ヒロアカsong


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仮免試験を控えたとある日

休み時間になってクラス中がやいのやいの話している内容は寮で変な音がしたというもの

「ちょ、やめてよ…私眠れなくなるじゃん」

「なんならオイラが添い寝「結構です」

余計眠れないわと呆れた視線を峰田くんに向ければ、先日常闇くんの部屋で怪談話をしたメンバーが呪いだと怯え始める

「お前ら本当にそんなの信じてんのかよ?怖がりすぎて寝ぼけたんじゃねーのか?」

「べ、べつに丸々信じちゃいねーけどさ、マジで怖えんだって!金髪の女がヤベーんだよ!」

金髪というだけで共通点を見つけ身震いした私はできるだけ話を聞かないように耳を塞ぐ
冗談なしでホラーは苦手なので勘弁してほしい

「へー、どんな話なんだ?」

「それがさ」

近くで話し始めようとした上鳴くん
けれど前の席の勝己がビクッと反応し、そのまま立ち上がった

「うるせえ!人の後ろでヘンな話すんなや!!」

ドカドカと足音を立て教室を出ていく勝己
意外と私よりもビビリな幼馴染に変に冷静になっていく

その後変な音を響香ちゃんも聞いたということで益々怖がる一同
その日の晩に飯田くんが音の正体を確かめるということで話はまとまり解散した

今日は早く寝よう
そう思っていたのに布団に入った瞬間聞こえた異音に体が硬直した感覚に陥る
思い出すのは昼間みんなが話していた呪いという話

結局その日は雫ちゃんの部屋に転がり込んで耐え凌いだけれど、翌朝のHRではほぼ全員が暗いみんながいた
どうやらみんな異音を聞いたらしい
事の経緯を聞いた相澤先生は呆れたように一同を見ている

「しかしまさかお前ら、呪いなんて非合理的なもん信じてるのか」

「し、信じてはいませんが…しかし不可解な出来事が起きているとなると…」

「先生!これは大変な事態です!我々の基盤となる生活空間に何かしらの異変が起きている事実
もしこれがずっと続くとなると我々は授業に専念できなくなります!ここは早急に原因追及と事態の解決を望みます!」

挙手して言い切った飯田くんに頷いて賛同する
今日ほど家に帰りたいと思ったことはないかもしれない

「い…いやだあ!毎晩名前呼ばれたら眠れねえよー!!
ベッドの中でならいざ知らず…いやベッドに入ってきたら呪い殺される…!
でもそれが素っ裸の幽霊なら…いやでも…!!」

こんなときでもブレない峰田くんに逆に尊敬の念すら抱いていると相澤先生が何かを思い出したような顔をした

「呪いか…そういや雄英にもそういう話があったな」

その言葉に全員が先生を凝視する

「雄英七不思議のひとつでたしか…ヒーローになれなかった卒業生の霊が彷徨ってて、それを見ると呪われるって話だった
よくある学校裏の森に出るっていって…ああ、ちょうど今寮の建ってるあたりだな」

一瞬の静寂の後、教室は阿鼻叫喚の騒ぎに陥った

「その幽霊が寮の中彷徨ってるんじゃ…!!」

「やめてぇえ!!!」

「ハイツアライアンスは呪われた寮なんだあ!!」

冷静さを欠いている一同にこの話は失敗だったようで相澤先生がしまったという顔をするが騒ぎは収まらない

「おい、お前ら…」

「寮全体呪われてたらどこにも逃げ場ねーじゃんか!」

「し、塩まかな!あっ、ごま塩しかなかった!!」

「どうしよう!?透明な私でも幽霊に気づかれるのかな!?気づかれたらやだよう!!」

「無理無理無理無理、ほんっっっと勘弁してお願い」

顔を両手で覆って俯く私はガタガタと震えながら早口でそう告げた

「お前ら、いいかげんにしろよ?」

阿鼻叫喚の中でも相澤先生の低い声に静まり返るのは教育の賜物だろう
けれどみんな小刻みに震えてるあたり怖いんだと思う

「そんなに音が気になるんなら今夜見回りをする
ちょうど今夜は嵐らしいしその方が合理的だろう、点呼もするからちゃんと部屋にいろよ」

「「「「せ、先生ぇ…!!」」」」

相澤先生の頼もしさに安心した一同は授業を終え寮に帰る
けれど夜になっても一向に先生はやってこない

どうしたもんだと不安に思っていると緊急事態だとA組全員が談話スペースに呼び出された
そこにはソファに横たわる相澤先生の姿
どうやた食事スペースのテーブル付近で倒れていたらしい

「どうしてこんなことに…」

「な、なあ相澤先生の首に金髪絡まったりしてねえよな…?」

「ひぃいい」

自分も金髪だと頭を抱える私の傍にいた勝己が上鳴くんを睨みつけた

「そういうこと言うんじゃねえアホ面!!」

いつもより強張っているその声からして勝己も怖いんだろう
けれどさすがにこの事態に怖がらない人はいないと思う

「呪いか!?やっぱり呪いなのか!?」

「それよりヴィランの襲撃かもしれないだろ!?相澤先生を気絶させるなんてこと…」

「落ち着け!落ち着くんだみんな!!」

「それより今は相澤先生のことを他の先生に知らせた方がいいんじゃないかしら」

その言葉に全員がハッとした
パニックになっていた頭が冷静さを取り戻す

「そのとおりだ梅雨ちゃんくん!確か先生の部屋に内線が通っているはず」

そう飯田くんが告げた瞬間、部屋が真っ暗になった

「きゃああ!!!」

「テメェ、暴れんな!」

外は嵐、停電してもおかしくない
あまりの恐怖に勝己に抱きつくと、勝己も私だと分かっているのか無理に引き剥がそうとしない
というかちゃんと片手で抱きとめてくれているあたり本当に優しい、生憎そんなことに気が付く余裕はないが
再びパニックに陥ったA組一同

「キャアアア!!?」

聞こえた悲鳴にガタガタ震える
ヤオモモ曰く足元を何かが通り抜けたらしい

「何かってなに…ヒャア!?な、何かいる…っ!?」

「だから何かってなんだよ!?」

動き回る何かがいることにびびって羽で宙に浮く
勿論勝己に抱き留められているので足だけ床を離れただけにすぎない

「誰か灯りを!!!」

飯田くんの言葉に上鳴くんと勝己が個性を使用して一瞬灯りをともす
するとその一瞬で宙を素早く移動する何かが浮かんでまた消えた

「なななななななななんんんかいたぁ!!!!!」

「幽霊かよ、幽霊かよォ!!幽霊ってあんな感じなのかよォ!!?初めて見るからわかんねえ!!」

「もうやだああああ!!!」

そう叫びながらぐっと勝己に抱きつく力を強める
さっきから涙も止まらない

「み、緑谷…幽霊には氷と炎どっちが効くんだ…?」

「へ?いや、そんなこと考えたこともないからわかんないんだけど、幽霊って冷たいイメージあるから逆に炎なんじゃないかなぁ!?というより物理攻撃効かないんじゃ…!?ほら実体がないのが幽霊なわけだし…っ」

「どうすりゃいいんだ…!!」

出久の言葉を聞いて絶望している轟くん
雫ちゃんも真っ青になって涙目で「無力でごめんなさいい」と叫んでいる始末

「もうダメだ!俺たちみんな呪い殺されるんだぁ!!ちくしょう!どうせ死ぬなら女体に挟まれて圧死したかった!!」

峰田くんがそう叫んだ時、玄関のドアが開いた
稲光とともに濡れた足音で入ってきたのは長い金髪の人物

「「「「金髪の幽霊だー!!!!!」」」」

全員が叫びながら一斉に攻撃をする
幽霊相手に戦うなんて知識0のため全員手加減なしでぶっ放した
幽霊が倒れた音がしてハッとした時、電気が復活したのか灯りがともる

そこにいたのはプレゼントマイク

「せ、先生ー!?プレゼントマイク先生ー!!!」

「大丈夫、気絶してるだけ」

「もしかして停電になったから来てくれたのだろうか?それなのに申し訳ないことを…」

「おいお前ら」

聞こえた声に振り向くとそこには相澤先生の姿
みんな安堵したように先生に駆け寄る

「金髪の幽霊が来たかと思って攻撃を」

「先生いったい何があったんですか!?ヴィランですか、それとも本物の幽霊に!?」

「白い幽霊が寮の中にいるんですー!」

「落ち着け」

いつも通りの低い声に全員が姿勢を正した
私も勝己から離れるけれどずっと服の裾は掴んだままだ

「これが俺が気絶した原因で謎の音の正体だ」

先生の手元には小さな黒い粒のようなもの

「天井についてたのを取ろうとしてテーブルに上がったら出しっぱなしにしてあった台布巾で滑っちまってな」

「あ、私だ!早く部屋に戻らなきゃと思って台布巾すっかり忘れてた!」

テヘッと笑う透ちゃん
ヤオモモの創造で作った拡大鏡でそれを見てみると極小サイズの機械
移動用のモーターがついていてこれが音の発生源だったらしい

サポート科の発目さん曰く夜中も勝手に見回りしてくれる覗き対策のセキュリティロボらしい
峰田くんの名前を呼んでいたのは彼が要注意人物だからだろう

「で、でもあの白いのは!?みんな見たよな!?」

「ごめん、部屋のドア閉め忘れてたみたいで…」

申し訳なさそうな口田くんの手にはウサギのゆわいちゃん
みんなの騒ぎに興奮して走り回ってしまったとのこと

「なんだよー人生初幽霊見たかと思ったぜ」

「よかったぁー!」

安堵する一同
けれど相澤先生の「どこがよかったんだ…?」という怒気を含んだ声にハッとして周囲を見れば玄関付近はボロボロ
ドアもガラスも吹き飛んで雨風が盛大に吹き込んでる

「まだ建って間もねえって言うのに…原因は怪談だったな?それくらいでパニックになるとは…
明日までに全員反省文提出!しばらくの間就寝時間は8時!以後この寮では怪談禁止!いいな!!!」

「「「「はい…っ!」」」」

正直呪いや幽霊よりも怖い相澤先生に全員がうなだれた










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