01.


『ん………おはよう、斬島さん…』

「おはよう、白狐」


あの事件から数週経ち、私はここでの暮らしにすっかり慣れた頃だった


『今日も任務…?』

「ああ。行ってくる」

『いってらっしゃい』笑


私は相変わらず斬島さんの部屋に佐疫さん作の鳥居を置いてもらい、住まわせてもらっていた


『そういえば、朝ごはんとりに行かなきゃっ』


急がなきゃ、と背中に籠を背負ってぴょんっと跳ねた


その瞬間景色は変わり、何処かの山奥に。


『わっ…きのこだ!あっちには川もある…魚いるかな…?』



しばらく採っていると、籠は魚や山菜、きのこでいっぱいになっていた


『よしっ、大漁!かーえろっと』


また小さく跳ね、元の鳥居に戻ってくる


誰もいない部屋で1人、鼻歌を歌いながらまだぴちぴちしてる魚に塩を降る


『おぉ…!美味しそうっ』



「どれがーー?」


突如横から聞こえた声に驚き、『うぎゃっ!?』と変な声を上げて飛び退く


バランスを崩し、机の上から落ちそうになった所を受け止められた


「白狐お前よく落ちるよなー!!」

『ひっ、平腹さ…!驚かさないでよ、もー…』

「でー?あ、それ朝ごはんー?生で食うの?」

『うん!斬島さん居ないと私火使っちゃダメって言われてるから…』

「んじゃ俺の部屋でやったら!?俺今日休みだしー!」

『あ、ホントに?いいの?』

「おー!その代わり俺にもちょーだい!!」

『うん、あげるあげるっ!』





「あり?コンロ使わないの?」

『うん!ほら、』


手の平を上に向け、ちょっと力を込める


すると、手の上で小さな炎の塊が出来、燃え始めた


「うおー!?すげぇ!!」

『これで、このまま……よっと!』


一瞬で魚は焼け、美味しそうな匂いが漂い始めた


「すげー旨そう!!!1口ちょーだい!」

『どーぞ』笑


ぱくっと平腹さんが食いつき、目が輝く


「うまっ!!!」


「おい平腹、何騒いでんだ」


『あっ、田噛さん!』


扉を開けて入ってきたのは田噛さん。


お風呂上りなのか、髪は濡れて上気していた


「あ?…あー、白狐かよ。ちっさくて分かんなかった」

『なっ…ち、ちっさくないから!』

「いや白狐はちっせぇよー!俺も時々分かんなくなるしな!」笑

『か、怪異は皆小さいものなの…!』

「え、マジ!?」

『……う、うそ。』



何て下らない話をしていると、楽しくてつい時を忘れる。まぁよくあることで、私は此岸ほど時間に厳しくないのだけど。


「ここに白狐いる?」


と、平腹さんの部屋を開けたのは佐疫さん。


『あ、佐疫さん!いるよ、どうかしたの?』

「あぁ、良かった探したよ。白狐、お客さんだ」

『客?』


誰だろう。花子かそれともほかの誰かか……


佐疫さんの隣を見ると、そこには



『………ぁ……え、…なんで…』



「…久しぶりだな、白狐」


立っていたのは、男の子


見覚えのある顔


見覚えのある服


見覚えのある表情




嫌な汗が背中を伝う


「………白狐?どうした」

「白狐、大丈夫か?しんどい?寝る?」


田噛さんと平腹さんの心配そうな声も聞こえない


『ーーっ、…なんで、…貴方が、…………』


「白狐?白狐!」

「おい、そいつ部屋から出せ。佐疫、早く!」

「白狐、落ち着けって!ほら、ゆっくり深呼吸しろ。な?」


そのまま、



視界がボヤけ、涙で滲み、そのまま地面に倒れた




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