心のどこかで本当は、
「何故だ。何故私を騙していた」
「何でだろうね?」
不毛なやりとりを幾度か繰り返し、胸に埋まった鎖を見つめる。その鎖の行先は私の心臓だ。それはクラピカの念によって造り出されたもので、胸が何だか高鳴った。これが赤い糸ならなんて素敵だろう、なーんて。
「蜘蛛が私の憎しみの対象であると、姫は知っていた筈だ!」
クラピカが怒鳴った。普段の彼を知る者は驚くと思う。
彼はこんな表情が出来たんだな、って。
あーあ。何でだろう?
何で私はクラピカの傍にいたんだろ。
わざわざ寿命を縮めてしまった様なもので、苦笑いしか出てこない。
「知りたい?」
多分、離れたくなかったんだ。
貴方が蜘蛛を心底憎んでいることを知った時でさえ、離れたくなかったんだもの。
「っ、答えろ……!」
遂に泣かせてしまった。
彼の新しい一面をゲット。
あっ、もしかして、これって最高かもね。
だってこんな出来事を貴方は忘れたくても忘れられない。脳髄の底に焼き付いて離れられない疵として、私は生き続ける。
「貴方の対象なんてどうでもいいの。私は最初から貴方を殺すつもりで近付いたんだから」
聞きたいことは他にもあるだろうけれど。それには答えることが出来ないな。
ごめんね。
最期の言葉は吐息に交ざった。
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初のクラピカ夢が、暗い……です。
お題:M.I様より
4月22日 灯亞.
×End