アルヴォリを倒した後に駆け付けたエンデヴァー達のおかげで私はオセオンの病院に緊急搬送され一命を取り留めた
今は出久、勝己、轟くん、ロディ、雫ちゃんと6人で入院中だ

「まったく、あんたたちは毎度毎度ムチャするんだからねえ…チユー！」

出久を治癒するために頬にキスするリカバリーガール
どうやら今回のことでオセオン担当のエンデヴァー事務所チームがかなり重症と聞いてわざわざ日本から来てくれたらしい
続いて轟くんを治癒する様子をまじまじと見ていたロディに出久が笑った

「もともと持っている治癒力を活性化してくれるんだよ」

「へえー」

「あんたもムチャしたね？ほら、チユー！」

ロディも治癒を受け、その効果にびっくりした様子だった

「おっ？なんかちょっと体軽くなった気がする」

「でしょ？学校でもものすごくお世話になってるんだ」

「緑谷は特に多いな」

「確かに、いつも医務室に行ってるイメージ」

轟くんと雫ちゃんがそう言ったので入学当初の出久のことを思い出した
ワン・フォー・オールを使いこなせてなくて技を放つ度に大怪我していたなあ

「いや、最近はなるべく怪我しないようにはしてるんだけど…」

「そういやそうだな」

「しとるわ！本当に強ぇヤツは怪我なんかしねーんだよ！」

「はいはい、チユー！」

くわっ！と横から怒鳴った勝己
心配してるならそう言えばいいのに本当に素直じゃない
問答無用で黙らせたリカバリーガールが勝己に治癒をしてからこちらへやってきた

「あんたたち2人も女子生徒の中じゃかなり頻度多いからね」

「「え」」

「ヒーローを目指す以上多少は仕方ないけれど女の子が傷を作るもんじゃないよ」

それを聞いて雫ちゃんと目配せする
確かに今の私たちは包帯や絆創膏などで痛々しい

治癒を受けながらぼけーっとしているとリカバリーガールの言葉に何かを考え込んでいた轟くんが顔を上げ雫ちゃんをまっすぐ見つめた

「雫に傷が増えても俺は嫌いにならねぇぞ」

「なっ…？！」

突然の轟くんの衝撃発言にボッと顔を赤くした雫ちゃん
2人の様子を見てロディが「付き合ってんのか？」と聞いて来たので頷いた
勝己は目の前で甘ったるい雰囲気を醸し出す2人に「他所でやれやァ…！！！」と今にもブチ切れそうだ

その時病室に駆け込んできたのはロディの弟と妹
話は聞いていたのでこの子たちかと納得しつつロディに抱きついている2人を微笑ましく見守った

「心配かけてごめんな、もう大丈夫だ」

優しく2人を抱きしめるロディを眺めていると弟のロロが私たちを見渡して「誰？」とロディに尋ねた

「この人たちはヒーローだ」

「ヒーロー…」

「世界を救ったんだぞ、カッコいいだろ？」

ロディの言葉を聞いた2人はニッと笑ってからこちらに向かって「ありがとう！」と告げた
出久はにこりと微笑んで2人に優しく告げた

「お兄ちゃんもカッコいいヒーローだよ」

「「うん！」」

ロディは照れ臭そうにしており、こうやって笑える平和な時間が戻ってきたことに酷く安堵した




ーーーーーーーー
ーーー




数日後

帰国のためオセオンの空港へ来ていた一同
雄英の制服を身に纏い最近完治したばかりの体で搭乗口へ向かっていると、Piー！とピノの声が聞こえ振り返ればそこには松葉杖をついたロディがいた

出久が嬉しそうに駆け寄る

「ロディ！？退院は明後日じゃあ？」

「もう大丈夫だってよ」

「よかった…」

出久がロディと仲良くなったことは知っているためかエンデヴァーや他の事務所の面々は先に搭乗口へ向かっていく
私と雫ちゃんと轟くんは出久とロディを見守るけれど、勝己はエンデヴァーたちと共に先に行ってしまった
こういう感動的なシーン嫌いだもんね

「あのままクタバってたら伝説になれたかもしれねーのにな」

「縁起でもないこと言わないで」

「ねえ、ロディはこれからどうするの？」

「いつもの生活に戻るだけさ…もちろん、どっちかじゃなくどっちも手に入れてやる」

ロディの個性の話は入院中に彼から聞いた
今のピノを見ればロディが前向きに未来を見ていることは明らかだ
出久のお節介でまた誰かが前を向いて歩き出せる、やっぱり彼はすごい

『NNY 224便の搭乗手続きを開始いたします』

聞こえたアナウンスは私たちが乗る飛行機のもの
こちらを見た出久に小さく頷けば彼も眉を下げロディに向き合う

「そろそろ行かなきゃ…」

「もう二度とオセオンに来んなよ、デクといるとロクなことがねえ…日本で勝手にヒーローしてろ」

そう告げたロディは背を向けている
その肩にいるピノが涙を堪えている姿に出久は小さく笑ってロディを真正面から抱きしめる

「また会いに来るから」

「…二度と来んな」

ロディも松葉杖を離し出久を抱きしめ返した
少しして離れた2人
こちらへ向かってくる出久を眺めていると、ロディが私たちにも手を振る

「ありがとな！」

ニカッと笑うロディ
きっと彼の未来は明るいだろう
なんとなくそんな気がしたのは私だけじゃないはずだ








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