、勝己をよろしくね」

勝己の方が私より何倍も強い
それでも勝己ママは私に彼を託してくれた

「っ、はい!」

強さだけが守ることじゃない
勝己が先に進むなら私は絶対に追いついてみせる、隣に立ち続ける

それが私の原点だから






両親と別れやってきたのは雄英より30kmほどの地点にある建物
仮設要塞"トロイア"

「セメントス、パワーローダー、そしてエクトプラズムがいるからこそ超短期施工が可能、雄英には到底及ばんが堅牢だ各自部屋に荷物を運び準備を」

「ハイツアライアンスリスペクトだね」

「親切」

「終の棲家にならねーといいけど」

「やめィ!!!」

各々用意されている自室に向かえば寮と変わらない部屋が迎えてくれた
最低限の着替えなどしか持ってきていないので荷解きも何もない私は同階の雫ちゃんの部屋に向かう

「あれ、雫ちゃんももう終わり?」

「うん、ほとんど持ってきてないからね」

「そっか…私も」

目前に迫る最終決戦
作戦概要は昨晩説明を受けた
配置やそれぞれどのヴィランと戦うのかも

「ねえ唄ちゃん、思えば私たちってすごい縁だよね」

「え?」

「入試会場で一緒に戦って、同じクラスで、期末試験もペアで、インターンの時もずっと一緒でしょう?」

「言われてみれば確かに…!」

雫ちゃんみたいになりたいと思って努力してきたこの1年
彼女も私のようになりたいと言ってくれたことが本当に嬉しくて、かけがえのない親友だ

「私本当に唄ちゃんと出会えてよかった」

「雫ちゃん…荼毘とのこと大丈夫?」

彼女は轟くんと共に荼毘と対峙することが決まっている
まだ水鞠の頃の記憶は取り戻していないようだけれど、もしかすると戦いの最中鍵が開いてしまうかもしれない

「大丈夫…って言えば嘘になるけど、焦凍くんがいるから大丈夫だよ
絶対に彼を守る、そのために私はここにいるから」

雫ちゃんは本当に強い
そんな雫ちゃんだから轟くんも心を開いたんだろう

2人の絆は誰が見ても明らかで、そんな2人が一緒ならきっと大丈夫だと思える

と、その時飯田くんが雫ちゃんを心配してやってきた
この後轟くんのところにも行く予定らしい

「私は大丈夫だよ、心配してくれてありがとう」

「勿論だ、海色くんは俺の大切な友人だからな!」

2人の仲の良さを見守りながら轟くんの部屋へ向かうとそこには彼のベッドに寝転がる勝己と、同じくベッドに腰掛ける切島くんの姿
思わぬ先客に目が点になってしまう

「勝己?!」

「え、うそ…爆豪くんが気を遣って…?!」

「あぁ゛!?テメェは大丈夫そうで安心したぜ泡女!ブッ殺すぞゴルァ!!!」

平常運転の勝己に呆れつつ轟くんへと目を向けると、彼は意外と平気そうにしている

「みんな…気ィ遣わせちまってわりィ、大丈夫だ」

正座していた飯田くんが首を横に振る

「俺も兄がいるからな」

「おまえんとこと比べられちゃ堪んねえよ
俺は燈矢兄の好きなモンも知らねえ」

複雑な事情がある轟くんの家庭事情
自分の父が始めたこととは言え、火種は巨大になりすぎた

「絶対うどんだな、煮えたぎったやつ」

「ふふ、そうだね」

轟くんが冷やし蕎麦が好きだと知っている勝己の言葉に雫ちゃんは少し笑った

「ハッ…だったら一緒に食ってやるさ」

そう告げる轟くんの表情は覚悟を決めているものでみんなは安心する
家庭事情も鑑みて配置はかなり熟考されたらしい
そこに轟くんや雫ちゃんの希望も入ったとのこと
どこまでも強い2人が羨ましくもある

「それじゃあ午後からの捜索に向けて気持ちを切り替えて行こう!」

飯田くんの言うとおりオール・フォー・ワンの心に隙を作るためにも捜索は続けなければならない
私たちは大きく頷いた




ーーーーーーー
ーーー



4日後



目が覚めると共にいつものように顔を洗って歯を磨き、自室で軽く朝食をとってからコスチュームに着替える

ギルティルージュがデザインしてくれたその服を纏って鏡の前に立てば、強張った自分の顔が映っていて思わずフッと笑ってしまう

部屋を出る前に忘れ物がないか確認し、勝己からもらったブレスレットを腕につけ、一瞥してからコスチュームの腕輪の中にしまった


既に1階にはみんな集まってきていた

「おはよう」

「いよいよだな」

出久がいないのは今作戦決行中だから
ヤオモモと上鳴くんは雄英で責務を全うしているから

残ったメンバーは多くを語らずトロイアの前で待機する

これから全員が各々の場所に転送され戦闘となる
プロもいるとはいえ相手はオール・フォー・ワン率いるヴィランたち

命を懸けた戦いになるのに誰も怯んでいる様子がないのはみんなの思いが同じだからだろう

それにA組だけじゃない
全国各地のプロヒーローもその時を待っている

「唄ちゃん」

名前を呼ばれて隣を見ると、雫ちゃんがいつものように綺麗な笑顔で微笑んでいる

「雫ちゃん」

そんな彼女に私も微笑み返し、雫ちゃんの手を握った

「絶対守ろう」

「絶対勝とう」

恐怖も不安も全て力に変えて戦うんだ

「「絶対にまた会おう」」

直後、私たちの目の前に黒霧の個性であるワープが出現する

「行くぞ!!」

勝己の声と共に全員が一斉にそこへと飛び込んだ

心操くんがオール・フォー・ワンに隙を生ませた
青山くんがオール・フォー・ワンを誘き出した
物間くんがオール・フォー・ワンの不意を突いた

みんなが必死に戦っている
この世界の平和を取り戻すために、私たちの未来を取り戻すために

負けない、負けられない

『予想通りだ!大群を率いて来た!各班動け!!』

『奴はワン・フォー・オールさえ奪えば逃げ隠れする必要もなくなる!!
ここで終わらせここから始めるつもりだ!!』

無線から聞こえるオールマイトの声
その後、ワープの先に見えたのは大勢のヴィランと、応戦するヒーローの姿

あの日神野で見た以来のオール・フォー・ワンの姿もある



最終決戦が幕を開けた








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