思うがままに動きます(Kid視点)
「ユーステスタス屋、覚悟……っ!」
「はぁ?」
聞き慣れているマヌケな声と共に現れたのは、やはり、見慣れているマヌケな奴だった。
「ロー船長を返せぇえ! ユーテステス屋ぁあーああー」
「うるせェ」
勢いよく走って来るそいつの腕を引っつかみ、地面へと押し付ける。何とも痛そうな音を立てて俯せ状態となったそいつの上へとおれは腰を下ろした。グヘッ! と色気のカケラも無い声が上がるが、気にしない。
「よぉ、リコリス。どうしたよ、そんなもん持って」
取り敢えず、そいつ――リコリスの手に握られていたヌンチャクを没収。ゆっくりと事情を聞いてやろう。勿論、この体勢で。口元を歪めた瞬間だった。
「ぬわぁああーっ」
渾身の力を込めて手足をジタバタしだしたリコリス。身体が不安定に揺れる。何て火事場の馬鹿力だ。
「は? おい、ちょっ……キラァァア!」
* * *
状況が飲み込めないままに、呼び付けられたキラーと一緒にリコリスの話を聞くことにした。嫌々。渋々と。淡々と。
リコリスが騒いでいた理由は"ロー船長が居なくなった"だった。
――何か……どうでもよかった。
寧ろ、邪魔な奴が減ったと言うか、そもそも敵同士なのであって。
「それで、まずおれの所に来たって訳か」
「疑うのも仕方ないでしょ。鏡見なよ、悪人面」
「違いない」
「うるせぇよ、マヌケ面共。……で、どうすんだよ」
「探すに決まってるでしょ」
ブンッ。
リコリスはヌンチャクをおれから取り返すと笑った。何なんだ、そのドヤ顔は。何か腹立つ。
「おい、リコリス!」
不意に高めの声(それでいて小生意気な声)が聞こえて、その主を探してみるとリコリスの後ろで奴の裾を引っ張っているガキを発見した。
目の下に隈がガッツリとクッキリと出来ている可愛いげの無い顔と見覚えのある帽子。思わず吹き出す。
「きゃわいいーっ、ボク何才?……ふべらっ!」
気付いていないのかリコリスが直ぐさま抱き上げて、ほお擦りをしようとした――所をガキに阻止された。殴っちゃダメ、絶対! とか、言い聞かせているリコリス。ウザいと思った。
「ざまぁねぇな、トラファルガー」
「黙れ」
「トラファ……えっ、船長っ!?」
大方、ジュエリー・ボニーの仕業だろう。確か、何とかの実の能力者でこんな感じの事が出来たと思う。
「何でお子様に? ……いいえ、理由は聞きませんよ。どんな船長でも大好きですからー!」
「いや、聞いてやれよ」
「違いない」
リコリスは相変わらず、興奮していて。ガキ、トラファルガーとの温度差が激しい。
敵ながら、不憫だ。
「さぁ、ロー船長も見つかった事だし帰りましょうか。お姉さんがお風呂入れてあげますよー」
「「何!?」」
思うがままに動きます
(数時間後)(あー、戻った)(……おい、リコリス。よくもまあ、好き勝手……)(……ヤバっ!)
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気が付いたら、キラーが「違いない」としか喋っていない件について。
10月4日 灯亞.
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