長編(航海士) | ナノ


どんな時でも挫けません!




宝島に辿り着いたハートの海賊団。その船長と航海士は穴の中にいた。

「ホホホッホッホー。ホホホホホッホッホー。ホホホホホホホー」

「……おい」

「ホホホホホー。ホホホッホホホー」

「おいっ!」

「ホホ?」

確かにローは、リコリスに歌っとけと言った。言ったけれど、薄暗い中で流れるこれは……。

「嫌がらせか?」

「滅相もないです! 某神隠しの歌ですよ、ロー船長」

有名な映画のエンディングで流れた曲である。とある島に上陸した際に鑑賞したそれに、リコリスは大変感銘を受けたのだ。

「そうか。分かった。黙れ」

「……アイ」

* * * * *



そうこうしていたのは、やはり数十分前のことであった。

今は黙々と歩いている二人。
段々と狭くなってきた道には全くもって、嫌な感じしかしない。
二人は自然と静かになっていた。並んで歩けていたものが、最早一人がギリギリ通れる道だ。

「ロー船長っ!」

遂に、先頭を歩いていたリコリスが立ち止まって青ざめる。

――道は、ない。

「……ちょっと屈め」

即座に屈むリコリス。
ローは壁に手を押しあてた。途端に吐かれたため息。リコリスの肩がビクリと跳ねる。

「狼狽えんな、よく見ろ」

襟首を引き上げられた彼女は壁を凝視する。普段ならば、わぁ! ロー船長が近いですっ! と騒ぎだすところなのだが今はそんな場合ではない。

「向こう側が、透けてる……!」

「元々落ちた所がただの亀裂だ。運が良かったな」

「悪かったら?」

「穴に閉じ込められていた」

要するに……最初に落ちてきた地点から身動きが取れていない、と言い換えるロー。

「うぇ」

何て絶望的なんだろう、打つ手なしだなんて! 想像したリコリスは青ざめた。

そして、安堵する。
私達はまだ進めるのだと。

「よし、リコリス。ここを蹴りまくれ」

「アイアイッ!」


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次回展開します。

4月13日 灯亞
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