ヒロアカsong


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第5試合
本日最後の戦い


初動で飛び出したのは出久
他3人でカバーする感じだろう

「緑谷くんたちのフォーメーション、第4セットの爆豪くんたちと似てるな」

「バランスも似てるもんね」

飯田くんの意見に頷いてそう告げると、近くにいた瀬呂くんが「でもさァ」と続けた

「索敵係がいない分俺らよりも慎重に動かないとすぐやられそう」

索敵係と言われ響香ちゃんと仲良く手をあげる

「でもそうだね…さっきみたいに誘い出して位置特定するなら出久が勝己以上の働きをしなきゃだね」

私の横で勝己はモニターをじっと見ていた

先行していた出久と接触したのは物間くん

『爆豪くんの活躍を見た後で君を警戒しないわけがない、君みたいな…動けて強い人間を警戒する
クレバーな人間はそう考える、その一方でクレバーな人間はこうも考える
「さっきの彼の強さは他の3人によって引き出された」と、「先に潰すべきは3人だ」と!
わざわざ目立って居場所を教えてくれたね、僕の仲間が早速3人を見つけたようだ
3対4だぜ?大丈夫かな?心操くんもいる、密なコミュニケーションは取れない
君はすぐにでも彼らの元へ駆けつけなきゃあ…いや待て!?仮に今の「キャア」が心操くんの声だったら!?
まだバレてない3人の居場所を君が教えることになってしまうぞ!?ハハハ困ったな!
仲間の方を見向きもしないなんて薄情だな!心操くんとこんな話をしたよ、"恵まれた人間が世の中をブチ壊す"
彼の友人なら教えてよ、爆豪くんさ!何故彼は平然と笑ってられるんだ?平和の象徴を終わらせた張本人がさァ!!』

流石の物間くん、よく喋る
それに出久は仲間を馬鹿にされることを嫌う

「出久が勝己の友達だって」

「眼科行けやァ!」

苛立ってる勝己がモニター越しの物間くんを睨みつける

一方、残り3人は柳さん、小大さん、庄田くんと交戦中
距離を取って確実に取りに来てるB組
次の瞬間、物間くんと交戦していた出久の腕から黒い何かが飛び出してきた

「緑谷また新技かぁ」

そう呟いた砂糖くん
けれど先ほど聞いた暴発の話が脳裏をよぎってしまう

「相澤くん、ブラド、止めた方がいい…おかしいぞ!」

オールマイトの声にサアッと体が冷えていく感覚がした

「出久…っ!」

すぐに先生たちは止めに行くためこの場を離れる
苦しむ出久、そんな彼を助けにきたのはお茶子ちゃん

『心操くん!洗脳を!!デクくん止めてあげて!!』

お茶子ちゃんの叫び
やっぱり個性が暴走しているんだ

『緑谷ァ!!俺と戦おうぜ』

苦しむ中聞こえた心操くんの声に出久は必死に個性を押さえ込みながら答えた

『んぉおお、応!!!!』

途端、出久を覆っていた黒いものは消え洗脳状態に入った彼がぼーっと立ち尽くす
そんな出久をお茶子ちゃんはビンタして起こした

一安心、したのも束の間
出久の背後に迫るのは物間くん

『え!?まだ終わってないんだけど!!』

不意を突かれながらも最小限の被害で躱した出久
お茶子ちゃんが近接に持ち込むけれど、柳さんがそれを防いだ

その場に集まってきたのはA組とB組全員
乱戦と化したその場で心操くんはお茶子ちゃんへ捕縛布を飛ばす
出久がそれを制し2人の戦いが始まった

心操くんが捕縛布を引き、出久が建物から落とされる
力負けしたことに驚くけれど個性を使わないつもりなんだろう

「(また暴発すれば危険だから…)」

どこまでも他人優先の出久に焦燥が募っていく

一方三奈ちゃんと峰田くんは小大さん、庄田くん、柳さんと戦闘中
三奈ちゃんへ向かっていく攻撃

『危ねェ!!』

それを防いだのは峰田くん

『全て計算通りよ!そうさ庄田二連撃計算通り!
オイラが「ツインインパクト」の威力に耐えられずこうなることもな!!』

『余裕か!!』

三奈ちゃんの胸に飛び込んだ峰田くんに観覧していた女子一同がスンッと真顔になった
少しでも見直した私がバカだったかもしれない

峰田くんを投げた三奈ちゃん
峰田くんはモギモギが自分と反発する性質を利用して辺りを飛び回る

B組が逃げようにもそれすら許さない状況

「峰田たち人数不利の中善戦してるな!」

「懐に入れば芦戸の間合いだぜ!」

「近接苦手な2人を庄田1人で守らなきゃなんねェ」

「人数が仇になってる退きてぇー!!」

「っていうか先生たち止めに行ったんじゃないの!?」

響香ちゃんの言う通りだ
先生たちは一向に中断させる気配がない

隣にいる勝己を見れば、彼もまた今のこの状況をただ黙って見ている
ワン・フォー・オールについて知らないことが多すぎる私たちにはどうしようもできない

見上げたモニターには物間くんが出久の個性を発動しようとしているところ

『君の力!貰ったよ!!』

物間くんのその言葉に出久の顔色が変わった

『待って物間くん、危!!』

『遅い!!』

けれど発動しても何も起きない
そんな物間くんをお茶子ちゃんが取り押さえた

『デクくんのパワーじゃないハッタリだ!行って!!』

出久が物間くんを助けようとしている心操くんへ向かう
お茶子ちゃんの個性を使用して飛んだようで解除された途端取っ組み合いになる2人

『体育祭ぶりだな取っ組み合うのは!!あの時の俺とは違うぞ緑谷!!!』

たった一瞬
その一瞬で頭上のパイプを捕縛布で引きずり下ろした物間くん

「出久!」

避けられない、そう思ってつい叫んでしまった
でも次の瞬間、出久は先ほど出した黒い帯状の個性を使用してパイプをキャッチしていた

「(暴走…してない…?)」

明らかに使いこなしている姿に開いた口が塞がらない
それは心操くんも同じらしい

『っとに…何だよお前は!!さっきの大暴れはブラフかよ!?俺の気持ちを返してほしいね!!』

距離をとった心操くん
と、その時出久の黒い帯状の個性が消えた

「(制御できてるようでできてない…何なのあれは)」

やはり痛みがあるのか蹲っていた彼は深呼吸をして立ち上がる

目の前には距離を取ろうと背を向け逃げる心操くんの姿
彼は柳さんたちのところへ向かっていた
乱戦時における自分の圧がどれほどのものかを理解しているからだ

もう少しで届く
そんな時、出久が心操くんに迫った

けれど突如出久を襲った衝撃
ツインインパクト
先ほど不意をついた物間くんが仕込んだ悪あがき

また、乱戦中の峰田くんが庄田くんに拘束されている
攻撃を一身に受ける三奈ちゃん

「芦戸がまずい!」

「心操もうまく距離をとった!いけるぞこれ!逆転!!!」

盛り上がるこちら側

けれど出久は諦めていない
いつだって彼はそうだ…原点を忘れない

心操くんの捕縛布を握った出久が彼を地面に押さえつける
そしてお茶子ちゃんも柳さんと小大さんを制圧、三奈ちゃんが庄田くんに決めた華麗なアッパー

これで4-0

「第5セット!なんだか危険な場面もあったけど4-0でA組の勝利よ!!
これにて5セット全て終了です!全セットみんな敵を知り己を知りよく健闘しました!」

実況するのはミッドナイト
先生たちは今不在だから仕方ないけど公正なのでA組一同喜んでいる

「第1セットA、第2セットB、第3セットドロー、第4セットA、第5セットA
よって今回の対抗戦!A組の勝利です!!」

盛り上がる一同
でも一緒に盛り上がるには先ほどの暴発が気になりすぎる
モニターの向こうの出久を見つめ、そっと拳を握った









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