いつの間にかあたたかくなってた
「首がぶっ飛んじゃえばいいんです……物理的に」
「踏み潰すぞ、チビ」
貴方に比べたら大概チビですよ。
そう言ってそっぽを向く、目の前の小娘。数ヶ月前にフラりと立ち寄ったヒューマンショップで手に入れたもの。
最近はずっとこんな調子だ。
『ちょっとそこのお兄さん。貴方、私を殺してくれません?』
薄い暗がりを背に、檻の中に居たその姿は汚れきっていた。何の編鉄もない只の生意気な女。(身体の色素が少し変わっているが、それだけ)
『っのガキ、何を』
『お前は黙ってろ……フフフッ面白れェ』
暇潰しには調度良いだろう、と当時の自分はそう考えていた。
すぐに壊れてしまう玩具はいらない。コイツは見る限り、長持ちしてくれるだろうと見込んでの購入だった。その頃の金回りが異常に良かったというのも一つの要因だ。
「私、どうしたら自分が自由に戻れるか考えたんです」
「頭フル稼働だなァ」
――今ではその考えを改める必要があるらしい。頭を小突きながら茶々を入れてみたが、歯牙にも掛けずに喋り出す姫。
「要するに、買い主がデッドエンドすればいいんですよ。契約破綻です」
「契約だァ?」
果たして何時契約したんだか。おれに買われただけのくせに。
おれの機嫌を損ねたら、飛ぶのは自分の首だ。どうしてこうも大胆なのか。
「フッフッフッ!」
そこまで考えて、思い出した。
……そう言えば、こいつは元々自殺志願者だ。
「とにかく、覚悟してて下さいよ。油断してたら、やっちゃいますから」
「おーおー、おっかないこった」
(殺伐とした関係の中で、芽生えつつあるもの)
* * * * *
補足:売り物になるくらいだったら、死にたかったんだったけど、ドフラと暮らすうちに、幸せについて本気で考え出してきたヒロインさん。
5月25日 灯亞.
×End