玉砕覚悟で突っ込みます(Law視点)
嗚呼、ムカつく。
何なんだ一体。答えは自分の内でちゃんと出ていた。周りに言われるまでもない。だから食堂から出た。
――ただの嫉妬だ。
答えはもう出ている。それなのにムカつくのはきっと、自分がこんな面倒な感情を持っていたという事と何故それが今更出て来たのかという事実に対してだろう。
元来、嫉妬だなんだかんだはそこら辺の女共の専売特許みたいなもんだと思っていた。死の外科医が聞いて呆れる。
何て女々しい。
そうだ、嫉妬じゃない。独占欲ってことにしておこう。リコリスは自分んとこのクルーだ。そいつが他の海賊の奴らと仲良くしていたら気に食わないのは船長として当然な気がする。
――少し違う感じもするが。
腑に落ちない問題が頭の中でグルグルと、巡っていた。
* * *
「ロー船長、ごめんなさいっ」
結局気分は晴れない。もう昼寝でもしてしまおうか、そう思って腰を上げようとした瞬間、泣きそうな顔をしたリコリスが部屋に飛び込んできた。相変わらず、ノックをしない奴だ。不意に何時だったか、調度おれが着替えている途中にリコリスが飛び込んできた事を思い出す。あの時はたしか、リコリスは即座に顔を赤くして、キャッチ&リリースが如く部屋から出て行った。
先程まで読んでいた医学書をパタリと閉じて、視線だけ向けると、リコリスは坐り心地が悪そうに床に正座している。
何時も怒る時は正座をさせるのだ。これは面倒な事になるなと、溜息を吐いた。
「なんだ急に」
「だ、だって、ロー船長の機嫌悪いし……私何かやらかしたんだなーと思いまして」
「別に機嫌悪くねぇよ」
「う、嘘です!」
いきなり大声を出すリコリス。
「……ほっとけ」
「嫌!」
随分と力強い反抗に若干驚いた。何時もなら渋々引き下がる癖に、どうしてこんな時だけ食いついてくるんだか。
「ロー船長がずっとこのままなんて嫌です。何時ものロー船長が良いんです!」
今にも泣き出しそうな癖に、おれを真っ直ぐに見るリコリス。何となく目を逸らしてしまう。
「どうせユースタス屋の奴が良いんだろ?」
口から出たのはおれらしくもないガキみてーな言葉。言ってしまってから後悔する。何だかいたたまれなくて、そっぽを向いた。
ユースタンス屋なんて、ロー船長に比べたらスッポンです」
「……は? ……スッポン?」
「はい、スッポンです」
咄嗟の言葉に目が点になる。おれの機嫌を治すのに必死で口から出まかせを言った……って訳でもないだろう。
「ククッ、そうか」
真面目な顔で首を縦に振るリコリスを見て、もういいかと思えた。
* * *
「ヘックショイッ」
「どうしたキッド、風邪か?」
「……なぁ、キラー。おれ今すっげえムカつく様な事言われてる気がする」
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久々更新です。
あぁ、恋愛要素?は一番難しい……。
3月20日 灯亞.
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