09.
あったかい
斬島さんの心臓の音が聴こえる
「白狐、
俺では埋められないのか?その穴は」
『え、…』
「お前はさっき、忌狐と言った
一人で何処かに言って、一人で死ぬと
俺では、その痛みは埋められないか」
『………………』
「…誰かの大切だった人間の代わりでもいい
お前のその心の溝を埋める役目を、俺にくれないか」
『………っ、』
尻尾が小さくなっていくのを感じる
妖力が小さく萎んでいくのを感じる
「白狐、お前はこっくりさんだ。怪異に寿命は無いだろう?」
こく、と小さく頷く
「白狐、俺と共に暮らそう。…俺の為に生きてくれ。
俺もお前の為に生きる」
『…………へっ!?』
ぼふん、と音を立てそうなぐらい顔が熱くなった
大きく目を見開いて、その言葉の意味を必死に考える
え?ちょっと待って、今のって……え、待って。待って……
「はーい、俺も!俺も俺もっ、白狐の為に生きるー!てか俺も白狐と暮らしたいんだけどー」
「………あー…俺も」
「俺も白狐の為に生きるよ。」笑
皆傷だらけなのに、谷裂さんまでもがそう言ってくれて
斬島さんのもそういう∴モ味では無かったのか、と頭の中で落ち着ける
……少ししょんぼりしてる私がいるのは気のせい。
ぎゅっと斬島さんの肩に顔を乗せ、とめどなく溢れる涙を流す
『………ぅ、…わぁ…っ、うわぁぁんっ…』
『閑馬、ごめんね。怪我…ない?』
「あぁ、大丈夫だ。………白狐、…その…あの時は、」
『ストップ』
ぴ、と人差し指を閑馬の唇に押し当てる
『ダメだよ、あの話は禁止。…もう忘れよ、あの時の事は。お互い、ね?』
と、その時
「誰かそこにいるの?」
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