01-色恋
東京都立呪術高等専門学校
通称呪術高専
東京郊外の山奥にあるこの学校は表向きは宗教学校として通っている
要は呪術師育成機関
世那は先月そこに入学し、めでたく呪術師と成った
「お前さっきの俺に向けて放ったろ!」
「はぁ?んなわけないでしょ、アンタが当たりに来たんじゃないの?」
「素直に謝れよ暴力女!」
「自意識過剰も大概にしなよデリカシー無し男!」
目の前で繰り広げられる喧嘩にも慣れたのか、傑と硝子は出された課題を解いていた
一方悟と世那は先程の課外実習での互いの戦闘に関して言い合っている訳である
「大体お前が傑と組めば良かったんだろーが!」
「え!っと、そ、それは…」
世那があからさまに目を泳がせるので悟はハッとした
「何だよ、まさか俺と組みたかったんじゃ」
「いや、それはない」
世那は以前の任務を機に傑に片思い中
積極的に行動しているものの、時折恥ずかしくなって傑を遠ざけてしまう事がある
それが今回任務のチーム分けで傑ではなく悟を選んだことに繋がるのだが、悟は都合よく解釈したらしい
即否定されたのだが、意地悪そうな笑みを浮かべている
「フーン、そーかそーか、素直じゃねーな!」
「は?勘違いしないでよ、キモイ」
「あ゛?泣かすぞゴラ」
と、その瞬間
やっかみあっている二人に炸裂した鉄拳
ゴッ!という鈍い音と共に二人の頭にタンコブが出来上がった
喧嘩に夢中のあまり気がついてなかったようだが、先程教室に正道が帰ってきたのだ
傑と硝子は必死に笑いを堪える
「お前ら課題はどうした」
「「…ま、まだです」」
「ガッデム!!!」
長いお説教コースを食らう二人
悟と並んで正座をしてしょんぼりしている世那に目を向けた傑は先日から彼女を意識している自分に戸惑っていた
元々世那は顔も整っており、その容姿から目を惹く存在だ
だがそれよりも明らかに自分への好意を持ってくれていることが伝わってくることの方が問題
傑も呪術師ということを除けば普通の高校一年生
色恋に興味が無いわけじゃない
ましてや世那が相手となれば意識せずにはいられなかった
「見すぎ」
ふとかけられた声にハッとして振り向けば、硝子が課題から目を逸らさずに正道達に聞こえないような小声で呟いたのだと察する
「世那の事好きなんでしょ?」
「…何のことかな?」
にっこり微笑んで誤魔化そうとする傑だが、硝子の目はごまかせない
横目で傑を見た硝子はフッと鼻で笑って「顔赤いけど」と呟く
焦った傑が咄嗟に顔を押さえるが、硝子には全てを見通されているようで困ったようにため息をついた