03.


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白狐は最初は、とある神社に住みついた1匹の妖狐だった


いつも人間に化けていて、神社の境内に座り通る人間に笑って挨拶を返すような優しさだったのだ


『あっ、閑馬!!』


「白狐、まだこんな所に居たのか?族長様がお呼びだぞ。

もう暗くなりそうだし、帰ろう。白狐」


『うんっ!帰る!』笑


神社に行った白狐を迎えに行くのは決まっておれで、おれが迎えに行くと白狐は嬉しそうに笑っておれに着いてきた


白狐の化けは妖狐の中でも飛び抜けていて尻尾や耳は絶対に出さず、人間にしか見えなかった


おれはそんな白狐を昔から想っていたし、白狐も想ってくれていると思ってた


『閑馬、今日も迎えに来てね!』

「あぁ、勿論」笑



ただ、妖狐の一族には人間の村に似た風習があった


まず、新しく族長になる者は、必ず男であれ≠ニいうもの。


それが無ければ、族長は絶対に白狐だった。俺もそれで納得だった。


次に、…毎世代に1人、女狐の中で《忌狐》を作ること


忌狐というのは、その言葉のとおり嫌われる狐。


その忌狐とは、子供が出来ない夫婦の為に使うものだ。


その忌狐を夫が犯し、子供が産まれたらそれを夫婦の間に補うというもの。


忌狐は族全員から嫌われ、ただ子供を産む為の道具≠ニして使われる。……狐の繁殖の為、先々代が作った村の規則だ


おれ達の代は、白狐が忌狐だった。


白狐が産まれた瞬間に決められたことだ。


忌狐は親から取り上げられ、族長の家で育てられる


おれは家の中では白狐に冷たい真似をしたが、村の外に2人でよく逃げて2人で遊んでいた。


白狐が神社に行くのも、村のイジめから逃げる為だ



あるとき、またおれが神社に白狐を迎えに行った時


白狐はいつも以上に嬉しそうな顔で、俺に語った




『私ねっ、人間の友達が出来たの!』







妖狐は妖怪であり、大前提は狐。


人間と話すことなど御法度で、あくまで狐として過ごさなければならない。


白狐はその規則を破り、毎日その友達≠ノ会いに行くようになった


おれはふとその友達がどうしても気になるようになり、あるとき木陰から白狐を覗き見ていた


と、その時白狐に近づいた1人の人間がいた


やけに傷の多い顔をした、人間の赤い髪の男だった


恐らくおれたちと同い年に見えたし、そいつは狐の郷を降りたところにある村の者だった


「ごめん、遅くなって」

『ううん!さ、座って』


白狐の表情を見た瞬間分かった


白狐はその男に好意を寄せていた



そして、恐らくその男も………


その男の名は銀というらしく、その名の通り銀色の瞳をした男だった



そしてその男も白狐と同じく、村で鬼の子≠ニ呼ばれていた男だった


鬼の子と呼ばれた原因は、生まれつき持った人間離れした牙と真っ赤な髪だった




2人の関係は進まず、ずっと友達≠フままのようだっ







「白狐、今日も神社へ行くのか?」

『うん!それと、族長様に魚を採ってくるように言われたから魚採ってくるね!』

「ああ、分かった」


その日もまたおれは白狐の後を尾け、白狐と銀の様子を見ていた


「白狐、おれ…どうしてこんな髪と牙を持って生まれたんだろう」

『……っ私は銀の、その髪も牙も全部綺麗だと思う!』

「…白狐は優しいな。…村の人も白狐みたいに優しかったら良かったのに…」

『…銀…』


愛し合っていることは分かっていた


おれに、入る隙間なんて無い



「………ちくしょう……っ」


白狐の隣は、おれがいた筈なのに


どうせいつか離れる時が来るのに


なんで


なんで






その時だった。


「そこの赤髪の男。今すぐ此処を立ち去れ」

『…え、?』


銀と白狐が顔を上げると、そこにいたのは寺の坊主のようだった


「女。お前は狐だな?そこの男を誑かすつもりだろう」


『なっ………ちが、私は…!』


「狐………?」


坊主は何の躊躇いもせず、白狐に札を投げつけた


『う、……っ』


白狐は瞬間的に防御の体制に入り、札をすべて妖力で燃やし尽くした


「………白狐……お前、狐…だったの、か」


『っ銀、これはちが…っ』


「隙有り!!」


『う、ぁっ……』


坊主は白狐の妖力を封印し、白狐は倒れみるみるうちに身体は縮んだ


助けに、行かなきゃ


白狐が、



身体が動かない


嫌に身体が熱く、それなのに冷や汗がそこら中に垂れる


すると、銀が白狐にぽつりと言った


「白狐、お前……人間じゃなかったんだな」


『……っぎ、』


「どうせ惨めなおれを、小馬鹿にしていたんだろう。



……っ、信じて、たのに…………





騙しやがって、……っ消えろ!!!」


『……っ』


「お前なんか…………っお前なんか、




所詮お前は妖怪だ。人間の気持ちなんて分からないだろうよ!!」




そう言って、銀は走り去った


坊主もいつの間にか消えていたし、残ったのは俺と白狐



白狐はぴくりとも動かず、俺も動けないでいた







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